寺山修司『寺山修司の俳句入門』
事務所の書庫で見つけた本書。寺山修司ファンの一人として、彼がどんな入門書を書いたのだろう……と気になり思わず手に取りました。
結論から言うと……、初心者向けに作られた、実用的な俳句の入門書ではありませんでした(笑)。寺山修司没後に編まれたもので、評論的な内容がメインで、「寺山俳句を知るための入門書(齋藤愼爾)」というのが一番正しい題名の解釈と言えそうでした。入門書だと思って入ったので、まず本書に慣れるのに随分苦戦してしまいました(笑)。
彼の活動のスタートを彩る俳句との数年は、主に高校時代に当たるのですが、彼が興した十代の全国俳句誌「牧羊神」にからむ座談会や、句会の記録などなど、どれを読んでもその成熟ぶりに驚きます。「私ら新世代によって革命化された新理想詩」としての俳句を目指していて、俳句もひりひりとした若さに溢れています。
個人的には、彼が俳句をやめたずっと後に、俳句雑誌に依頼されて書いた文章やインタビューなどが、俳句との距離感もあり面白く、より示唆に富んでいるように感じました。日本の近代以降の文学における「私」性の問題なども、寺山修司流に昇華されていき、彼が俳句や短歌をやめた後に演劇だったのも納得できた気がしました。寺山修司は演劇を、肉体そのものが投げ出される「一人の作者の『私の呪縛』などと無縁のもの」であり、「社会科学を挑発する表現形式」として選び取ったのでしょう。