民法の基礎 民法とはどんな法律か②
前回は、どのタイミングで契約が成立するかという点について検討してもらうところで終了していたと思います。
では、改めて見てみると・・・
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
このように、自分のものになるためには、お金を払う必要もありませんし、ペンを受け取る必要もありません。
ゲンくんから100円でペンを売るよと言われて、ユイさんが100円でペンを買うよといえば(その逆もしかり)、すなわち意思が合致すれば契約は成立し、ユイさんは、そのペンは自分のものであると主張することができるようになります。これは、マンションであってもダイヤの指輪であっても同じです。1億円で売るといわれ、1億円で買うという合意が成立すれば所有権は移転すると考えられます。
このような大きい話になると違和感を感じるかもしれません。
売買のような規定は、任意規定といわれており、例えば代金を支払った後に所有権が移転するというような合意をすれば、その合意内容に従うことになります。高価な買い物の場合、代金を受け取れないリスクに備え、移転時期をずらす合意がされることはままあります。
なお、民法533条(契約の総則にあるので、売買にも適用があります)に同時履行の抗弁権という規定があるので、何も合意をしていなくても、A君がお金を払うまで、こっちだってものは渡さないよということ自体はできます。
同時履行の抗弁権については重要なので追って説明をします。
以上、売買契約が諾成契約であるということはよく理解できたと思います。
ただ、すべての契約が意思が合致すれば成立するというものでもありません。例えば消費貸借契約は要物契約であると言われています。
こちらも第3編債権第2章契約に置かれている規定です。目次と条文を確認しましょう。
(消費貸借)
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
こちらも、AくんがBさんに1万円を貸すという事例で、同じように当てはめてみます。
消費貸借は、Bさんが、1万円札と同じ種類、品質及び数量をもって返還することを約してAくんから1万円札を受け取ることによって、消費貸借の効力を生ずる。
このように、消費貸借契約では、Aくんは貸すことを約束しなくても物を交付すれば、1万円を返せということができます。
例えば、二人が100万円の借金をするという話をしていても、Aくんが1万円しか交付しなければ、Aくんは1万円についてのみ返せということができません。なお、民法587条の2は、書面でする消費貸借は諾成契約であるという規定を置いています。なぜ、諾成契約であるといえるかは、条文を確認してみてください。
かなり噛み砕いて、契約の(というよりは条文の読み方の)基本的な部分を説明させていただきました。このnoteの趣旨がどんな人でもわかるように説明するというものなのでかなり回りくどくなっているかもしれませんが、基本的な部分だからこそ大事にしてほしい思います。
民法は、いかに取引を安全かつ円滑に回していくかという法律になっているのだと考えられます。そのため、取引行為である契約をまずはじめに取り上げました。このような取引行為の対象となる物権(または債権)、また取引行為の主体(人)についても民法は種々の定めを置き、円滑に経済を回していくことを意図しています。
このような民法の大まかな構造を把握しておくと、細かい論点の理解も深めることができるようになります。
民法の基礎といいつつ、条文の読み方の説明に終始してしまいましたが、少しでも理解の役に立つことを願っています。
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