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浜崎慎治『共感スイッチ』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2019.10.26 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

au「三太郎」、家庭教師のトライ「トライさん」、日野自動車「ヒノノニトン」のCMと言えば、誰もが一度は目にし、記憶に残っているCMの代表的なものと言えますが、これらは全てCMディレクター・浜崎慎治さんの作品なのだそうです。私自身も大好きなユニークなCMを作った浜崎さんがどのようなことを語るのか、興味津々で読み始めました。

「共感スイッチ」とは、誰もが持っている「相手の心に何かを残す突破口を開」くための「鍵」のこと。浜崎さんが、CMをつくるコツだと考えている「共感」にスポットを当てて、

おもしろスイッチ(インパクト)
鳥取スイッチ(ベタ)
次男スイッチ(バランス)
国立大スイッチ(共通理解)
教室スイッチ(記号)
朝ドラスイッチ(反復)
父親スイッチ(信頼)
自分スイッチ(軸)

の8つに分類した共感スイッチが、浜崎さん自身の生活や考え方を具体例にだしながら語られていきます。

独創的なCMディレクターということで、私たちでは思いもつかないようなクリエイターとしてのアイデアが語られるのだろうと想像しながら読んでいったのですが、一番意外だったのが、「鳥取スイッチ」で語られた「『ベタ』はすごい」でした。

CMは決して芸術ではありません。もちろん、扱う商品によるかもしれませんが、公共の電波を用いて全国のお茶の間に流す以上、「わかる人だけにわかる」は不合格。子ども、若者、主婦、お年寄り、まずはみんなにわかるところから始めるのが理想です。

CMでは、全員がわかる「ベタ」を起点にして次を考えた方がスマートだという考え方にはハッとさせられました。また、以前は「誰かの力に頼らなくても、センスやアイデアで突破できる」とカッコつけていたが、「センスやアイデアがあるなら、それをさらに有名なタレントさんと一緒に作れば最強」と考えるようになったそうで、「全然知らない」から始めるよりも「知っている」から始める方が記憶に残るという「ど真ん中」理論には納得させられました。

もちろん、書籍では「ベタ」で「ど真ん中」を押さえたうえで、工夫しているところなども語られていくのですが(それは読んでいただくこととして)、CMに限らず日常生活においても、理想ばかりを求めるのではなく、目的にそって選ぶべきベストがあることに気づかせてくれた一冊となりました。