プロテインボトルから。
上司と別れた僕はまた同じ日々の繰り返しが続いた。
朝起きて仕事へ向かってそのまま寝て。
何かをするわけでもなくモヤモヤした毎日を送っていた。
僕はこのあたりから乱れてしまった。
せっかくダイエットした体重も増えてしまい、
顔も吹き出物だらけ、清潔感のかけらもない。
周りの友達からは、なんかあった?大丈夫?
と言われるくらい容姿も変わってしまった。
このままではダメだろう。
そう思い、ジムだけは再開することにした。
24時間やってるジムだから気軽に行けるし、
なにより人のいない時間にトレーニングするのが好きだった。
でも時間がバラバラなのに毎回一緒になる人がいたのだ。
そして僕のプロテインボトルとその人のプロテインボトルが同じだった。
その人と話をする機会ができた。
彼が僕のプロテインボトルを間違えて持って行ってしまい、シャワー室へ行ってしまったのだ。
僕が気づいてシャワー室へ向かった。
すみません、間違ってたみたいで!
交換しますね!
そんな流れだったと思うが、向こうと悪いっすー!
みたいな感じで、ボトル同じですもんね!みたいな流れで話をすることになった。
なんと彼は同い年!
最近引っ越してきてジムに通ってる!
みたいな感じで何故か仲良くなりジムに行くたびに話をするようになった!
仕事の転勤できたのであまりこの辺は知らないこと。
とりあえず暇だからジムに来てる。
料理がすごく苦手でジム来てる意味なくて外食ばっかしちゃうこと。
なんだか可愛くて自然と、飯作りすぎちゃうから食いに来たら?みたいに誘ってしまった。
彼の反応は意外にも、
え?まじで?めっちゃ行くけど!
みたいなノリだった。
そんな彼とのディナー会が翌週開かれることになった!
好きな食べ物はあらかじめリサーチ。
確かに普段自炊しないとお魚とか食べたくなるよなー。
何作ったあげよう。そんなこと思いながらディナー会を迎えた。
住んでいるところも徒歩5分くらいというのもあって、いつものジム着でラフな感じで僕の家に来た。
彼の体型は細くもなくいい感じの肉付きがあって、どのくらい食べるかわからなかったのだが、僕がお弁当の分と4号炊いたご飯を平らげてしまったのだ(笑)
僕の母性というか、たくさん食べてくれる姿にキュンとしながらご飯を食べおいた。
その後はswitchのゲームをしながら話したり、
軽くお酒なんて飲んだりして2人でリラックスしていた。
ソファの距離が自然と近くなっていくたび、僕はドキドキしてしまっていた。
でももう、ストレートの人は好きにならない。
都合のいい関係にもならない。そして駆け引きしない。
そう自分ルールを決めていた。
そんな時彼が僕と肩を組みながら、
みなとが女の子だったらもう付き合って一緒に住んでるよな!!
料理できるしいい奥さんになりそう!
みたいなことを言って来てくれた。
僕はとっさに、
喜んでくれて嬉しいわー!
でも男の子でごめんだわ〜!
みたいなノリで返した。
でも距離が近い。
ドキドキする。
そんな感じで彼とお家デートをしていた。
彼から、帰るのめんどくさい〜!みたいなこと言われてて、その時は何も考えず、風呂入って寝るばっかにして帰れば??みたいな感じで伝えてみた。
え?いいのー?風呂借りちゃおっかな〜!
みたいな軽いノリでその場で服を脱ぎ始めた!
ストレートの男性あるあるで、
よくこういうことをしてくる。
でも僕はどんな時でも平常心。
慣れているのだ。
でも彼は全然普通に服を着ないままタオルで拭きながら出てくるようなタイプだった。
そんな彼からふと聞かれてしまった。
みなとってさ、男の人が好き?
いや別に言わなくてもいいんだけどさ。
なんでか聞いてみたら
話し方らしく、彼の周りには僕みたいな奴はいないらしい。
一応、違うことを伝えたのだが、全然信用されてない感じだった。
その後彼からいきなり抱きしめられた。
飯ありがと。
そんで地元じゃないのに仲良くしてくれてありがと。
俺おかしいのかな。なんかすげー抱きしめたくなった。
彼からの言葉に驚きが隠せない僕。
たぶん彼は寂しかっただけだ。
そう思いながら背中をさすった。
やっぱり今日泊まっていく!!
そんなことを彼から言われてしまって、これ以上いたらおかしくなる気がする、、。
僕は思い切ってカミングアウトをした。
彼はじっと僕の話を聞きながら、逆に背中をさすってくれた。
でもわかって欲しいのは、決して狙っていたわけでもないし、きっかけはプロテインボトルなだけ。
彼に必死で伝えている自分に笑ってしまった。
でも彼は否定しなかった。
むしろ、男性とそういう目で見たことないから興味があるというのが勝っているようだ。
俺で良かったら友達以上スタートしてみる?
みたいなノリで軽い感じだった!!
僕はもう失敗したくなかった。
気持ちはありがたいけど、関係を持つのが怖かった。
そして今までの恋愛を話すことにした。
彼は、それならこの関係を続けよう!
友達として仲良くしよう!
とてもいい回答だった。
ただ、、、
一回だけできるかしてみたい!と
おそらく興味本位だろう。
断り切ることができずそのまま関係を持ってしまった...
彼との行為は今までは違い
優しくて大事にされている感じが強く
彼と付き合ったら幸せになりそう。
ただただそんな気持ちになった。
そこからジム彼とは一緒にご飯を食べたり
お家デートしたり
2人でジムに通ったり仲良くなった。
意外と趣味も同じで打ち解けるのは早かった。
多分僕も好きになっていた。
優しい彼に惹かれていたと思う。
彼は教師だった。
家でも仕事することが多く、物事もよく知っている。
なおさら男となんか付き合ってほしくない。
そんな気持ちでいっぱいだった。
彼はこんなネガティブな僕に対して必死でアプローチしてくれた。
また僕がしてしまったのは何も成長してない
駆け引きの連続だった。
彼と会うたびにネガティブな発言ばかりしていた。
女の人と付き合っていいんだからね。
僕なんか後回しで遊んできたらいいからね。
連絡だって毎日してこなくていいからね。
彼はそれを聞くたびに困っていたと思う。
それでも彼は優しく僕に構ってくれた。
しばらくしてから彼から旅行へ行かないかと誘われた。
彼は車を納車したのでドライブしたいらしく、2人で温泉旅館へ旅行へ行くことになった。
移動中の車の中でそっと繋がれる手。
目的地に着くまで僕は彼と手を繋いだ。
何も会話はしない。
手の温もりだけでお互い話しているようだった。
時折音楽を一緒に歌ったり
懐かしソングで笑ったり、楽しい時間だった。
そして宿についてからその夜、
彼から告白された。
お前を守ってあげたい。
一緒にいよう!気にしなくていい!
そんな言葉を言われながら一夜を過ごした。
僕から彼の告白に返事をすることはなかった。
でも一線は超えた。
自分自身のことを最低だと思った。
帰り道、僕はゆっくり話し始めた。
あなたは教師で家もしっかりしてて
長男で僕は気持ちがわかる。
僕も長男で、結婚は?子供は?と親に会うたび聞かれて気まずい気持ちになる。
親族の集まりに僕は行くことができない。
今は若いからお互いそばにいてもきっと後悔する日が来る。
そんなリスクを背負って付き合うなら、都合のいい関係でいい。
彼は手を握りながら僕の話に相槌していた。
そしたらみなとが幸せになれないじゃん。
俺のことばっかじゃん。
ジムで出会って仲良くなったのも運命じゃん。
でもたしかにみなとの言う通りだ。
彼自身も納得していた。
でもまだそばにいたい。
彼と繋いだその手をはなすことができなかった。
考えが矛盾していた。
彼とはその後、
友達以上恋人未満な関係を続けることになった。
彼は精一杯僕を愛してくれた。
僕もなるべく彼の気持ちに応えようとしていた。
でもやっぱり彼はバイセクシャルだった。
学校関係でお見合いが必要となった。
感じのいい女性とお見合いすることになり、
僕にお見合いすることを伝えてくれた。
別にただ付き合いでお見合いするだけだよ。
みなとからはなれないよ。
大丈夫だから。
彼の性格なら意地でも断ってくるだろう。
でも彼が正気に戻るチャンスだ。
僕はむしろ成功してくれと願いながら
彼を送り出した。
彼は複雑な顔をして戻ってきた。
その女性はとても品があり、理想な奥さんになりそうだった。
でもみなとといる方が楽しい。
どうしたらいいのかわからない。
彼は参ってしまっていた。
僕は彼にお見合い女性と付き合ってみることをお勧めした。
僕が味方でいる。ずっと。
そんな気持ちを持って彼を励ますことしかできなかった。
彼とは友達のまま今まで通り会い続けた。
何も変わらない。僕も一緒の時は気持ちに答えていた。
都合のいい関係。駆け引きを繰り返しながら僕は二番手の存在を選んだ。
自分といるときは1番の存在になってあげよう。
彼は日頃のストレスを僕で癒してくれた。
たくさんの言葉をかけてくれた。
一緒に幸せになれたらよかったのだがら彼はお見合い女性と付き合い、子供ができて最近結婚することとなった。
選択は間違えていなかったはずだ。
一番の味方でありたい。
そう言って自分を言い聞かせることによって否定しないでいられると思っていた。
彼と付き合えば安牌だったのかもしれない。
リスクヘッジし続けた結果、また僕は1人だった。
それでも幸せになりたい僕は前に進んでいく。