「ラジオネームかるがも」で1年半投稿し続けてラジオのトークバラエティー番組のしくみを研究していた話
以前も書きましたが、動物園の広報の仕事の一環として、毎週水曜日に、地元AMラジオの情報バラエティー番組に15分くらい出演しています。
KNBラジオの「でるラジ」という、月~金の12:40~16:00に放送している午後の帯番組です。
出演するに当たり、「自分が緊張しないために」「リスナーさんに楽しく正しく伝わるように」という方法論についてはいろいろ考えながらやってきた、つもりなのですが、「じゃあ番組として成立しているかどうか」はあまり考えてきませんでした。
ラジオは、基本的にはその日のトークテーマがあり、リスナーさんから寄せられたメッセージをパーソナリティーさんが紹介し、感想や意見で話題を広げ、それについてのメッセージがまたリスナーさんから届く……という循環で作られているようです。
その合間合間にリクエストの曲が流れたり、ニュースや天気予報、スポーツや動物園、ラジオショッピングの時間などの様々なコーナーが挟まって、合計4時間くらいの番組が完成します。
が、その中で、自分が担当するコーナーをどのようなテンションや方向性で話をすれば違和感なくまとまるのか、そもそもラジオとは?とこじらせてしまいました。
そこで、10年くらい前に木下さん陸田さんの番組でよく使っていたラジオネーム「かるがも」を復活させて、KNBラジオのでるラジの他の曜日や、午前中の「とれたてワイド朝生」、土曜日の「5時間耐久ラジオ」にいちリスナーとしてメッセージを投稿し、どういう話題が、どういう順序・どういうタイミングで、どれくらいの長さ採用されるのか、内偵調査を行うことにしました。
それが一年半くらい経ち、5時間耐久ラジオで爪痕も残せたので、分析と中間報告を行うものです。
(※以下、全て私信です)
まず「でるラジ」ですが、私の出演時のスタジオ内の偵察では、リスナーさんから送られてきたメッセージはまずディレクターさんによって選り分けられ、プリントアウトされたものに赤マーカーで手書きの概要が書き加えられたものがパーソナリティー(アナウンサー)さんの手元に数件ずつ届きます。それをパーソナリティーさんが進行内容にあわせてチョイスし、読み上げて行くシステムです。
(これはスタジオの様子をリアルタイムで見られるYOUTUBE「のぞきみカメラ」でも確認できます)
つまり、メッセージのチョイス基準は、その一つ一つの話が面白いかどうかよりも、番組のトークが流れとして繋がっているか、どんどん膨らんでいくか、が重要視されている、気がします。
なので、このラジオ番組「でるラジ」では、エッジの効いたオチのある話はあまり採用されませんでした(特に番組序盤は)。
逆によく採用されたのは、日常をテーマにしたあるあるネタです。夫婦や家族、会社やご近所で起こった「あるある」な話。あと、「最近寒くなってきたので、・・・」や「最近歳をとってきたせいか、・・・」というあるあるもよく採用されます(個人調べ)。
採用されたエピソードを読んだパーソナリティーさんが相槌を打って感想を言い、共感した他のリスナーさんからも関連したあるある話が送られてきて、それをディレクターさんがチョイスしてパーソナリティーさんに送り・・・を繰り返しながら、リスナーさんとパーソナリティーさんとディレクターさんで、「共感の三角形」をどんどん膨らませていく、このプロセスがでるラジの本体なのだろうと推察しました。
膨らんだその「あるある」の派生形や異なる視点からの感想などの変化球が次のステップとして番組中盤に採用されます。最終的にはその三角形の先にある、オチのあるエピソード話も採用されることもありますが、ないこともあります。
ラジオのトーク番組の目的はあくまで「共感性の拡張」です。
「朝生」の場合は、パーソナリティーさんが二人なので、掛け合い・キャッチボールをリスナーさんが楽しみ、時にキャッチボールに加わる、というスタイルですが、「相槌」と「共感性の拡張」という基本的なつくりは同じだと思われました。
みんな相槌を打ってもらいたいし、みんな共感したいし、共感されたいんですよね。
うんうん。そうそう。わかるわかる。私も私も。
とても居心地のよい世界です。
ですので、パーソナリティーさんとリスナーさんとディレクターさんは、誰か一人が突出して面白いとか高いスキルを持つ必要はなく、むしろ三者が向き合い、協調しつつその三角形をいかに大きく膨らませていくか、という、言ってみれば普段の井戸端会議でのバランス感覚のほうが重要なのだろうな、ということに気が付きました。
対して5時間耐久ラジオはかなり異質で、単発エピソードトークのラッシュ、ジャブの連打が最初から最後まで5時間ぶっ続けて行われます。
つながりよりも「一つ一つの話の完成度・完結性」が求められ、エッジの効いたオチのある話が好んで採用されるようです。
(ちなみに私が賞品をいただいたエピソードは「高校生の時に自転車に乗っていたら霊柩車にはねられて救急車を呼ばれた」という話です。100%完全実話です。)
ではラジオのトーク番組の構造がおおむね分かった所で、動物園の広報担当としてどのように立ち振る舞えばいいのか?という最重要な部分の考察ですが、そもそもリスナーさんは「パーソナリティーさんの相槌(肯定・共感してもらう)」と、「他のリスナーさんの共感(共感性の拡張)」を楽しみにラジオを聞いています。おそらく大多数のリスナーさんは動物や動物園の話を楽しもう、というスタンスは持っていません。
そんな中で、動物や動物園の話に少しでも興味を持ってもらうには。
広報担当の私の仕事は、「パーソナリティーさんに共感してもらえる話をする」。この一点に尽きる、というのが調査の結論です。
動物や動物園への興味・共感は、パーソナリティーさんの明るい相槌や楽しい笑い声を介してしかリスナーさんに広がりません。
というわけで、これからもパーソナリティーさん一人に対象を絞ったお話を持っていき、あとはプロに任せて三角形の拡張の一部としてリスナーの皆さんに共感していただきたいと思っています。
結論:【ラジオの中心は「共感性の拡張」と「相槌(肯定)」。】
報告終わり。
あと、ラジオネームは明日から変えます。