「なんで分かんないんだよ」
中野くんが言った言葉。もしかしたらもう少し怒り気味の「なんで分かんねぇんだよ」だったかもしれない。驚いていて記憶が曖昧。
中野くんとの長い付き合いで怒った口調を聞いたのは初めてで、驚いた。
「好きだよ」と言われた後に「私のこと本気で好きになんかなるわけないじゃん」そう言った時、中野くんの顔つきが一瞬で変わってこう言ったのだ。セックスが終わり横になって向き合って話している時だったけど、目は私を見ていなかったので怒られたという感じではなかった。だけど、いつも穏やかでゆっくり優しい口調の中野くんの初めて見る一面だった。
中野くんが「好きだ」と言ってくれる時、「私とのセックスが好きなだけだよ」などとやんわり否定する事が多い。その度に「ちがう」「わかってよ」と言われてはいるけど、そんなやりとりの繰り返しだった。そしてその日は少し怒り気味で言い返された。
私が何も言えずにいると、中野くんは「しょうがないじゃん、惚れちゃったんだから」と言っていた。
あの悔しそうな表情と聞いたことのなかった言い方を心で受け止めて、私は中野くんの瞳を見ていたし、中野くんの目も私の瞳を見ていた。
私たちは普段デートが終わった後にメールをする事はほぼ無い。だけど今日はちゃんと伝えようと思い「今日も中野くんの愛がたくさん伝わってきて、今もまだすごく幸せな気持ちです」とメールをした。
愛してるよe
というメールが返ってきた。