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デジタル情報との上手な付き合い方 情報モラル・セキュリティ学習で考えよう
インターネット利用の低年齢化や長時間化が進んでいますが、デジタル情報との上手な付き合い方を学ぶ機会は多くありません。e-とぴあ・かがわでは、専門講師を派遣する情報モラル・セキュリティ学習を実施しており、学校などで開かれています。香川県内の高校で開催された出前授業の様子を取材しました。
「カズオさんは、近所に元受刑者が引っ越してくるという友人からの情報をタイムラインで見つけ、自分のタイムラインにもリポストしました。しかし、後日、元受刑者が引っ越すことになったという噂を聞きます。カズオさんは慌ててタイムラインから情報を削除しましたが、既に拡散されていました」
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講師は、e-とぴあ・かがわで教育普及を担当している小西敏子です。2024年度のテーマは「 人権とメディアリテラシー」。全校生徒を前に体育館でマイクを握り、生徒たちに語りかけます。「ネットメディアを使うときは、その情報によって苦しむ人がいないか考えてほしいと思います」。そして、カズオさんの物語をもとに、ネット情報との付き合い方について考えを深めていきました。
「カズオさんの友人はなぜ、あのような投稿をしたのでしょうか。数人でグループになって考えてみてください」
生徒たちは数人単位で対話。小西も笑顔で輪の中に入って、発言を促していきます。生徒からは「身近に悪い人がいるかもしれないので、気になった」「何も考えずにリツイートしていた気がする」などと考えを述べました。
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ディスカッションは次のステップに進みます。小西は「皆さんだったら、投稿を見たときどのように受け止めると思いますか」と問いました。「自分の町の近くなら怖いと思うが、離れていたら気にならない」「自分にとってメリットもデメリットもないから、どうでもいいと思ってスルーする」。生徒からの発言です。
こうして、SNSでの発信には、どんな意図があるのか、そして、私たちはどのように受け止めているかということをその人の立場になって考えることで、思考を深める時間をとっていきました。生徒数人単位でのディスカッションは5~6回に及び、生徒たちには「考える」というスイッチが入ったようでした。
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「刑を終えた人や家族にも人権があります。立ち直ろうとしている人を地域社会で受け入れることは大切だと私も気づきました。ネット空間でのメッセージには、送り手の価値観や偏った思い込みが埋め込まれています。それが情報の解釈にどのように影響しているか、私たちは考えなければなりません」。小西はこのようにまとめました。
最後に、情報をめぐっては二つの立場に分かれることを紹介。それは、周りで見ている人(バイスタンダー)と行動する人(アップスタンダー)です。傍観者を超えて、アップスタンダーになるために、生徒からは「一歩踏みとどまる」「正しい情報か、間違えた情報が知ろうとする」「一度受け止めて疑問を持つ」などの考えが発表されました。
小西は「私も調べることに行きつきました。メディアリテラシーとは、社会を知ることにつながります。視野を広げて社会を知ることがとても大切です」と話し、講義を閉じました。