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Episode 1: 木こりのふたり

街から遠く遠く離れた地

街の人からは名前をつけられることもなく

ただ、「島」と呼ばれるこの地に

日々を木こりとして過ごす人々がいた━━━━━━━━━━━━━━━

斧と木がぶつかる音

今日もメーガンは朝早くから森にいた

誰よりも早くやってきて

せっせと木を切る


街に住む家族と、叔母の営む島の酒場には

メーガンの切った木が必要だからだ

メーガン: おばさーん!今日もこんなにたくさん!

そんなメーガンのそばには
切った木を運ぶのを手伝ってくれる

もう1人の木こりがいる

名前をポールという

彼は寡黙だ

メーガンはこの島に来て半年になるが、

彼女よりも随分前から島で木こりをしているという噂

ただ、誰とも滅多に話すことをしない

また顔にある傷のせいなのか、体の大きさなのか

誰も寄せつけることのない、寡黙な男だ

いつも黙ったまま、メーガンの木を港と酒場まで運んでくれるのだ

メーガンもまた
風邪でかき消されるくらいのか細い声で
「ぁりがと、、、、」
程度しか言えていない

彼女もまた、街では本が友達と言うくらいシャイな性格で

彼の名前さえ聞けずに、ついに半年が経ってしまったというわけだ

━━━━━━━━━━━━━━━
今日は感謝祭の日

メーガンはやっとのことで決心して

いつもより早く仕事場にやってきたのだ

━━━━━━━━━━━━━━━今日こそ!

今日こそ彼に話しかけるわ!お礼をいうのよ、メーガン!


メーガンはしかし、負けず嫌いだ

今日もなんとか1人でリヤカーまで木を運ぼうとする

よいしょ!んーーー、、

どさっ、、、、、、


結局運ぶことが出来ずに
せっかくの木材が雪の中に落ちて埋もれる

それを見兼ねたポールがすぐに黙って運んでくれる

これを運んでもらったら話し掛ける、、、
これを運んでもらったら話し掛ける、、、

これを繰り返しているうちにあっという間に日が落ちる時間

もうメーガンに猶予は無い

これが最後という木をポールが運び終わる


その時


スーーーーーーーっ

メーガンは覚悟を決めて息を吸った

メーガン:
「あのっ!いつも、、、運んでくれてありがとう!」

ポール: 「...........」

無反応で木を運び続けるポール

メーガンが吸った息は、本人が思うよりずっと
小さな音となっていたようだ

今日のメーガンは諦めが悪い

スーーーーーーーーーーーーっ

メーガン: 「あのっ!!!!!!」

ポール: 「あっ、、、、、えと、、」

あまりの突然さに豆鉄砲をくらったような表情のポール

ポール: 「俺に、、、話しかけた?」

メーガン:「え、、、ええ!あの!その、、、、お礼が言いたくて、、、、今までまともに言えなくてごめんなさい!!!いつも運んでくれて、本当に助かってる!」

ポール: 「あ、、いや、、」

ポールが言い終わる前にメーガンは続ける

もうメーガンは止まれないのだ

だって昨日の夜言いたいことを全部覚えてきたから

メーガン: 「ほんとに、、ほんとにたすかってるの!あ、わたしメーガン!あの、今日って感謝祭じゃない?よかったらうちの酒場でご飯食べに来ない?うちのおばがお礼をしたがってるの、来るわよね?」

とんでもなく一方的で早口だった

話しきったあと、メーガンは酸欠寸前だった


お礼
自己紹介
お誘い

全てを一息に詰め込んでしまった

ポール: 「あ、、、あの、、大丈夫?俺ポール」

メーガン: 「は、、ハーイ、ポール、ポールっていうのね!よろしく!」

ポール: 「あ、ああ、よろしくメーガン。えと、、、、誘いはありがたいけど、、俺なんかが行ったら酒場に誰も近寄らなくなるぜ?」

メーガン: 「えと、、、えと、、、じゃあ、、アマンダの酒場に19:30!待ってるわね!!!」

ほとんどポールの言葉を無視して
予定していた「言いたいこと」だけ全て言うことに成功したメーガン

走り去っていくメーガンを、豆鉄砲をくらったままの表情で見つめるポールであった


To be continued.....


━━━━━━━━━━━━━━━

アマンダの酒場

イラスト: 名前さん




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