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[Part .3/5]チーム「相剋之杜」牌譜検討集 押し引き・他家対応編(前半)【9期ぷりぷりーぐ】


スライドのリンク集

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※牌図の下にある【第○節 ○○さん視点】というところからも飛べます.

はじめに

9期ぷりぷりーぐで,Roidさん率いるチーム「相剋之杜」に所属していた江山です.
全12節のリーグ戦の間,チームメイトのRoidさん,りくまるさん,りりさんの牌譜を検討する中で話題に上がり,検討スライド(Google Slides)にまとめた内容を,本記事に全12節分集結させました.

全節分のスライドがこちらからご覧になれます.

おおまかな対象レベルは【魂天を目指す雀聖】ですが,【雀豪~雀聖】の方に参考になる内容も広く扱っています.
レベル感としては

に近いイメージです.なんなら本noteの内容は,これらの書籍にあった記載を参考にしている部分が多いです.
チームメイトのみならず,全ぷりぷりーがー・ぷりぷりーぐ関係者・外部の方々にも参考にしていただければ幸いです.

今回(Part.3)と次回(Part.4)は【押し引き・他家対応】の内容について扱います.
牌図の下にある【第n節 ○○さん視点】という文字をクリックすると各回のスライドに飛べます.詳細な説明はこちらからどうぞ.】

2-1. 副露手の見方

リーチを受けた場合は,相手のテンパイが確定しており,打点もある程度担保されているため,比較的押し引きを決めやすい.
しかし,副露は打点やテンパイ率など不確定要素が多く,押し引きが難しい.
よって,押し引きのテーマに入る前に,「副露をどう見るべきか」の概論を取り扱う.ただし,煩雑な副露読みについては取り上げない.大まかな「危険エリア読み」などの技術を中心とする.

2-1-1. 副露を見て考えるべきこと(第3節)

(1)【第3節 Roidさん視点】
上家のおもさんが2副露しているが,この副露についてどういう点を把握しておくべきだろうか?
【第3節 りくまるさん視点】
上家の紅鮭侍さんが2副露しているが,この副露についてどういう点を把握しておくべきだろうか?また,自身の手組は平面と変わるだろうか?

鳴いている人を見たら,まず見える情報から想定されうる役と打点を考えるべきである.
・①-1.「19牌・オタ風」が絡む鳴きをしていないかは当然把握されるべきである.
・①-2.「残っている役牌は何か」を欠かさず把握したい.
・①-3.晒されているドラの数・役の翻数と,持っていそうなドラの数から,打点を推定したい.持っていそうなドラの数については,「タンヤオ仕掛けでドラが19牌なら安そう」「ドラが既に4枚見えているから安そう」などというところから推定できる.

例えば上記の実戦例(1)では,「19牌」が絡む鳴きをしているため,生きている役牌[南][發][中]のいずれかが絡んでいる可能性が高い.また,見えている副露部分にドラが2個絡んでいるため,打点は5800点以上あり,注意すべき仕掛けといえる.

実戦例(2)の何切るは,[24m]と[89m]の選択である.平面上の正解はもちろん打[24m]だが,上記の①-1~3を踏まえて考えると「上家がタンヤオの可能性大であり,マンズを持っていそう故高打点が想定できる」ということが分かるため,[89m]の選択がかなり有力になる(注釈:上家は,役牌バックなら[4s]をダイミンカンしない可能性が高いため,役牌率が下がっている).

このように,副露対応においては,まず「役と打点」を把握することが何よりの基本である.麻雀は考えることが多く難しいゲームだが,副露の「役と打点」だけは把握が漏れないように訓練していきたい.
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2-1-2. 鳴きの危険エリア・テンパイ率(第8節)

【第8節 Roidさん視点】
上家のぱいせんさんがやや濃い仕掛けをしているが,現時点ではどれくらいテンパイしていそうだろうか?また,どういう牌が危険だろうか?

副露に対する押し引きにおいては,切ろうとしている牌の危険度や,副露者のテンパイ率を見積もることが必要不可欠である.
この際に重要なのは,「鳴きの危険エリアを考える」ことである.
具体的な方法,および牌の危険度・テンパイ率の見積もり方は以下の通りである.

もちろん実戦ではここまでしっかり表を作ろうとしなくて良い.「マンズの真ん中とピンズの下が残っているな~」と漠然と考えるだけで十分である.

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2-1-3. ホンイツ仕掛けのテンパイ率(第1, 11節)

(1)【第1節 Roidさん視点】
下家のてんさんがリーチ.それに対して,マンズ染め模様だった上家のかすてらさんが[2m]を手出ししてきた場面である.上家はテンパイしていそうだろうか?
(2)【第11節 りくまるさん視点】
対面のかすてらさんはソウズ染め模様である.先ほど[9s]を手から出してきたが,どれくらいテンパイしていそうだろうか?

ホンイツのテンパイ率を考える指標としては「染めている色の数牌が出てきたらテンパイ」というものが一般的だが,
字牌がどれくらい飛んでいるか」ももう一つ重要な指標となる.

本人が切っていない生牌や1切れの字牌が残っている場合,手牌に[南南 北 發]など,孤立の字牌が浮いていることが多いため,テンパイ率はまだ低いと考えられる.上記の実戦例(1)では,枯れていない字牌が多く,ほぼノーテンであろう.

また,数牌が余っている場合でも,その数牌の重要度が低い場合は,ノーテンのことが多い.例えば上記の実戦例(2)のように,[8s]をポンした人が[9s]を余らせた場合も,[9s]は手牌にあまり必要でないため,テンパイ率はさほど高くない.
自分の手の価値が高く真っ直ぐ進めたい時や,逆にリーチにベタオリしている時など(上記の実戦例(1)に該当)に,テンパっていなさそうな染め手の人がいる場合は,自分に不要な染め色の数牌を先処理してよいケースが多い.
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2-2. 押し引きの具体的な基準・方法論

2-2-1. 副露押し引きのシンプルな原則(第6, 10節)

(1)【第6節 りくまるさん視点】
下家のかのっちさんはソウズが高そうな仕掛けをしている.対面のしろもふさんも仕掛けている.ここではどう立ち回るべきだろうか?
(2)【第10節 Roidさん視点】
下家のかのっちさんはソウズが高そうな仕掛けをしている.対面のしろもふさんも仕掛けている.ここではどう立ち回るべきだろうか?

細かい押し引きの思考ステップについては後述するが,基本的には以下の原則を念頭に置くとよい.
①. テンパイしていなさそうな副露は無視する
②. テンパイしていそうな副露には,
   (a). リャンシャンテンから危険牌は切らない
   (b). イーシャンテンから2枚押し前提の危険牌は切らない

上記の実戦図(1)では,下家がソウズのホンイツでテンパイしている可能性が十分考えられる(詳細はスライド参照).この状況で[12s]を落として真っ直ぐ打つ手順は,「②(b). イーシャンテンから2枚押し前提の危険牌は切らない」に抵触してしまうので,避けるべきである.

上記の実戦図(2)では,対面はまだノーテンの可能性が高い(詳細はスライド参照).自分の手の価値もそれなりにあるので,ここからは真っ直ぐ[5m]を打つのも十分ひとつの選択肢である.
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2-2-2. リーチに無スジ2枚を押せるか否かの基準(第2節)

【第2節 りくまるさん視点】
下家のあやねるさんから立直を受けた一発目.自身は親番のpメンピンドラ1のイーシャンテンだが,無スジが2枚浮いている.どうするべきか?

原則的に,リーチに対してイーシャンテンから無スジ2枚を押すのは損になる場合が多い.
ただし,もちろん例外はある.例えば上記の実戦図では,NAGA解析により押し有利であることが示されていた.

ここでは,条件を少し変えてNAGA解析してみた.結果,以下の通りになった.

リーチに対する後手の押し引きでは,自身が親か子かでかなり押しやすさが変わるということが分かる.

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2-2-3. 攻守両天秤打法(第8節)

(1)【第8節 りりさん視点】
トップ目で,下家のてんさんのリーチを受けている場面.それなりに価値のあるイーシャンテンだが,どう立ち回るのが良いか?現物は[5s]の1枚である.
(2)【第7節 江山視点】
パッチるドンさんのリーチを受けた一発目である.自身はイーシャンテンであるが,比較的安全度の高い[8p]を切って粘っても良いだろうか?


攻守両天秤打法」は,安牌が少ない微妙な押し引きの時に,「とりあえず通っていない牌を通して安牌を増やし,押すかオリるかの判断を保留する」打法である.以下の3つの条件を満たす時,有力な方針となる.

  1. 安牌が少なく,ベタオリしきれる保証がない

  2. 押す時に切る牌が,ベタオリする時に2(~3)番目に切る牌と同じ

  3. 「価値に乏しい手牌」ではない.(それなりに打点があったり,仕掛けやすかったりといった特長を持つ手牌である)

上記の実戦図(1)における打[2m]や,(2)における打[8p]は,上記の条件を満たしているといえる.

ちなみに「攻守両天秤打法」は,[お知らせ本]では「安牌水増しプッシュ」,[M斬るチャンネル](ずんだもん解説)のPart. 40等では「攻防一体プッシュ」という呼称で扱われている.
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2-2-4. 複雑な押し引きを考えるステップ(第5, 8節)


(1)【第5節 Roidさん視点】
TELLYさん・わなわなさんの二軒リーチ + 対面のいろはすさんの仕掛けが入っている中,自身もリャンメン待ちでテンパイした.この押し引きを決定する際は何を考えればよいだろうか?
(2)【第8節 Roidさん視点】
上家のぱいせんさんがリーチをしている中,下家のかすてらさんも仕掛けている.点数状況は縦長.そこそこ好形のイーシャンテンだが,どうするべきか?

実戦では,以下の3ステップで押し引きを考えたい.

①[手牌価値][待ちの強さ][出る牌の危険度]をパッと確認.
②「押す?」か「引く?」かの基本的なスタンスを決める.
③盤面をさらに詳しく見て,[待ちの強さ]・[出る牌の危険度]を精査し,他の要素(巡目,点数状況など)も考慮して,結論を出す.

・2-2-1の「副露押し引きのシンプルな原則」は,対副露押し引きにおいて②を決定する上での近道になる.
・点数状況判断がステップ③に配置されている.つまり,「大差で押し」「大差でオリ」の判断は点数状況によって覆らないということである.これを肝に銘じておかないと,トップ目で不必要にオリ過ぎたり,ラス目で無理をし過ぎたりといった誤りに繋がる.

実戦図(1)(2)の説明については,それぞれの節のスライドに詳しく記載している.

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2-2-5. 仕掛けに危険牌を先勝負するかの基準(1,8)

(1)第1節 Roidさん視点
下家のてんさんの仕掛けに対して,[5p]を「テンパイしているか分からない今のうちに先勝負」して良いだろうか?
(2)第8節 Roidさん視点
上家のぱいせんさんの仕掛けに対して,不要な[4m]を「テンパイしているか分からない今のうちに先勝負」して良いだろうか?

仕掛けに対して,自分の手に必要ない危険牌を先勝負するかどうか迷ったら,以下の3つの基準を参照するとよい.

  1. 自分の手の価値が高いほど先勝負寄り

  2. 副露者のテンパイ率が低いほど先勝負寄り

  3. 巡目が浅いほど先勝負寄り

2のテンパイ率については,2-1-2の「危険エリア」の考え方に基づいて見積もるとよい.上記の実戦図(2)については,説明スライドで危険エリアについて記載している.

上記の実戦図(1)は基準1〜3をすべて満たさないので,打[5p]の先勝負は控えるべきである.一方で、実戦図(2)は少なくとも基準1を申し分なく満たしているので、十分[4m]先勝負に値する.

注意点として,「自分の手に必要な牌」を「鳴き手に後々危ないから」という理由で先切りして「自分の手の価値を下げてしまう」のは良くないので避けたい.
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2-2-6. 子の愚形2600で追いかけリーチするかの判断基準(第7節)

第7節 りりさん視点
下家のパッチるドンさんのリーチに対して,自身もカン[7s]の2600テンパイで追いついた.どうするのが良いだろうか?

子の愚形2600でリーチに追いついた際は,とてもセンシティブな判断が要求される.基本的には,以下の3点を重視していきたい.

相手が子の時,切る牌が両無スジまたはそれに準ずる放銃率の時は,オリが無難.
相手が親の時:無スジ切りならオリ寄り.
・それ以外にも,状況が悪ければトリダマやオリを選択するのが良いケースが発生する.
「状況が悪い」とは,「巡目が深い」「自分の待ちが特に悪い」「ドラが中張牌であり固められていそう」「第三者が参加している」という要素が複合しているか,またはいずれかの要素が強い場合である.

上記の実戦図においては,一発目であることや待ちが悪いことがマイナス要素となり「悪い状況」に傾いてはいるが,リーチで問題ないだろう.
とはいえ,やはりリターンのわりにリスクが大きい判断となるので,場の状況の悪化には常に敏感でありたい.
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2-2-7. 正確なオリ方(第2,3節)

(1)【第2節 りりさん視点】
下家の常夏さんのリーチに対してオリている.何気ない一場面だが,どうするのが良いか?

上記の実戦図(1)は,第3者を考慮したベタオリの切り巡がテーマ.
リーチに対して完全にオリる際は,なるべく他家の共通現物を残して,他家に危ない方から処理したい.リーチに通っていない牌を切っている他家がいたらなおさらである.
この場合の正着は打[6m]である.

(2)【第3節 Roidさん視点】
上家のおもさんのリーチを受けた一発目.自分の手牌は勝負に値しないのでオリたいが,どの牌を選択するべきだろうか?

上記の実戦図(2)は,ベタオリ時の安全度比較がテーマ.
候補はスジの[3p]かダブルワンチャンスの[6s]となるだろう.スライドでは正確な安全度比較の議論は割愛しているが,[3p]がスジだからと思考停止で切るのは良くない.
両面・シャンポン・カンチャン・ペンチャン・タンキという,ありとあらゆる放銃形を列挙したうえで比較検討する習慣を付けたい.
実戦図においては,ドラ絡みのペン[3p]が十分想定されるということに留意したい.

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今回の内容はここまでである.副露を受けた際にどういうところを見るべきかという話題と,押し引き・ベタオリにおける具体的な技術を扱った.次回(Part. 4)では,他家に対応しながら自分の手作りの方針を決める技術や,点数状況判断について扱う.

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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