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【イベント報告】 第11回 日本語教師ゆるゆるパドック

先日、「第11回 日本語教師ゆるゆるパドック」で「voiceにほんごプロジェクト」についてお話させていただきました。今回は、そのイベントでお話したことを振り返ってみたいと思います。

当日の様子は、主催者のチェーンナーさんが、noteにまとめてくださっていますので、こちらをご覧ください。

当日の前半は、私から、以下の内容でお話ししました。

1. 「VOICEにほんごプロジェクト」の概要
2. 「VOICEにほんごプロジェクト」の意義
3.  SNS活用事例
4.  授業をプロジェクト化するときのポイント
5.  授業への活用アイデア

後半は、かすや先生が、実際にnoteを使った実践例をお話ししてくださいました。かすや先生の実践については、👇でも紹介しています。

今回の記事では、私がお話しした前半部分をまとめてみたいと思います。

「VOICEにほんごプロジェクト」の概要

このプロジェクトは、昨年2020年5月に始めたもので、このプロジェクトの目的

日本で暮らす外国人のリアルな声を、当事者自ら日本語で発信する

としました。

当時、新型コロナウイルスが広がり始めた段階で、日本で暮らす多くの外国人にも影響が出ることが予想されました。しかし、報道される内容は、十分とは言えず、また、偏ったものも多く、普段私たち日本語教師が接している外国人とは異なる印象も受けました。そこで、もっと多様な声を届けることが必要ではないかと感じたのがきっかけです。プロジェクトの概要は、下記でも説明しています。

この発信を始めたのは、新型コロナウイルスによる初めての緊急事態宣言が終了したタイミングで、影響はしばらく続くだろうと予想されました。そこで、オンラインでもプロジェクト型の授業ができないだろうか、今こそ、新しい形の授業に挑戦すべきではないかと思いました。しかし、このプロジェクトの意義は理解してもらえたものの、思うように賛同者が集まらず、授業に取り入れる、記事を投稿するというところまで、たどり着くことができませんでした。

今回、チェーンナーさんの見事なマッチングにより、「ゆるゆるパドック」に取り上げていただきました。これほどまで、関心を持つ方が集まっていただけたことに、感動しました。「ゆるゆるパドック」では、初めてこのプロジェクトについて聞く方もいることを想定し、noteの「VOICEにほんご」のページを見せながら、どのようなことを行っているのかについて説明しました。

note記事用_ゆるパド.005

上記のように、投稿いただいた記事を、テーマごとのマガジンに収録していくという形を考えています。が、この辺は、参加希望者の意向を組みながら、今後、柔軟に対応していきたいと思っています。

(参加者の募集方法など、まだまだ検討しなければならないと思っています。ご意見、お待ちしています)

「VOICEにほんごプロジェクト」の意義

このプロジェクトを立ち上げてから、1年以上が経ちました。その間、私自身、いろんなことを経験し、考えた結果、このプロジェクトの意義をもう一度捉え直しています。日本語教師がこのプロジェクトに関わる意義という視点で簡単にまとめてみました。

ゆるパド_改訂版.008

このプロジェクトへ学習者が参加するためには、日本語教師のサポートが欠かせません。やはり、学習者だけでnoteのアカウントを取得し、記事を書き、発信するというのは非常にハードルが高いと思っています。

日本語教師というと、留学や技能実習などの国が定めた制度の中に組み込まれてしまい、自由度の少ない職業のように感じています。まず、国が求める「外国人」は、「留学生」「技能実習生」「特定技能」のように、在留資格によって規定されてしまいます。そして、その在留資格を取得、または維持するために、教育内容も規定されてしまいがちです。日本語教師が「やりたい」と思うことがあっても、なかなかできないという背景には、このような制度上の問題があるようにも感じています。

しかし、私は、教育の中身を変えることによって、この点を変えることができるのではないかと思っています。

まず、学習者の将来の可能性を広げる存在として日本語教師があるべきだと思っています。その「可能性を広げる」手段として、noteのようなSNSの活用が考えられます。ICTツールが自由に使いこなせるかどうかで、これからの世界では、可能性が大きく異なります。

そして、学習者の持つ、様々な多様な視点が教室内だけでなく、もっと社会全体で共有されたら、これは、社会そのものを変えていく力になっていくのではないかと思います。今後、何が起こるかわからない世界では、多様な視点があったほうが、ブレイクスルーは起きやすくなると思うからです。

このように考えると、日本語教師という仕事は、もっと社会にとって有意義な仕事になっていくと思うのです。なんだかワクワクする仕事です。

SNS活用事例

SNS活用事例として「山の日本語学校」の事例を紹介しました。(詳細なアカウントは割愛させていただきます)

「山の日本語学校」では、ITエンジニアのための情報共有サイト(Qiita)を使って、ITエンジニアである学生自身が、プロジェクトで取り組んだことや自由に開発した内容などを発信していました。ITエンジニアには、このような自分の得た情報や技術を惜しみなくシェアし合うという文化があります。実際に、学生自身が開発したコードや調べたことなどを日本語で発信することにより、日本人エンジニアから、多くの「いいね」をもらった学生もいました。これは、学生にとって、学びの大きなモチベーションになります。

これから、日本のIT企業で働きたいと考えていた学生にとって、ITエンジニアのコミュニティとつながり、評価を得るということは非常に大きな意味があります。また、アウトプットするということは、自分の持っている情報を、第三者が理解できるように整理し直す必要もあります。当然、情報の正確さにも留意する必要があるため、いい加減なことは書けません。また、このサイトのアカウントは履歴書等に記載し、就職活動にも活用していました。この活動を通し、学習者自身がSNSで発信することの意義を、私は強く実感しています。

SNSを使って外部に発信する意義を簡単にまとめると、以下のようになります。

- 自分が必要とするコミュニティと繋がることができる
- アウトプットを意識することにより、情報の質が上がる
- 記事が蓄積されることによって、自身のポートフォリオとして使用できる

ただし、これらの意義があると分かっていても、アウトプットというのは、非常に骨の折れる大変な作業です。授業の枠組みの中に取り入れ、教師がサポートをしなければ、習慣化することはなかなか難しいです。「山の日本語学校」の学生も、残念ながら、卒業後も発信を続けている人は少なく、個人で書き続けるには、相当のモチベーションがないと続きません。これは、私自身、noteを書いていて思うことです。

だからこそ、日本語学校の授業という枠組みに取り入れることに大きな意義があると思っています。

授業をプロジェクト化するときのポイント

「山の日本語学校物語」では、PBL(Project-based learning)を取り入れ、学校運営全体をプロジェクト化してコースデザインをしました。

このような大掛かりなプロジェクト型学習というのは、なかなかできるものではありません。しかし、個々の授業やクラス、特定の学期に限定して、授業をプロジェクト化することは可能だと思っています。「できない」とあきらめてしまうのではなく、スモールスタートでできることから始めてみるのがいいのではないかと思っています。そのために、noteを活用することができると思っています。

以下の図では、「授業をプロジェクト化するときのポイント」を説明しています。

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重要なのは、テーマとゴールを明確に設定することではないかと思っています。その時に気をつけたいのが以下です。

- テーマ:学習者が自分ごと化しやすいもの
- ゴール:学習者が明確にイメージしやすいもの

テーマは、学習者目線で考えると、いろいろなものが思い浮かびます。自分の好きなもの/ことや、毎日の食事、生活、アルバイトなど、いろいろ考えられます。テーマを学習者自身が考えるのもいいと思います。

そして、ゴールとは、「何か作品を創る」という方向で考えるとイメージしやすいと思います。エッセイでも、動画でも、音楽でもいいと思うのですが、最終的に、どんなものを作るのかが明確になると取り組みやすくなります。

その点、noteには、様々な形態の投稿が無限に検索できます。いろんな作品に触れてみて、「これだったら私にもできるかも」「これ、私もやってみたい」と思うものが見つかれば、プロジェクトは動き始めます。教師は、ゴールに向かって伴走していけばいいのです。

そのときの注意点として、以下の3つを上げました。

- 話し合いを行う際、日本語に限定しない
- いろいろなICTツールを試す
- よい作品を作るためにはどうすればいいか一緒に考える

日本語のクラスでは、教室内の使用言語を日本語に限定するということをやりがちですが、何か新しいものを創るとき、使用する言語を限定してしまうと、発想も貧困になります。そこで、アイデアについて考えるときは、言語を取っ払ったほうがいいと思っています。言語だけでなく、イラストや図でも、写真でも、動画でも、使えるものはなんでも使ってアイデアを出し合うのがいいと思います。

プロジェクトが白熱してくると、学習者たちは、時間外もプロジェクトについて話し合うようになります。学習者同士の時間外の話し合いでは、どうせ日本語は使用しません。その代わり、話し合った内容を報告する時には日本語で、などと、使用する場面を指定すればいいと思います。また、noteにまとめるときには、当然日本語になりますから、いずれ、日本語で説明することが必要になります。

作品を作るとき、ICTツールを使い倒すというのもポイントです。学習者の将来を考えると、ICTツールを使いこなせたほうが、学習者の生活の質は上がりますし、可能性も広がります。授業で使用を限定することに意味はありません。使い方を教師が全部把握している必要もありません。必要であれば、学習者に教えてもらえばいいと思います。

教師ができることと言ったら、よい作品を創るためには、どうすればいいか一緒に考えることくらいです。学習者は、私たちが思っている以上にクリエイティブです。

これまで、「VOICEにほんごプロジェクト」では、投稿記事を「作品」という言葉を使って説明してきました。この言葉が、投稿のハードルを上げているのではないかという指摘もあったのですが、やはり私は、学習者が創り出したものに対してリスペクトしかないので、「作品」という言葉を使いたいと思います。

最後に

「ゆるゆるパドック」では、最後に授業への活用アイデアを紹介しましたが、上記のテーマやゴールなどを念頭にいろいろ考えると、いろんなアイデアが出てくるのではないかと思います。

具体的な例については、今回、一緒にお話しした「かすや先生」の実践例が非常に参考になると思います。やはり、具体的な実践例があると、とてもわかりやすいです。今回、かすや先生とご一緒できたのは、私にとっても大きな刺激となりました。学生さんたちの文章を読んでいるとワクワクします。

かすや先生の最新「おしゃぺり倶楽部」のマガジンはコチラ👇

現在私が持っている技能実習生のクラスでも、この「おしゃべり倶楽部」を紹介したところ、みな、興味津々で、本当に楽しそうに読んでいました。普段はつながることのない学習者同士がつながることも、SNSを利用する大きな利点だと思いました。

そのためには、個々の教師や学校が個別に発信するだけではなく、投稿が1箇所に集まるプラットフォームが必要だと思っています。「VOICEにほんごプロジェクト」が、そのプラットフォームとして、機能したらいいなと、機能させたいと改めて思いました。

「ゆるゆるパドック」では、よく考えたら、投稿の方法を説明していませんでした(肝心な点なのに😅)。そこで、授業で活用してみたい、投稿してみたいという方は、以下の記事を参考に、気軽にご連絡ください。

日本語学習者だけでなく、日本語教師自身もワクワクするような授業ができたら、日本語教師という仕事がもっと意義のあるものに変わっていくと信じています。

ぜひ、いっしょに盛り上げてください! 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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ヒラサワエイコ
共感していただけてうれしいです。未来の言語教育のために、何ができるかを考え、行動していきたいと思います。ありがとうございます!