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Photo by
mokanorakugaki
恋人
鏡の前の私を中野くんが後ろから抱きしめてくれた時、鏡の中の私たちはやっぱり“お母さんと息子”にしか見えなくて、私の気分は落ち込んでしまった。
同時に、やっぱりこんな若い男の子が本気で既婚で年上の私を好きになったりするわけがないといじけた気持ちになり咄嗟に変なことを聞いてしまった。
「私は中野くんにとってなに?セフレ?」
言った瞬間自分でも“めんどくさいこと言ってる!”という自覚があった。だけど、中野くんはいつもの落ち着いた口調で「恋人だよ」と言ってくれた。
騙されている私は都合よく会えて心の通い合ったセフレにすぎないのかもしれない。咄嗟に出る言葉は本音や深層心理なんだと思う。メールでも毎回会った時も「愛してるよ」って言ってもらっているけれど心のどこかで「愛してる」が信じられなくてこんな事を言ってしまうんだろうなぁ。
「こんなに好きなのにまだわかってくれないの?」
中野くんにそう言われて何も言えなくなる。目を合わせられなくなって抱きついてごまかす。
中野くんの本当の恋人になりたい。