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【英語教育】英語を学ぶその先

心を育てる英語教育って、なんだろう?

 「目標」と「目的」の違いって、なんですか?と問われたら、どう答えますか?目標の先に目的があるのか、それとも目的の先に目標があるのか、どちらでしょう?

 「この夏の『旅の目的』は?」と問われたら、例えば「楽しむこと」「現実から離れてリフレッシュすること」などと答えると思います。そのためにどうするのかというと、「北海道に行って」「美味しい海鮮を食べて」「涼しい夏を過ごして」「温泉にも入っちゃう」などが出てきますよね。これらが旅の目標になります。つまり、目標の先に目的があるという構図です。旅の目的が「北海道へ行くこと」だったら、飛行機で降りたった瞬間に達成なので、とんぼ返りしてもOKということになってしまいます。

「なんで英語をするの?」ということで、これは学習指導要領に書かれています。

【中学校編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 p.10

 「なぜ外国語を指導するのですか?」と聞いた時に「コミュニケーション力の育成」と答えられる先生が最近はとても多くて、びっくりします。日本の学校は教科書をこなせば学習指導要領を達成できるようにできているので、あんまりまじまじと指導要領を読まなくても授業ができてしまうんですよね。でも、指導要領云々じゃなくて、外国語の魅力ってこういうところに感じられているのかなって思います。
 でも、これって「外国語科の目標」なわけです。目的って、各先生の思いや信念になります。これは、Teacher beliefs / Teachers' beliefsとかって言われます。

そんなBeliefsを考える上で、この「だから英語は教育なんだ(研究社)2002(全222ページ)」はとても参考になります。魅力が多すぎて伝えられないのですが、私がマーカーでハイライトした部分をいくつかご紹介します。

(p.3-7)

  • 英語を学ぶことは、もう一つのドアを開けること

  • 苦難の曲にあって、意味ある言葉は人を支え、立て直す力を持つ。

  • 「自己実現欲求」。平たく言えば誰か理想の人物を見て、「自分もああいう人間になりたい」と欲する欲求である。

  • 生徒の自己実現・自己高揚欲求をちゃんと満たしてくれる英語教育が、豊かな英語教育なのである。

(p.31-40)

  • 目の見えない人が足の悪い人を背負うとき、二人は一緒に前進する。

  • 生徒にしてもらいたいという理想や願いがあれば、誰もしていなくても「さすがだね。〜している人がいるよ」とつぶやけばいい。具体的な名前を出さずに「こんなことをやっているペアと、一方でこんなことをやっているペアがあるよ。どっちがいいんだろう?」と、いい例とよくない例を上げて、自分たちで判断させる。

  • 自分の意見をしっかりと持たせた上で話し合いの時間を与える。そうしないと自己責任は生まれない。友達との関わりの中から、互いの良さに気づけるようにすることも忘れてはならない。

  • 教師の力でなんとかしようと力まず、まず生徒を肯定的に理解し、肯定的に関わりたい。

  • 自分を大切にし、人と関わり、互いに認め合い、心を解放させること。

  • 「個性」も「主体性」も育てるもの。「個性」は独りで育つものではなく、集団の中でこそ磨かれるものではないかと思う。集団の中でDiversity(違い)が大切にされることで、自己確立から共生へとつながる。その中で自分に自信が生まれる。それが個性の芽生えではないか。

  • 生徒は自分が発表する時や自分に任された時は、必要感を感じて行動が主体的になる。

  • 教師はファシリテーター(進行役や司会者)であればいい。

  • 教師は「一人ひとりを間違わせない」ことから「集団の中で間違いを楽しむ」ことへと発想を転換すべきだろう。

20年以上も前に、こんな英語教育を実践されていたのかと思うと、頭が下がります。近年では「ヒューマニスティックな英語教育」という言葉もあります。私もこれから、もっともっと心を育てる英語授業を考えていきたいですね。