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芦屋からの転校生

中学2年生のことだったと思う。突然芦屋から二人の転校生がやって来た。一人は加藤君(仮称)。黒縁めがねでがっちりとした男子。DJ小林克也のような低音の声が印象的だった。もう一人は山本(仮称)さん。髪を一つに束ねている蒼井優のようなシュッとした女子。二人ともに本庄中学にはいないタイプだった。

転校の理由はというと簡単で、高校進学のための学区的なことである。当時の芦屋からは神戸高校を受験することができないので、たまにこうして芦屋から越境してくる子供がいたらしい。神戸市民の住民票が必要なのだろうが、実際のところ東灘区に引っ越してきていたかどうかは知らない。

加藤君の本庄中学デビューは鮮烈だった。当時はベビーブームのなごりというか、まだ1学年が12組で450名もいたのだが、彼は一発目の学力テストでいきなり1番に躍り出るという快挙を成し遂げた。いや、もともとそれぐらいの実力があったのだろうが、それまで学年1位だった同じクラスの山口君(仮称)は驚きと共に敗北感を味わっていた。

小生はというと野球好きで勉強に熱が入らないタイプ。親に促されて無理矢理に近所の塾に押し込められていた頃であり、まさに下位から中位によじ登る途中であった。そのせいか英語で60点ぐらいを取ったときに英語のM先生から「おまえ、テストのときの隣は誰やった?」と聞かれ「山口君ですけど」と答えると「なるほどな、それでこの点数か。」と屈辱的な態度を取られたモノだったが、それまでが20点ぐらいだったので「まあ仕方がないか」とやり過ごしていた。

ある日のこと。終業後の掃除をしているときに加藤君が落とした黒い万年筆を友だち同士で面白半分で蹴り飛ばしているとキャップが割れてしまった。そうすると烈火の如く加藤君から「弁償しろよ!」と迫られ、なぜか小生が弁償することになる。その壊れた万年筆を持って近所の文具屋へ行くと「これはパーカー万年筆やね、取り寄せしなあかんけど、高いよ」と文具屋のおばちゃん。芦屋から来た人間はなんでも高いものを持っていると実感することになる。イタタタタ。

山本さんはというと加藤君ほどではないにしろ上位クラスで健闘していた。ことに英語の発音はなめらかで先生よりも遥かに流暢だと感じた。それでいて清楚でおとなしい。話をしたことはなかったが、小生にはかなり気になる存在だった。特に記憶にあるのは彼女の体操着姿であり、本庄中学の女子は当然ながら学校指定のごく普通の体操着なのだが、山本さんの体操着は芦屋で着ていたモノらしくて、似てはいるけどどこか違っていた。何が違うのか。そこが問題なのだが、一言で表現するなら「ドキッ」とするのである。それまで本庄の女子には感じていなかったセクシーさと言うか、妙にボディラインにフィットした感じが新鮮であり、“これが芦屋の女子なのか・・”と感嘆した体育の時間であった。




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