決勝出場者が謎解き日本一決定戦Χ2022を分析する 【〜最終予選編】
※この記事は事前番組『謎解き日本一決定戦Χ2022ナビ』で扱われた最終予選、および同大会3次予選のネタバレをガッツリ含みます。未参加・未視聴の方はご注意ください。なんか予選の内容の一部はアーカイブ版としてLINEで楽しめるらしいね
※また、この記事の内容は執筆者の個人的見解にすぎないことも併せてご承知お願いします。最終予選翌日に勢いで執筆した文章を推敲して今に至ります。全部戯言だと思っていいよ
※さらに、【〜最終予選編】と銘打っていますが現状【決勝編】は書いていません。そんな記事は出ないかもしれません
はじめに
どうも、EMです。
先日、『謎解き日本一決定戦Χ2022』という謎解きの全国大会に参加しました。
5万人以上が参加した予選を勝ち抜き、ペアのあせろらと共に上位8組16人がしのぎを削る決勝にまで無事勝ち進むことができたので、熾烈な戦いのなかで自分が考えていたことを記事として文面に残しておこうと思います。
なお、激戦の様子は以下の日程でMBS/TBS系全国ネットで放送されるので、是非ご覧ください。
追記:事前番組の配信、はじまっています
ペア選び
最初にあせろらに誘われたので、そのままペアを組みました。結果的に良いペアだったのではないでしょうか。
今年ここまで来られた以上、次回があれば流石に再びあせろらと組む予定です。
まあペアの候補となる強い人は他にもいるので、「Χ ペア決定戦」みたいなミニ大会を開いてペアを決めてもいいかもしれませんね(?)
1次予選・2次予選
通過倍率も高くないので、幅広い層が楽しめる手頃な謎解きになっていたと思います。1次予選という最序盤で負けちゃったら悲しいので、やさしい難易度設定だと思います。
3次予選
3次予選は、20000人以上の2次予選通過者から100組に絞る狭き門となるステージでした。一見するとシンプルで数も少ない典型問題を素早くこなす能力を問うているように見えて、実は「注意力」「疑う力」が要求されていたやつですね。
ちなみに僕は1問目が19:46に事前公開された時点で全てを察して、LINEで送られたあらゆるURLの末尾にaoを付けてみていました。こういうUIの性質を扱った謎解き作りたくなるよね分かる。
その後、5つの小謎自体は1分ほどで解いたので、難なく通過したことになります。
最終予選のペア番号が1番だったのは、ここで1位を取ったかららしいです。えらい!!!
TLの再現。阿鼻叫喚
ところで、その日は自分の周りでは「気付かなかった、やられた」という悔しそうな感想が上の画像の通り数多見られましたが、SNSを巡回していると、ごく一部の人ではありますが、「誤認を誘っていて卑怯」という旨の否定的な感想もありました。
普段謎解きをしていない方と推察されますが、これを見て「なるほど、そういう感想もあるのか」とも思いましたね。
例えるなら、異様に「※ただし、……」という注意書きの多い、スマホのキャリアプランの広告に対する不快感に近いものでしょうか。
そう考えれば、この3次予選で問われていた能力の1つは「メディアリテラシー」とも言えるかもしれませんね。
(尤も、そもそも事前にメタで解いた自分には関係のない話ですが)
最終予選 1st STAGE
まずは 1st STAGE です。このステージは、「3問しか出題されていないので一見すると点数の上限は3ポイントだが、1つの問題から2つずつ答えを導けることに気付き、6ポイントを得る」という構造をとっていました。
また、一度「解答を完全終了する」を宣言するとそれ以降は解答できなくなるものの、ポイントが同じ場合は解答終了時刻が早いペアのほうが順位が高くなるというルールもありました。
つまり、答えの総数がわからないなかで、制限時間中のある時点で解答をロックしなければなりません。このことから、ある種の心理戦・チキンレース的な要素が生じているのもルールの本質の1つですね。常に「本当にこれで良いのか? 他のチームは何を考えてどういう選択をしているんだろうか?」という疑心暗鬼に苛まれることになります。
他のステージにも少し通じることですが、この心理戦・チキンレースを制するには特に、ほかのプレイヤーの実力やプレイスタイルを適切に評価できたほうが間違いなく有利になります。
(例えば他の参加者が「Twitter等でよく名前を見かける人」だったら分かりやすいですよね)
* * *
EM・あせろらペアでは、ルール文を見たときにその不自然さから行間を読んで、このあとに出る問題が多答問題であることは既に推測していました。
また、RIDDLERの多答問題といえば、以下の2つの例のように何十個もの答えを見つけるものもパターンとしてあります。
まあ、
① 答えが数十個ある多答問題をやるには、制限時間5分で3問という尺はあまりにも短すぎるので、1st STAGE 向きではない
② そもそも『多答問題である』と気付く能力を問いたい場合、答えが複数あることが見え透いた多答問題は出さないほうがいい
③ 解答者の自由な発想によっては、出題者の意図の範疇を超えた解答が出うる。しかし、競技性を担保するには正答と誤答の明確な線引きを行う必要があり、その正誤判定の基準の設定が難しい
などの観点から、さすがにこの形式の多答問題は出しにくいだろうと予想しました。とはいえ、色々な可能性を考えておくのは大切なことですけどね。
以上のことから、せいぜい
・1問2〜4答程度のの問題が3個
・2問は1問1答、最後の問題のみ1問3〜4答
のいずれかだろうとはアタリをつけていました。
* * *
さて、そんな予想を立てながら挑んだ我々のペアの結果としては、先述した「答えが6個出たあとの心理戦・チキンレース要素」に苦しみ吟味を重ねながらも、勇気をもって解答終了を宣言し、このステージを4位で突破することができました。125組中50組が突破できるので、割と余裕をもってクリアできたのではないでしょうか。
(3問目のような要素数の多い見た目の謎、頑張ったら4つくらい答えありそうに見えちゃいますよね)
このステージの1位はサークル仲間のみずなし・potterペアでした。確かにこういうの強そう〜〜〜
最終予選 2nd STAGE
いわゆる「インク謎」「謎の制作過程を見て答える謎」などと同じように、明確に「メタ解き」を要求するステージでした。
今回は3問とも「答えに使われる文字の特徴(共通文字、濁音半濁音拗音促音、カタカナの形状、……)から予想する」という構造だったこともあり、予想していたよりもワンパターンな出題でピンポイントな能力を問うていたように感じます。
理由としては「論理パズルじみたものよりも解説が簡潔に済み、テレビ的に分かりやすいから」でしょうか。
さらに言えば、「たぬき謎」のような特定の既存の謎解きに関する知識を要求しなかったのはめちゃくちゃ偉くて正しいと思います。
謎解きクラスタと呼ばれる人々のほうが圧倒的に有利になってしまい不公平ですからね。全国各地の謎解きが好きな人が参加して日本一を決める以上、公平性は担保すべきです。仮にぼくが作ったとしてもそのような文脈依存の内輪ノリは回避するでしょう。
ちなみに、公平性の話題が出たので思い出したのですが、英単語を扱った問題は最終予選までに1度も出ていないという特徴もありますよね。
例えば追加3次予選では「DNA」という略語を答えにするなど、英単語の使用は徹底して回避されています。アルファベットさえ知っていれば、「アンド」という日常で耳にするカタカナ語のスペルが分からなくても、「ディーエヌエー」というカタカナ語のスペルはたぶん分かりますよね。
恐らくこれも老若男女に門戸を広げるためでしょう。個人的には英語の謎解きのほうがよく作るし解くのも得意なので、それはちょっと困るのですが……
また、特筆すべきは、「最終予選のなかで誤答ペナルティが最も緩いステージだった」と言えることです。
1問あたり3回も解答送信できるので、「思いついたらすぐ入力することができ、たとえ1,2問目でポイントが低くても逆転を狙った大勝負を仕掛けやすい」というメリットがあります。問題が出る前からベタ問の答え(STANDARD, ぱんだ, ...)を入力する、なんてこともできちゃいます。
まあ実際のところ、3問目が1番簡単だったとは思うのでそんな逆転はほぼ叶わないんですけどね。
個人的には極限の緊張のなか大胆不敵な作戦は立てたくないので、実力の発揮しやすい誤答ペナルティゆるゆるステージは大好きです。
また、1st STAGE も 2nd STAGE も単なる「1問1ポイント」という形式ではなく、タイムという(全プレイヤーに順位付けが可能な)ソリッドな指標を用いていました。そのため、不慮のトラブルが起きたときの対応などは柔軟に行いやすそうですね。
* * *
このステージは1問目は僕が答えを導き、2問目はあせろらが答えを導き、3問目は2人同時に瞬時に答えを導くという抜群のチームワークが発揮されました。確かこのステージは6位で突破した気がします。50組中25組が突破できるので、割と余裕をもってクリアできたのではないでしょうか。
ちなみに僕は都道府県に登場する文字の性質はめちゃくちゃ暗記しているし都道府県は五十音順にスラスラと暗唱できるのですが、「1文字目と3文字目が同じ都道府県は鳥取しかない」という事実を導くにはそこそこ時間を要しました。
都道府県は暗記しろ!!!
最終予選 Last STAGE
このステージの最適な突破方法は、「『小謎が出るとつい解きたくなる』という欲求を抑え、冷静に文字数を数えることで最初の手がかりの時点で条件に合った数字が2^3=8個しかないと気付く」でした。
後述しますが、僕たちはそんなふうには突破していません。
初めにルールを聞いたとき、「RIDDLER、数字当て好きすぎ〜」「我、『DECODE the CUBE』成功者ぞ?」と思いました。
確かに、シンプルながら「パスワードを当てる暗号解読」さながらでロマンがありますよね。これからもRIDDLERの作る数字当てには成功し続けたいですね。
* * *
さてこのステージ、2ndステージとあまり間をおかず始まったこともあり、正直なところ、あんまりルール把握ができないままスタートしてしまいました。
「チケットの数字が8個あるなら手がかりは8個かな?」「例えばもし3マスしかなければ、文字が開示されなくても3桁の数字が "100(ひゃく)" だと分かるよね〜」とか勘違いしていました。
ルールの肝心な部分は謎の根幹に関わるので、RIDDLER側もそこは敢えて曖昧な表現にしていたのかもしれません。
適切にルール理解ができていれば僕たちも最短経路でチケットを手にすることができていたよな、と少し悔いています。
「小謎を僕が解いて、チケットの数字の特定をあせろらが行う」という分業体制で解きました。ただし、僕は第2問のどんぶりのイラストがパッと見では何か分かりませんでした。奥に見えているの蓋だったのか〜 (なので第2問だけあせろらに解いてもらいました。それ以外の3問は文字通り秒殺しました)
さて、4問目を解き終わったあと、これ以上問題が出なくなってしまいました。どうしたものかと思っていると、あせろらが何かに気付いたようです。
「EMさんチケットのURL開いてください!」
「532です!」(その声を聞いて僕が532を入力するが、ちょうどその瞬間他チームに532が獲られる)
「……っ! 535! 535!」
構造に気づいたあせろらが僕に的確に数字入力の指示を出し、ギリギリ7位で突破できたときの興奮は最高でした。他のペアに話を聞く限り、4問全部解くパワープレイをして突破したのはかなりレアケースのようです。
おわりに
最終予選、通ってよかった〜〜〜 Lastギリギリだった〜
ただ、見方を変えて振り返ってみれば、
3次予選 1位
最終予選1st 4位
最終予選2nd 6位
最終予選Last 7位
というLast以外は危なげのない安定した成績で決勝への切符を手にしているとも言えます。これはあくまで特に意味のない恣意的な指標ですが、「以上4つの予選順位のアベレージ」で言えば僕たちが最強なのではないでしょうか。
全体的に、競技内容の事前予想が的中しているところでは特に成績が良くなっている傾向がありますね。
* * *
それにしても、最終予選の難易度設定は「TVの前の視聴者にも分かりやすい」「8組を決めるのに相応しい」という2点を同時に実現していて最高でしたね。とにかく苦心されたのだと思います。また、僕は純粋競技の方が好きですが、一般に
・競技性に全振りしてしまうとエンタメ性を生み出しにくい
・完全に競技として内容を詰めすぎると「思わぬドラマ」が生まれる余地をも奪ってしまう
などの側面もあります。
となれば、俄然そこにRIDDLERがどう立ち向かったのか、決勝の問題も見逃せませんね!
ちなみに本放送後には決勝の分析(という名の感想記事)も書くかもしれませんし、書かないかもしれません。
* * *
再三になりますが、個人的には、この番組は近年の地上波の謎解き番組で1番アツいです。
出場ペア全員が「「ガチ」」で戦っています。
この大会を多くの人に見てもらおうといつもに増して RIDDLERがバイラル施策に力を入れているのも納得できます。
どのように編集され、どのような反響があるのかはまだ分かりませんが、今大会が伝説に残り、来年再来年も大会が開催されることを願っています。
番組を観ながら、決勝中に僕が何を考えていたのかも当ててみてください。
ということで、今夜は皆で番組を楽しもうね!
TBS/MBS系列で 3/27(日) 21:00〜 放送です!!
ぜってぇ観てくれよな!!!
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