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続・とやまのやわやわとは AMAZING TOYAMA写真部で学んだこと
前回、AMAZING TOYAMA写真部で学んだことについて備忘録的にまとめました。
今回はその続きです。
ただただ派手で視覚的にインパクトがある写真ではなく、余韻やストーリー性を生み出す写真には何が必要か、という講義でした。
1.『ランドセル効果』について
『ランドセル効果』という言葉があります。講師のテラウチマサト先生のオリジナルな造語です。
ランドセル、それは日本人にとって、「観る」人にある種の気持ちが共通して沸き起こるアイテムです。
机の上に置いてあるランドセル。売り場に並んでいるランドセル。ランドセルを担いでいる子供たち。新しいランドセル。くたびれた傷だらけのランドセル。2つ並んだランドセル。
それだけでもうストーリーが自然と浮かんできます。そんなアイテムが効いている写真が『ランドセル効果がある写真』です。
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ある写真を「観」て、何か心に浮かぶものがあったら、その写真の中で何がランドセルに当たるのか、をじっくりと考え、なぜ自分はそう思ったのかを考え、言語化するという訓練が、感情表現に鋭い人を生み出すということです。
とても深いですね。
ちなみにモノだけではなく、ポーズやしぐさ、ふるまい、時間、場所などにもランドセル効果はあるそうです。
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観る人の個人体験に結びついた過去の記憶だけではなく、モノからイメージされる全く新しい物語までをも内包した写真が「いい写真」で、そこにあるのが『ランドセル効果』だ、という授業でした。スピノザ哲学でいうところの「コナトゥス」を想起させられました。
コナトゥスについては以下の記事をどうぞ。
そして、写真にはランドセル(に当たるもの)だけではなく、二つの主役が必要で、そこにランドセル効果が加味されることでストーリーが動き始めるのだ、ということです。主役一人では物語は動かないんですね。
ストーリーがある写真を「意図的に」撮影するために、いろいろな写真を観て、その中で自分が心を動かされた写真について分析的に観て考える訓練、何がランドセルになっているのかを探す訓練が重要なのでしょう。
2.『興奮型』と『感動型』
ある写真を「ずっと眺めていたい」と思ったときは、その理由を考える必要があります。
色彩や構図で驚かせる『興奮型』の写真はインパクトが強いのですが、ずっと眺めると飽きてきます。
対して、何らかの感情がじわじわと湧いてくる『感動型』の写真は、長時間味わうことができますし、壁に飾っておいて毎日眺めても飽きがきません。
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つまり、観るひとの感情に寄り添う写真、実際に写っているものとは違う、別の感情やストーリー、シーンが思い浮かんでくる写真がいい写真だという事です。
撮影する際に、その写真を観る人に湧いてくる気持ちを考えて写すこと、相手を思う気持ちが入っていることこそがいい写真の必要条件だということです。
料理や服飾や音楽などにも共通するテーマなのかもしれませんね。
今回は以上です。
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