となりの爆音機
職場のまわりには梨畑が多い。
伝統的に幸水や豊水などの品種の梨づくりが盛んな地域で、「呉羽梨」としてブランド化もされてる。8月中旬から梨が売り出されるが、梨の選果場や梨農家には梨の直売所が多く設けられるため、梨を求める人たちの路上駐車で起こる梨渋滞もお盆の風物詩である。
そしてお盆が近づくと始まるもう一つの風物詩が、「梨畑の爆音機」である。
プロパンガスを使った爆音機が梨畑に設置され、数十分おきにバーンという爆音を出してカラスを追い払う。
梨畑で梨を食べるのは主にハシブトガラスであるが、ハシボソガラスも混ざる。
それでは、爆音機で追い払われたカラスはどこに行くか。
爆音機のない梨畑に向かうのである。
そうすると、その梨畑の主人も爆音機を設置する。カラスはいなくなり、移動先の次の梨畑でも同じことが起こる。
こうして爆音機の数は増えてゆき、ほとんどすべての梨畑で数分おきにバンバンバンバン爆音を出し、追い払われたカラスは最終的に行き場をなくして周囲の公園やごみ置き場に群がることになるのである。
ムクドリのねぐらにせよカラスの餌場にせよ、追い払う方法で効果があるのは「追い払った場所」だけであって、被害場所がとなりの畑や一本向こうの街路樹に移動するだけのことが多い。
究極的には個体数の抑制と「忌避ではなく誘因による集合場所の誘導」が必要になってくるのであるが、鳴き声やデコイでのねぐらの誘因も、候補地が定まらないという難問が常に付きまとう。
総論賛成・各論反対で、原発や斎場や産廃処理場の場所が決まらないのと似ている。
そんな訳で、今日も周囲で爆音機がバンバンバンバン鳴り続け、爆音機がない私の職場はカラスが増えてゆくのであった。