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引き算で考える ♯休職記8

診断書を提出した。

「あー休んでしまった、早く元気になって早く戻らなきゃ」
という思い。

お茶を飲みに来てくれた師匠につぶやくと言われた。

「戻るってことは働いてる自分かが本来の自分なんやねー。まぁ自己肯定感上げるには仕事は手っ取り早いからなぁ。」

え?働いてるのが普通なんちがうん?
働いてない自分なんておかしいやん?と思っていた。

学校を卒業してすぐに就職した。就職氷河期だったけど私は勉強してしてしまくって資格をとりまくって就職を成功させた。依頼ずーっと私には肩書があった。〇〇高校生の和都さん、〇〇にお勤めの和都さん、お母さんの和都さん、〇〇さんの奥さんの和都さん。

子供は大きくなり、離婚して1人、仕事もやすんでる私はただの
「和都さん」
になった。それがとてつもなく恐ろしいのだった。早く〇〇にお勤めの和都さんに戻らないととあせった。社会に私の居場所はなく消された存在のような気がした。

焦った私はケガして落ちた筋肉が戻れば、痛くなくなって仕事できるんだ!と思い込み筋トレをがんばった。でもやると身体が痛くなる。前のように動けず痛い身体が焦りに拍車をかける。

ジムに通おうか…
プロテインを飲んだらいいのかな…
もっとリハビリに通おうか…
身体の構造を調べて論理的に筋トレしないと…
痛くても動かないと…

そんなぐるぐるしている私をみて友達のプーさんは言った。

「和都さんはさー、足し算じゃなくって引き算で考えないとねー。」

パチンと横っ面を叩かれたようだった。

また自分をいじめようとしてる。

あれもしてこれも身体に入れて
痛めつけて痛めつけて
またぎゅうぎゅうのバスに戻ろうとしてる。
せっかくバスを降りて自由になったのに。
染み付いた「自分をいたぶる」癖はなかなかに厄介だ。

まだまだ家にいる自分に罪悪感を感じ、自分の家なのに居心地の悪さを感じていた。