復本一郎『日野草城 俳句を変えた男』
色香のある魅力的な句を遺した日野草城は、私も大好きな俳人のひとりです。書籍のソデには次のような紹介文が書かれています。
本書は、没後五十年を控えて、草城を再評価しようとしたもので、知られざるエピソードなども加えながら、ソデに書かれている内容の全てを詳らかにしていく評伝でした。筆者・復本さんは、草城の純文学意識や芸術至上主義を取り上げ、彼の唯美的、官能的な作品群を評価する立場に立っているので、一般的に評価されている最後の句集『人生の午後』ではなく、処女句集『花氷』を間違いなく俳句を一変させたものとして代表作にあげているのが特徴的でした。
とは言いながら、「私は俳句はもろびとあけくれのうた(諸人旦暮の詩)であると考えてゐます。日常生活の中に見出されるよろこびや悲しみを誰かに聴いてもらひたくて口に出たものが俳句だと思ひます。」との病臥の草城の到達点までがきちんと描かれていきます。
個人的には、男性ゆえにとらえることのできる女性の艶やかさを詠んだ句群が好きでした。