[Part .2/5]チーム「相剋之杜」牌譜検討集 手組み編(後半)【9期ぷりぷりーぐ】
スライドのリンク集
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※牌図の下にある【第○節 ○○さん視点】というところからも飛べます.
はじめに
9期ぷりぷりーぐで,Roidさん率いるチーム「相剋之杜」に所属していた江山です.
全12節のリーグ戦の間,チームメイトのRoidさん,りくまるさん,りりさんの牌譜を検討する中で話題に上がり,検討スライド(Google Slides)にまとめた内容を,本記事に全12節分集結させました.
全節分のスライドがこちらからご覧になれます.
おおまかな対象レベルは【魂天を目指す雀聖】ですが,【雀豪~雀聖】の方に参考になる内容も広く扱っています.
レベル感としては
に近いイメージです.なんなら本noteの内容は,これらの書籍にあった記載を参考にしている部分が多いです.
チームメイトのみならず,全ぷりぷりーがー・ぷりぷりーぐ関係者・外部の方々にも参考にしていただければ幸いです.
前回(Part.1)と今回(Part.2)は【手組み】の内容について扱います.
牌図の下にある【第n節 ○○さん視点】という文字をクリックすると各回のスライドに飛べます.詳細な説明はこちらからどうぞ.
1-2. 鳴くかどうかの基準
1-2-1. 役牌を仕掛ける基準(第1,2,8節)
役牌トイツがある場合,それをポンすれば役が確定するという利点がある一方で,守備力が損なわれてしまうという難点もある.役牌トイツをポンするかどうか迷ったら,以下の3つの基準を参照すると良いだろう.
①遠い仕掛けになっていないか?
面子があるかどうかが重要な基準.0面子なら「遠い仕掛け」となる.
また,愚形だらけの場合も「遠い仕掛け」となる.
②打点はあるか?
3翻あるかどうかが重要.2翻以下なら「安い仕掛け」となる.
③守備力は伴っているか?
端牌や字牌のターツが多い時は発進しやすいが,役牌以外が中張牌だらけになっている場合はリスクが大きくなる.
役牌を仕掛ける際は①~③のどれか(できれば2つ以上)を満たしておくべきである.上記の実戦図(1)(2)はスルーすべき典型例.
一方で,①~③をどれか満たしている場合は,よほど門前リーチが近い場合以外は基本的にポンするのが良い.やはり圧倒的に和了率が上がるためである.上記の実戦図(3)はポンするのが良い.
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1-2-2. 役牌以外を仕掛ける際に考えるべきこと(第2,8節)
役牌以外の仕掛けに関しては,「そこを仕掛けても役が確定しない」.
したがって,
1-2-1で扱った 「①遠くないか ②打点は伴っているか ③守備力はあるか」という基準はもちろん,それに加えて「本当に早くなっているか」にも留意する必要がある.
(1)は,ポンしなくても両面ターツが複数あり,門前進行で十分間に合いそうが,ポンすることによって[445p]の好形が埋まり,[78p][78m]の[6-9p][6-9m]受け良形が[6p][6m]受けの愚形に成り下がるため,早くなっているとは言い難く,手が短くなることにより守備力が低下してしまう.よってスルーするのが良い.
(2)は,確かにチーすると[133p][2357s]が劣化するが,門前進行では間に合わなそうであり,結局鳴いて前に出ないと和了は厳しそう.
遠い鳴きをする際に懸念点となる守備力も,今回は全方面に安牌候補が複数あることから申し分ない.よってチーで問題ない.
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1-3. 応用の効く方法論
この場面では,具体的な基準とは別に,「こういうふうに考えて手を組むと正解を選びやすい」という,思考の指針のようなものをたくさん示していく.
1-3-1. 相対速度,和了率を考慮した手組(第1節)
河2段目に差し掛かった頃からは,平面の情報だけでなく,立体的な情報も加味して手組をすることが重要となる.
具体的には,以下①②を意識したい.
①和了率:自分の手はどれだけテンパイに近く,どれくらいの確率で和了れそうか.
②相対速度:周りの人の速度に,自分の手は間に合っているだろうか.
具体的な指標として,2段目に差し掛かる段階でゼロ面子なら,①②ともに劣っていると見てよい.
和了率・相対速度で劣る場合,手牌の守備力をキープできるよう工夫したい.特に,攻守兼用の牌が持てると良い.
上記の実戦図では,平面なら[2m]を残してタンヤオをMAXに見るのが良いが,①②ともに劣っているといえるため,持っていなくてもタンヤオの5ブロックは見込めそうな[2m]を払って,字牌を残すのが安定しそうである.
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1-3-2. 理想の5ブロックから逆算して,価値ある手になるか構想する打法(第2,3節)
ターツや浮き牌の選択で迷った場合は,「今持っている手材料から,どこで5ブロックを完成させたら3翻以上の手が作れるか」の構想を練った上で,価値ある手にするのに不要なターツを消去法的に払うのが良い.
(1)のケースでは,①リーチ+イッツー か ②リーチ+ドラドラ が3翻以上になるルートなので,[6m]は不要である.
(2)のケースでは,①リーチ+ドラ([1p]を使いきる)+ツモ or 偶発役 か,②リーチ+タンヤオ([6s]を使い切る)+ツモ or 偶発役 が3翻以上になるルートなので,持っていても愚形リーのみにしかならなさそうな[12m]を払っていくのが良い.
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1-3-3. 裏目について過不足なく比較する(第1, 3, 9節)
それぞれの選択には裏目がある.難しい何切るを考える時は,裏目をしっかり考えたい.具体的には,以下の観点で考えると良い.
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① それぞれの裏目を把握し,それぞれがどれくらい痛いか考える.
例えば上記(1)の実戦図では,打[8m]の裏目が[7m]引きであることと,打[1p]の裏目が[5p]引きであることを把握し,どちらがより痛い裏目かを考えるとよい.答えは打[1p]となる.
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②打牌選択に,その裏目をカバーするだけのメリットがあるかを考える.
例えば上記(2)の実戦図で打[7p]すると,瞬間的に[1m][7p][8p]の受け入れが裏目となる.それを埋めるメリットとして期待されるのが最終形の[6-9p]率の上昇であるが,今回は[6-9p]が5枚見えており,メリットとして機能していない.よって打[7p]は適切な打牌ではない.
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Ex.「多牌断捨離法」を使う.→第3節
裏目を把握するための具体的な思考方法.
①「多牌OKのルール」と仮定する.つまり,「今の14枚からさらに追加で1枚引いて,好きな牌を2枚切れるルール」と仮定する.
その場合に,何を引いて多牌し,その後2枚切ったらテンパイできるかを,過不足なくリストアップする.
②それぞれの打牌候補について,①でリストアップした牌の中から何が裏目になるかを考える.
こうすると,各選択肢の裏目や,その裏目を引いた時の痛さを列挙しやすいため,正しく「断捨離」ができる.
例えば,[8m]がドラの場合,[135668m 22p 34赤5789s]について,「多牌断捨離法」を用いる.
①多牌OKのルールだと仮定すると,[2467m 2p]でテンパイする.
②それぞれの打牌候補について考える.打[1m]は[2m],打[6m]は[6m 2p]が裏目となる.打[8m]については裏目が存在しない.
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1-3-4. 何切る問題の多角的な要素比較(第3,6,10節)
(1)~(4)は全て意見が分かれそうな難問である.この項目では,複雑な何切る問題で一般的に使える考え方を扱う.
複雑な何切る問題に対峙した場合は,以下のステップで考えていきたい.
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①それぞれの選択肢でどういう受入れがあるかを過不足なく把握する.
必ず「全選択肢に共通の受け入れ」が存在するので,1-3-3のように,それぞれの選択肢の裏目を考えた方が合理的であることが多い.
例えば上記の実戦図(1)[667m 234p 1134赤5689s]では,
[7m]を切った場合は[5-8m]が裏目,[9s]を切った場合は[2s]が裏目となる.つまり,打[9s]の方が受入れは広い.
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②各選択肢の特有の受け入れ(あるいは裏目の受け入れ)について,打点や待ちの強さを比較する.
例えば上記の実戦図(1)[667m 234p 1134赤5689s]では,
[7m]を切った場合,[7s]引き,および打[9s]にはない受け入れの[2s]引きでイッツーが付く.[9s]を切った場合の[5-8m]引き,[7s]引きは打点面で劣る.
基本的には①②が出来れば問題ない.もうワンステップ上の比較を目指したければ,以下も考慮すると良い.以下の比較は,ウザク本の赤や青で求めらるハイレベルなものであり,実戦で正答できなくてもやむを得ないだろう.
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③各選択肢の(a)変化の強さ・(b)後から出ていく牌の危険度・(c)河の強さ などを比較する.
例えば上記の実戦図(2)[789m 234445赤578p 88s]では,
打[2p]と打[4p]を比較した場合,打[4p]の方に,(b)後から出ていく牌をワンチャンスで安全度の高い[2p]に出来る可能性がある (c)[4p]→[2p]の切り巡により,最終形の[3-6p]が強くなる可能性がある というメリットが見込める.
また,実戦図(3) [35567m 2246p 456s 南南]では,[35567m][2246p]という形にそれぞれ変化の余地がある.
(a)変化の強さという観点で考えると,[南]切りはマンズ・ピンズ両方の変化を残し,最も変化に富んだ選択肢となる.
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実戦図(4)は,「目先の受け入れ枚数」という軸と,「変化枚数の比較」という軸の2つの軸からのターツ比較が求められている.このように,複数の観点から長所・短所を割り出して決断を求められる場合も多い.
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1-3-5. トイツフォロー形(112,334等)との付き合い方(第3節)
第3節の牌効率問題では,3トイツの手牌や,トイツフォロー形を複数含んだ牌姿を多く取り上げている.こうした牌姿でよく使う考え方を紹介する.
①3トイツ目が出来ても,2トイツの場合に比べて2枚しか受入れが増えない.
上記の実戦例(1)[赤567m 23466p 112799s]はトイツを3個含む.ここから例えば[1s]を切ってトイツを2個に減らしても,受け入れは[1s]そのものの2枚しか減っていない.そのため,推奨打牌は[1s]である.打[9s]も2トイツ形になるが,対面に放銃抽選を受けるという問題がある.
実戦では,河から残り枚数を把握しつつ,①の原則を生かして打牌選択をしたい.
3トイツ形で[233]などの両面フォロー形がある場合,手役が絡む場合を除いて,そこを固定するのが正解になる場合がほとんどである.
②5ブロックが明確でない場合は,むやみに複合形を固定しないようにするのが良い.
実戦例(2)[5m 4667p 23445赤5678s]は,[5m]の孤立牌や[4667p]の不定形があり,どこで4面子1雀頭ができるか不明瞭である.
[234455678s]は,[2面子+1雀頭]にも[3面子]にもなりうる柔軟な形であるが,ここで打[5s]として3メンチャンを固定すると,[2面子+1雀頭]の可能性が潰れる.すると[5m 4667p]の部分で雀頭を作る必要が生まれてしまうので,[4667p]の横伸びが阻害され,かえって手牌の柔軟性が失われてしまう.
(2)の答えは難しい.打[5m]でシャンテンを取るのが素直だが,ピンズの二度受けが不自由であり,マンズの伸びが一切なくなるので,個人的には打[4p]がよさそうに見える.
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今回の内容はここまでである.副露をするか迷った時の具体的な基準・考え方や,手組・何切るで悩んだ時の具体的な思考のステップを扱った.次回(Part. 3)では,副露警戒のやり方と,押し引き・ベタオリの技術について取り扱う.
ここまで読んでくださってありがとうございます!