平井寛人レビュー | 新訳「NO MAN'S LAND」リーディング
自分のポジションや力を保持するために、不都合な居心地の悪さなどを時に不条理に無視しながら、4人が静かなマウントを取り合うさまが印象的だった。特にスプーナーが使用人のふたりに小馬鹿にされ、スプーナーがどのようにその場の存在意義を奪取していくのか期待させられ始めるあたりに、思い入れを抱き、その辺りから遠いところに合った物語のピントが手前に当たってくる感覚があった。チラシにあったように「ローンチ企画」ということなので、細かな演出、演技スタンスなどに対しての違和感は最初から持たないようにしていたが、それでも翻訳の意図に興味を持たせられる時間ではあった。今回は座組の試みに対して、インテリジェンスな態度の濃い、引いてみせるような興行性が感じられ、私はそうした、パズルゲームとも全く違った、ペンと紙だけを用いるような、筋力を持って知的に臨む興行が得意ではない為、本クリエイションに対してその点適切な客ではないという前提こそあれど、その面白味があるのもまた事実であって、本公演がどのような体裁や態度をもって作品を拓いていくのか、団体の可能性と行く末に興味を持っている。
平井寛人