プライム型のシステムエンジニアは楽?下請けエンジニアと何が違うのか解説します
システムエンジニアには「プライム型」と「下請け型」とあるけど、どう違うのか
それぞれのエンジニアについて具体的な仕事内容が知りたい
自分が今担当しているエンジニアは何に分類されるんだろう?
よく「下請けのシステムエンジニアはつらい」という話を聞きます。 ITゼネコンとも言われるように、日本のIT企業には多重下請け構造が存在しています。
この記事では「上流工程」から「下流工程」さらにはシステム導入後の保守まで担当させられている「フルスタックエンジニア」の私が、プライム型と下請け型両方の視点からそれぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
★この記事でわかること
プライム型は要件定義や設計などの「上流工程」を担当する
下請け型は開発、テストや導入などの「下流工程」を担当する
上流から下流までトータルで担当する「フルスタック型」も存在する
どっちが楽かというのはなく「どっちもつらい」
プライム型システムエンジニアとは
システムエンジニア(以下、SEと称します)には大きく分けて「プライム型」と「下請け型」とがあります」。
まずはプライムSEの簡単な業務内容について解説していきます。
プライムSEは「システム化企画、要件定義、設計、見積作成」といったSEの上流工程を担当します。 ある企業からの「業務効率化のためにシステムを導入したい!」というニーズに対して、以下の作業を行います。
システムを使って何を実現したいのかを打ち合わせる(システム化企画)
そのためにシステムにどんな機能が必要なのかを決定する(要件定義)
既存システムにカスタマイズをする場合は追加機能の設計を行う(設計)
システム本体の値段と、あればカスタマイズ費用の見積作成を行う(見積作成)
プライムSEのメリット
①プログラミングスキルは強く求められない
文系の方はプログラミングの経験が少ない、あるいはまったくないという場合がほとんどだと思います。 にもかかわらず、縁があってIT会社に入った場合は上流工程を任されることが多いです。
何故なら、プログラミングスキルを強く求められないからです。 とはいえ、カスタマイズ機能の設計を行う場合は少なからずプログラミングスキルがないと顧客のニーズに応えられる設計を行うことができません。
ですが、その場合は顧客から「どんなシステムが欲しいのか」をヒアリングする「システム企画」や「要件定義」のポジションで活躍することができます。
②業務改善を実現させられるというやりがいがある
顧客から「業務のこういうところで困っている」ということを直接聞きだすことができ、それに対する改善提案を実施します。
つまり、顧客と直接やり取りをして業務改善に導いていくという大きなやりがいを感じることができます。
特に、無事システムが稼働して業務が回り始めた時の達成感は上流工程でないと味わうことができません。 この「達成感」こそプライムSEの最大のメリットといえるでしょう。
③単価が高いので給料が高くなりやすい
プライムSEは単価が高いので、下請けSEと比べて給料が高いのが特徴です。 何故なら、上流工程の作業は下流工程の作業と比べて時間当たりの成果が見えづらいので、厚めに見積もることが多いからです。
システム導入に必要な仕入、製造間接費はある程度決まっていますが、その内訳に関しては案件ごとの調整が必要になってきます。 したがって、時間当たりの成果が正確にわかる下流工程から見積もって、案件全体の費用の調整分を上流工程に含めてしまえ・・というのが現実的な配分になるんですね。
元々下請けSEだった方が年齢を重ねていくにつれてプライムSEに転向するケースが多いのはそのほうが儲かるからです。
プライムSEのデメリット
①コミュニケーション能力が必要
とにかく顧客と話すことになりますので、必然的にコミュニケーション能力が求められます。 また、顧客だけでなく下請けSEとも繰り返しの打ち合わせが必要になりますので、 「一日中喋りっぱなし・メール打ちっぱなし」となることも珍しくありません。
話すことと聞くことが好きで、コミュニケーション能力が強くないと早々につらくなります。
②顧客と下請けSEとの板挟みにあう
顧客が求めている仕様と、技術的に実現が可能なシステム機能が食い違う場合があります。 システムの根幹にかかわる部分の改修が必要になるような開発作業はSEが最も嫌がる作業になります。
ところが、顧客はそんなことを知る由もないですので、平気で「無茶」を言ってきます。
この機能がないと困る VS そんなことはできない
このやり取りは顧客と下請けSEが直接やるのではなく、間に挟まれたプライムSEが実施するのです。
この板挟みになったときのストレスは半端ないです。 すぐにでも逃げ出したくなるほどの大事に発展することも珍しくありません。
そして、この状況になったときは大抵誰も助けてくれません・・・
③外出が多く、在宅ワークがしづらい
顧客とのやり取りは電話やメール、WEB会議で済むこともありますが、どうしても直接面と向かってやり取りしないと決まらないパターンもあります。
例えば、システムから出力される『請求書』や『仕切書』といった帳票類の表示項目やレイアウトなんかがそれにあたります。 また、システムの操作方法についても遠隔での説明では限界があったりしますので、必然的に客先へ足を運ぶことが多くなります。
したがって、プライムSE在宅ワークがしづらくなります。
もちろん、顧客のITリテラシーが高いなど在宅でも対応しきれるパターンもあります。 しかし、業務効率化のためにシステムを導入したい企業の大半は「今までエクセルや紙の資料で業務をしてきた」企業です。
そのような企業はWEB会議での打ち合わせなどしようもありませんので、やはり「訪問」が基本となってくるのです。
下請け型システムエンジニアとは
次に、下請けSEの業務内容について解説していきます。 下請けSEはプライムSEから送付された『要件定義書』や『設計書』を基に「開発」「機能テスト」「システム導入」といったSEの下流工程を担当します。
開発環境で設計書を基にプログラム開発を行う(開発)
開発が完了したプログラムについて機能テストを行う(機能テスト)
プログラムをコンパイルして顧客に納品する(システム導入)
下請けSEのメリット
①プログラミングスキルを発揮できる
当然ですが、コーディングやデータベース操作、コンパイルなどのプログラミングスキルを遺憾なく発揮できます。
まず、新規開発のプログラムであれば「今回はこの新しい書き方を試してみようか」といった風に新しい技術を盛り込んでいくことが可能です。
次に、既存のプログラムを改修する場合は「この書き方は不具合を起こす可能性があるから、ついでに直しておくか」といったように会社の資産をよりよくしていくこともやりがいの一つです。
上記のように会社の資産(プログラム)の付加価値を高めていくことで会社から評価される場合もありますので、そういった点ではやりがいのある仕事といえます。
②コミュニケーション能力はそれほど求められない
顧客との直接的なやり取りはプライムSEに任せることができますので、基本的には設計書通りに開発を進めていくことになります。
もちろん、一緒に仕事をする開発メンバーとは作業を分担しつつも互いにコミュニケーションを取りながら作業を進めていく必要はあります。
ですが、あくまでも「知り合い同士のコミュニケーション」となりますので、顧客対応ほどのコミュニケーションストレスはありません。
会話が苦手ならメールやチャットツールでやり取りすればいいですので、一言も発することなく作業をしていくことも可能です。
③開発中心なので在宅ワークがしやすい
自宅から会社内にVPNで接続して開発が可能な環境であれば、在宅で働くことも可能です。
これこそIT会社員の真骨頂といえるのではないでしょうか。
設計書通りの仕様でプログラムの開発を進めていくだけであれば、場所や時間を問わず働くこともできます。
当然、その分成果を上げることと進捗状況をまめに報告する必要はありますが、それさえしっかりしておけば比較的融通の利いた仕事ができるはずです。
下請けSEのデメリット
①急な仕様変更によるストレスを感じる
基本的には設計書通りに開発を進めていけばいいのですが、顧客に開発したプログラムを見せた結果として「仕様変更」が起こる可能性があります。
下請けSEは、常に仕様変更との戦いです。 顧客は完成に近づいたプログラムに対して修正や機能追加をさも当然のように求めてきます。
「せっかく完成だと思ったのに!」と憤りを覚えます。 しかも、仕様変更を投げてくるのは顧客ではなくプライムSEなので、場合によっては上流SEとの衝突が起こりえます。
そして、プライムSEが顧客と下請けSEとの板挟みに遭う、と・・・
②顧客との距離が遠く、ニーズが把握しづらい
①でもちらっと出てきましたが、下請けSEに指示を出すのはプライムSEです。
そのため、「本当に顧客からのニーズなのか、それともプライムSEが誤った理解をして仕様を捻じ曲げているのではないだろうか?」と、疑心暗鬼になりながら開発作業をしなければならないという状況も考えられます。
「顧客と直接やり取りができれば、もっといいプログラムが作れるのに!」とやきもきさせられるのが下請けSEの最大のデメリットといえます。
特に、多重下請け構造の下層であればあるほど顧客のニーズが見えなくなりますので、いったい誰のために開発をしているのかがわからなくなってきます。 そうなってしまってはやる気が削がれてしまいます。
③上流工程に左右される・給料が低めになる
上流工程の作業に難航すると、いつまで経っても設計書が降りてきませんので開発ができません。
また、プログラムの仕様について確認したくても担当のプライムSEが別案件に捕まっていたりして連絡が取れないと、開発を進めたくても進められない状況に陥ります。
にもかかわらず、他のプライムSEから「まだか、まだか」と催促されるのです。
さらに、下流工程は作業ボリュームがある程度決まっていることが大半で、単価が低く設定されがちです。
そのため、プライムSEに対して給料が低い場合が多く、これも不満を抱きやすいデメリットになります。
【おまけ】フルスタックエンジニアとは
これまで、「プライムSE」と「下請けSE」について説明してきました。
加えて、このどちらの工程も担当する「フルスタックエンジニア」というものも存在します。
こちらは顧客と直接やり取りしつつ、プログラム開発もできますので仕様の齟齬が起こりにくく、どちらの工程にも関われますのでオールラウンドに活躍ができ、会社から評価されやすいです。
ただし、その分ストレスは半端ないです。
顧客とのやり取りはもちろん、開発メンバーへの指示出し(※)、機能テストやシステム導入、挙句の果てには導入後の保守サポートまで手掛けなければいけませんので、案件の大きさによっては自身のライフスタイルを破壊されかねないほどに忙しくなります。
※当然、一人だけでは開発しきれないのでプロジェクトメンバーに指示出しを行って開発をやっていただくことがほとんどです。
特に保守サポートについては顧客の業務スタイルにもよりますが土日祝日、早朝深夜関わらず直電がかかってくる可能性があります。
システムや同時に納品したハードウェア類は何故か上述した時間に不具合が発生することが多いのです。
「自社開発のソフトウェア」という文言のある会社は上流工程から下流工程、保守サポートまでを一気通貫して担当している可能性がありますので、募集要項は注意深く読むようにしましょう。
その会社で下手にオールラウンダーぶりを見せてしまうと、年間休日数なんて飾りだったと思わされるほど働かなければならなくなるかもしれませんよ・・・。
まとめ
当記事をまとめます。
プライムSEは文系出身に向いた、顧客とのやり取りが中心のSEですので、コミュニケーション能力が特に重視されます
下請けSEはオフィスワークが中心の「THE・エンジニア」です プログラミング技術が重視され、在宅ワークしやすいです
両方を兼ねたフルスタックエンジニアもありますがおすすめしません
どちらもメリット、デメリットがありますので自分に合ったほうを選択しましょう
下請けSEのブラックさが世には目立っていますが、プライムSEにも当然苦労はあります。
このご時世でIT業界が注目されてこそいますが、選択を誤ると心身ともに破壊されかねないですので、募集要項や社風、業務内容についてはしっかり確認することをおすすめします。
IT業界は入れ替わりの激しい業界ですし、起業しやすい業界で会社の母数が多いですので「やばい!」と思ったら早めに転職を考えておいたほうがいいかもしれません。
以上です。