ディストピア小説：禁じられた美少女の国

2025年1月5日 15:23

序章：消えた絵画

2038年、日本。
「芸術規制法」の制定から5年が経過した。法の施行により、その中でも最も物議を醸したのが、ロシアやその周辺国をモチーフとした美少女イラストの全面禁止だった。

街中の書店からは関連書籍や画集が消え、ネット上で愛好家たちが集っていたフォーラムは閉鎖された。投稿者は摘発され、罰金刑や社会的制裁を受けるようになった。この規制は「国際的な調和のため」という名目で導入されたが、実際には政府が文化表現を統制し、内外の緊張を避けようとする意図が透けて見えていた。

登場人物

物語の展開

第1章：秘密のギャラリー

雪奈はある晩、アレクサンドルと名乗る青年から暗号化されたメッセージを受け取る。「この国では忘れ去られようとしているが、私たちの文化は生き続けている」。彼の指示で雪奈が訪れたのは、地下に隠されたギャラリーだった。そこにはかつて日本で愛されたロシアモチーフの美少女イラストが数多く展示されていた。

「これが……禁止された世界？」
雪奈は目の前の光景に息を呑んだ。彼女自身が描きたかったものがそこにあった。

アレクサンドルは語る。「あなたのような才能を持つ者が、この不条理な法によって自由を奪われるべきではない。私たちは、規制に抗い、この美を取り戻すために戦っているのです。」

第2章：監視社会の影

政府は市民一人一人を「倫理遵守システム」と呼ばれるAI監視網で追跡している。ネット上の通信は全て解析され、違反の兆候があれば警察が動く。雪奈はこのシステムの目を逃れながら、アレクサンドルの地下組織に参加するようになる。

しかし、ある日、彼女の活動がAIに感知されてしまう。自宅には「警告通知」が届き、彼女は逃亡生活を余儀なくされる。

第3章：抗う者たち

雪奈とアレクサンドルは、かつての愛好家や隠れたアーティストたちを集め、反規制運動を組織していく。「美少女イラストを守ることは、表現の自由を守ることだ」との信念を掲げ、違法コピーの配布や、海外サーバーを使った密かな公開活動を行う。

一方で、長谷川局長は彼らの動きを察知し、執拗に追い詰めていく。「表現の自由」と「国家の安定」の狭間で揺れる彼の信念もまた、物語に緊張感を与える。

最終章：新たな時代

物語のクライマックスでは、雪奈が描いた最新作が秘密裏に国際展で公開される。しかし、それが政府に知られると同時に、日本中の「倫理遵守システム」に対するハッキング攻撃が行われる。

アレクサンドルはこう言う。「これが最後の賭けだ。このシステムを倒さなければ、未来のアーティストたちが絵を描く場所さえ失われてしまう。」

果たして、彼らの運命は――。

このディストピアは、表現の自由がいかに脆弱であるかを描き出している。規制は正当性を装っていても、文化の多様性と創造性を抑圧する危険性を孕んでいる。物語を通じて、読者に「自由とは何か」「文化を守るために何ができるか」を問いかける作品となるだろう。

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