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川上弘美『いとしい』&西加奈子『白いしるし』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2018.02.10 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

裏表紙にそれぞれ、「傑作恋愛小説」「超全身恋愛小説」をウリにしていたので、私の中の川上弘美さんや西加奈子さんのイメージからは意外な感じがして、二人がどんな感じのいわゆる「恋愛小説」を書くのだろうかと興味をひかれて思わずチョイス。

読んでみてビックリしたのが、どちらも、“愛する人との出会いと別れの中で、大きな影響を与えながら通り過ぎていく人々との交流、そして自分探し“というプロットだったこと。とはいえ、作家それぞれの味わいが違うので、全く違う読後感。

まっとうな人間界ではありえない狐につままれたような川上ワールドは、不穏感を漂わせながらも、不思議と嫌な感じにさせない。大阪人的さばさばとした全力西ワールドは、結果的には精神面での体当たり恋愛なのだけれど、表現者でありつづけようとする主人公の強さが救いとなっていて喪失感は薄い。

それぞれのワールド炸裂で、どちらも楽しめましたが、「恋愛小説」の部分よりは、女性の成長小説の部分によりひかれました。浮かばれない結末にもかかわらず、ある種の爽快感すら漂う2冊。