西加奈子『炎上する君』
自分の居場所や行き場を見つけられず、人生にさまよっている人の8つの短編集。主人公達がさまよう場所が、現実社会ではなところに存在していて、いわゆるリアルな物語は展開されません。かといってファンタジーとも違っている……、このフワフワとしたリアルさといったらなんだろう……と思いながらの読書でした。全く異なった不思議世界が8つもそろうと、むしろそちらの方が本物なのでは……なんて思わせてしまうのが西加奈子さんなのかもしれません。
例えば表題作は、炎上するほどの熱をもって生きることなど到底できそうもなかった人が、実は自らも炎上するくらいの熱量を秘めている現実に行き当たる、そんな作品。8つともに、救いとも、希望ともいえるような、これからも続いていくだろうそれぞれ別の結末が用意されています。
人は皆、本当は逃避場所を必要としているのだけれども、それを後ろめたく思う必要はない、迷うときは迷い、進むときは進みなさい、と背中を押してくれるような独特の西ワールドです。