第211回国会 内閣提出法案51号 著作権法の一部を改正する法律案をmgmgしてみる

(衆参共に委員会付託法案、衆議院は約6時間、参議院は約3時間30分程度の審議日程、附帯あり 衆参共に本会議全会一致で可決。)

ざっくり雑感
著作権法改正案と呼ばれているみたい。

ど素人がこの法案を雑にまとめるなら「著作物を使いたいのに、その許可を誰に取るかが不明だ。扱うルールを決めたい」「昔のテレビドラマや映画を放送したいけど、著作権があって放送できないよー!困った!」「違法書籍サイトなどをもっと厳しく取り締まりたいよ!」が主な目的かな?と考えながら法案について掘り下げていくよ!

下記にも引用しているけど、報道記事を丸っとコピペするよ!

著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等、立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置、海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し、の3点が改正点みたい。

音楽や映像などの著作物を二次利用する際は、著作権を管理する団体や個人の許諾が必要ですが、過去の放送番組や個人がウェブ上で公開した作品などを利用しようとしても権利者や連絡先がわからず、活用できないケースが指摘されています。
改正著作権法は、権利者の意向がわからない著作物を円滑に二次利用できる制度の創設を柱とするもので、文化庁長官から指定を受けた民間機関に補償金を納めることで、許諾がなくても一時的な利用が認められます。
権利者が利用に気付いた場合は、補償金を受け取ったうえで、改めて利用について交渉することができます。このほか、改正著作権法では、漫画などの海賊版被害の救済策として、損害賠償の請求額を増額できることなども盛り込まれています。
という事みたい。

質疑の中で『利用の推進が前面に出すぎていて、コンテンツやそれを支えるクリエイターを生み出すために、権利者をきちんと保護しようという側面が見えにくい』と指摘。
また権利者の補償金には時効があるみたい。この辺り関係者はしっかりとはチェックしたほうがいいみたい。
あとクールジャパン構想が巨額の赤字を抱えている中で、文化やコンテンツ産業の振興に投資する形になっていないよね、という指摘もあったよ。
AIが作成した絵や文章は現行の著作権には該当しないけど、それの制作過程には著作権は該当するみたい。

ネット上の漫画や本を自分が利用するために、AIに指示をした場合はどう考えるのか?といった質問には『著作物とは、思想又は感情を創造的に表現したものでありまして、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものでございます。いわゆるAI生成物のうち、AIによって自律的に生成されるAI生成物につきましては、現行の著作権法上は著作物と認められないと考えられます。一方、AI生成物を生み出す過程において、AI利用者に創作意図があり、かつAI生成物を得るための創作的寄与があれば、利用者がその思想、感情を創作的に表現するための道具としてAIを使用して当該AI生成物を生み出したものといたしまして著作物と認められることは、可能性はあると考えられます。この場合、著作者となる当該利用者がAI生成物の著作権者となります。』と答弁があったよ。

声優さんの場合は、『声優が脚本等の著作物に従って演技する場合は、著作権法上、実演に当たりまして、実演家である声優の権利が保護されます。
他方、実演に該当しない、単なる声につきましては、著作権法による保護の対象とはならないと考えています。
しかしながら、この場合におきましても、声を利用する行為は著作権法上の問題にはならないとはいえ、その態様によりましては、声優がお持ちする人格権やいわゆるパブリシティー権などの侵害となることもあり得ることから、留意が必要かな、このように考えております。』と答弁があったよ。
また、AIがネット上の作品を操作してまとめた作品の場合は『AIがネット上の作品を操作してまとめたという場合の著作権ということかと思いますけれども、最終的にはこれは司法の場で個別判断ということとなりますけれども、その生成過程におきまして、AI利用者に創作意図があり、かつ創作的寄与があれば、その作品は著作物と認められてくると考えられます。先ほど申し上げたように、その場合はAI利用者が生成物の著作権者というふうになります。
また、収集された元の作品の著作者は、元の作品について著作権を有するほか、その作品を基に新たな表現を加えた二次的著作物が創作された場合についても著作権が発生してまいりますので、このようにAIが生成した作品が元の作品と表現が同一又は類似している場合は、元の作品の著作者も生成されたものにつきまして著作権を持つ場合がある、このように考えております。』と答弁があったよ。

SNSによく見かける、色々な場面をつなぎ合わせたショート動画などは個別事案になるとは言え著作権的にどうなるんだろ?は気にしたいところだね。

ドラマや映画で、監督スタッフ、出演者に再放送などではどう権利が出てくるのか?制作会社は?ネット配信動画の場合は?など、今後この改正でどう変わっていくのか、注目だね!

法案審議を、とりあえず1.5倍速でざっと聞いただけだけど、全会一致だし、登壇ものじゃないし、束ねじゃないのに、結構国民生活に影響がありそうな改正だよなぁっと率直に思ったよ。特にAIについてはお手上げ…ゲフン…今後の検討課題っぽいという印象だったよ。

衆議院
著作権法の一部を改正する法律案(211国会閣51)

2023年 4月 5日
 文部科学委員会 4時間19分 (一般質疑)趣旨説明
第211回国会 衆議院 文部科学委員会 第6号 令和5年4月5日
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121105124X00620230405

2023年 4月12日
 文部科学委員会 2時間06分 質疑
第211回国会 衆議院 文部科学委員会 第7号 令和5年4月12日
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121105124X00720230412

2023年 4月14日
 文部科学委員会 2時間50分 質疑、採決
第211回国会 衆議院 文部科学委員会 第8号 令和5年4月14日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121105124X00820230414

2023年 4月18日
 本会議 1時間09分 起立採決
第211回国会 衆議院 本会議 第20号 令和5年4月18日
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121105254X02020230418

全会一致で可決

参議院(アーカイブ視聴期間は約一年なのでお早めにご視聴下さい)
著作権法の一部を改正する法律案

開会日:2023年5月9日
収録時間:約6分
会議名:文教科学委員会 趣旨説明
第211回国会 参議院 文教科学委員会 第11号 令和5年5月9日
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121115104X01120230509

2023年5月16日
収録時間:約3時間38分
会議名:文教科学委員会 質疑、採決
第211回国会 参議院 文教科学委員会 第12号 令和5年5月16日
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121115104X01220230516

2023年5月17日
収録時間:約1時間47分
会議名:本会議 起立採決
第211回国会 参議院 本会議 第23号 令和5年5月17日
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121115254X02320230517

全会一致で可決


法案情報

内閣法制局情報

主管省庁情報


審議情報

衆議院

議案名「著作権法の一部を改正する法律案」の審議経過情報https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DD826A.htm

照会できる情報の一覧
・提出時法律案https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g21109051.htm

付託委員会趣旨説明
↓発言URL
第211回国会 衆議院 文部科学委員会 第6号 令和5年4月5日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121105124X00620230405

○宮内委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。永岡文部科学大臣。
    ―――――――――――――
 著作権法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○永岡国務大臣 この度、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 デジタル技術を活用して人々の生活を豊かにするデジタルトランスフォーメーションの進展により、誰もが著作物を創作して公表し、利用できる時代になっております。こうした時代の下で、著作権制度は、社会や市場の変化に柔軟に対応し、新たなコンテンツを創作する好循環を実現することにより、文化芸術を始めとした我が国の発展に寄与できるように充実を図ることが必要です。
 この法律案は、権利保護及び適切な対価還元と利用の円滑化の両立を基本とする観点から、未管理公表著作物等の利用に関する裁定制度の創設、立法及び行政の事務のデジタル化に対応した規定の整備、並びに海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直しを行うものであります。
 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
 第一に、未管理公表著作物等の利用に関する裁定制度を創設します。具体的には、未管理公表著作物等を利用しようとする者は、利用の可否に係る著作権者の意思が確認できない著作物等について、その意思を確認するための措置を取ってもその意思が確認ができない場合に、文化庁長官の裁定を受け、かつ、補償金を供託することにより、時限的に利用することができることとしております。
 あわせて、本裁定制度による迅速かつ適切な著作物等の利用を可能とするため、文化庁長官の登録を受けた機関において裁定に関する事務の一部を行うことができるようにするとともに、文化庁長官の指定を受けた機関に補償金を支払うことができるようにすることで、供託手続を不要としております。
 第二に、立法及び行政の事務のデジタル化に対応するため、立法又は行政の目的のために内部資料として必要となる場合及び特許に関する審査等の行政手続などのために必要となる場合における著作物等の公衆送信等を可能としております。
 第三に、著作権等が侵害された際に権利者の立証負担の軽減を図ることを目的として、侵害者が販売した数量等のうち権利者の販売能力を超えるとして損害額から控除されていた部分について、ライセンス料に相当する額を損害額の算定基礎に加えられるようにするとともに、ライセンス料に相当する額を認定するに当たり、侵害があったことを前提として交渉した場合に得られる額を考慮できることを明確化しております。
 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

→衆議院委員会討論

討論
なし

委員会採決 
起立総員、可決

附帯決議
自民、立憲、維新、公明、国民、五派共同提案 
起立総員、可決

↓発言URL
第211回国会 衆議院 文部科学委員会 第8号 令和5年4月14日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121105124X00820230414

○宮内委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――

○宮内委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○宮内委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――

○宮内委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村裕之君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。森山浩行君。

○森山(浩)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明に代えさせていただきます。
    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 著作物等の利用に関する新たな裁定制度は、著作権等管理事業者による集中管理がされていない著作物等を対象としており、これらの権利者には個人で活動するクリエイターなどが多く含まれることを踏まえ、特に本制度の利用の契機となる著作物等の利用の可否に係る意思表示について、幅広く丁寧な説明、周知を行うこと。
 二 新たな裁定制度の具体化に当たっては、現行の裁定制度の現状を踏まえ、手続の簡素化に留意し、制度の利用に繋がるよう努めること。また、権利者の意思表示の確認に係る要件について明確さを旨として定めるとともに、意思表示をしていない権利者の権利保護が図られるよう、裁定手続を進める過程においても、意思表示を待つだけに留まらず、不断に権利者の探索・アプローチを進める方策に努めること。
 三 登録確認機関が行う未管理公表著作物等の使用料相当額の算出に当たっては、利用者の負担軽減の観点から、利用者が使用料相当額を算定しやすい簡便な仕組みとするとともに、著作物等の利用形態に応じた一般的な使用料等の相場を踏まえた適切な額とするよう努めること。
 四 著作物等の利用に係る利便性の向上とともに、権利者への適切な対価還元を図る本法の趣旨を踏まえ、登録確認機関の登録及び指定補償金管理機関の指定に当たり、それぞれの機関が権利者及び利用者の意見を適切に反映した運営が確保されるよう留意すること。
 五 分野横断権利情報検索システムは新たな裁定制度において権利者の探索に重要な役割を果たすことを踏まえ、政府は、分野横断権利情報検索システムの構築に当たって、著作権等管理事業者が保有する既存のデータベースとの連携等データベースの充実に向けた支援を行うこと。その際には、著作権等管理事業者の負担となることのないよう留意すること。
 六 海賊版による著作権侵害に対する損害賠償額として認定されるライセンス料相当額の考慮要素の明確化については、侵害行為の抑止の観点から、損害賠償額が適正な額となるよう制度の趣旨の周知を図ること。
 七 海賊版サイトについては、運営主体の多くが海外に拠点をもっていることから、その取締りに当たっては、日本国内のみならず国際的な連携・協力の強化など、海外での不正流通防止に向けた対策に積極的に取り組むこと。
 八 メタバースや非代替性トークン(NFT)等、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が著作物等の創作・流通・利用を取り巻く環境に大きな影響を与えていることを踏まえ、著作物等の一層の利用の円滑化及びそれに伴う著作権者の権利保護の在り方等、著作権制度の議論を加速させること。
 九 DXの進展により、著作物の創作又は利用を本来の職業としない者が著作物の提供者あるいは著作物の利用者となる機会が増えたことを踏まえ、著作権等に関する法律知識の周知や契約実務の補助となるマニュアル等の普及に努めること。
 十 AI技術の進展により、他者の著作物を使用した創作物が容易に作成されるようになったことを踏まえ、著作者の権利の保護に向けた取組・体制の強化を図ること。また、著作権に対する意識の醸成及び教育機会の更なる充実を図ること。
以上であります。
 何とぞ御賛同いただきますようよろしくお願い申し上げます。

○宮内委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

○宮内委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。永岡文部科学大臣。

○永岡国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――

○宮内委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○宮内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

衆議院本会議委員長報告
↓発言URL
第211回国会 衆議院 本会議 第20号 令和5年4月18日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121105254X02020230418

日程第五 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)

○議長(細田博之君) 日程第五、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。文部科学委員長宮内秀樹君。
    ―――――――――――――
 著作権法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔宮内秀樹君登壇〕

○宮内秀樹君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、著作物等の公正な利用を図るとともに著作権等の適切な保護に資するための措置を講ずるものであり、その主な内容は、次のとおりであります。
 第一に、利用の可否に係る著作権者等の意思が確認できない著作物等の時限的な利用に関する新たな裁定制度を創設すること、
 第二に、立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合に、著作物等を公衆送信できることとすること、
 第三に、海賊版被害等の実効的救済を図るための措置として、侵害者の売上げ等の数量が権利者の販売等の能力を超える場合であっても、ライセンス機会喪失による損害額の認定を可能とすること
などであります。
 本案は、去る四月五日本委員会に付託され、同日永岡文部科学大臣から趣旨の説明を聴取しました。十二日に質疑に入り、十四日に質疑を終局いたしました。質疑終局後、採決を行った結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――

○議長(細田博之君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――


参議院

議案審議情報https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/211/meisai/m211080211051.htm


付託委員会趣旨説明
↓発言URL
第211回国会 参議院 文教科学委員会 第11号 令和5年5月9日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121115104X01120230509

○委員長(高橋克法君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
 著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。永岡文部科学大臣。

○国務大臣(永岡桂子君) この度、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 デジタル技術を活用して人々の生活を豊かにするデジタルトランスフォーメーションの進展により、誰もが著作物を創作して公表し、利用できる時代になっております。こうした時代の下で、著作権制度は、社会や市場の変化に柔軟に対応し、新たなコンテンツを創作する好循環を実現することにより、文化芸術を始めとした我が国の発展に寄与できるように充実を図ることが必要です。
 この法律案は、権利保護及び適切な対価還元と利用の円滑化の両立を基本とする観点から、未管理公表著作物等の管理、利用に関する裁定制度の創設、立法及び行政の事務のデジタル化に対応した規定の整備、並びに海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直しを行うものであります。
 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
 第一に、未管理公表著作物等の利用に関する裁定制度を創設します。具体的には、未管理公表著作物等を利用しようとする者は、利用の可否に係る著作権者の意思が確認できない著作物等について、その意思を確認するための措置をとってもその意思が確認ができない場合に、文化庁長官の裁定を受け、かつ、補償金を供託することにより、時限的に利用することができることとしております。
 あわせて、本裁定制度による迅速かつ適切な著作物等の利用を可能とするため、文化庁長官の登録を受けた機関において裁定に関する事務の一部を行うことができるようにするとともに、文化庁長官の指定を受けた機関に補償金を支払うことができるようにすることで、供託手続を不要としております。
 第二に、立法及び行政の事務のデジタル化に対応するため、立法又は行政の目的のために内部資料として必要となる場合及び特許に関する審査等の行政手続などのために必要となる場合における著作物等の公衆送信等を可能としております。
 第三に、著作権等が侵害された際に権利者の立証負担の軽減を図ることを目的として、侵害者が販売した数量等のうち権利者の販売能力を超えるとして損害額から控除されていた部分について、ライセンス料に相当する額を損害額の算定基礎に加えられるようにするとともに、ライセンス料に相当する額を認定するに当たり、侵害があったことを前提として交渉した場合に得られる額を考慮できることを明確化しております。
 このほか、所要の規定の整備を行うとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

○委員長(高橋克法君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。

→参議院委員会討論

討論
なし

委員会採決 
全会一致、可決

附帯決議 自民、立憲・社民、公明、維新、国民・新緑、れいわ 各派共同提案
全会一致、可決

↓発言URL
第211回国会 参議院 文教科学委員会 第12号 令和5年5月16日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121115104X01220230516

○委員長(高橋克法君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 著作権法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(高橋克法君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、熊谷君から発言を求められておりますので、これを許します。熊谷裕人君。

○熊谷裕人君 私は、ただいま可決されました著作権法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会及びれいわ新選組の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 それでは、案文を朗読いたします。
    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一、著作物等の利用に関する新たな裁定制度は、著作権等管理事業者による集中管理がされていない著作物等を対象としており、これらの権利者には個人で活動するクリエイターなどが多く含まれることを踏まえ、特に本制度の利用の契機となる著作物等の利用の可否に係る意思表示について、幅広く丁寧な説明、周知を行うこと。
 二、新たな裁定制度の具体化に当たっては、現行の裁定制度の現状を踏まえ、手続の簡素化に留意し、制度の利用に繋がるよう努めること。また、権利者の意思表示の確認に係る要件について明確さを旨として定めるとともに、意思表示をしていない権利者の権利保護が図られるよう、裁定手続を進める過程においても、意思表示を待つだけに留まらず、不断に権利者の探索・アプローチを進める方策に努めること。
 三、登録確認機関が行う未管理公表著作物等の使用料相当額の算出に当たっては、利用者の負担軽減の観点から、利用者が使用料相当額を算定しやすい簡便な仕組みとするとともに、著作物等の利用形態に応じた一般的な使用料等の相場を踏まえた適切な額とするよう努めること。
 四、著作物等の利用に係る利便性の向上とともに、権利者への適切な対価還元を図る本法の趣旨を踏まえ、登録確認機関の登録及び指定補償金管理機関の指定に当たり、それぞれの機関が権利者及び利用者の意見を適切に反映した運営が確保されるよう留意すること。
 五、分野横断権利情報検索システムは新たな裁定制度において権利者の探索に重要な役割を果たすことを踏まえ、政府は、分野横断権利情報検索システムの構築に当たって、著作権等管理事業者が保有する既存のデータベースとの連携等データベースの充実に向けた支援を行うこと。その際には、著作権等管理事業者の負担となることのないよう留意すること。
 六、海賊版による著作権侵害に対する損害賠償額として認定されるライセンス料相当額の考慮要素の明確化については、侵害行為の抑止の観点から、損害賠償額が適正な額となるよう制度の趣旨の周知を図ること。
 七、海賊版サイトについては、運営主体の多くが海外に拠点をもっていることから、その取締りに当たっては、日本国内のみならず国際的な連携・協力の強化など、海外での不正流通防止に向けた対策に積極的に取り組むこと。
 八、メタバースや非代替性トークン(NFT)等、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が著作物等の創作・流通・利用を取り巻く環境に大きな影響を与えていることを踏まえ、著作物等の一層の利用の円滑化及びそれに伴う著作権者の権利保護の在り方等、著作権制度の議論を加速させること。
 九、DXの進展により、著作物の創作又は利用を本来の職業としない者が著作物の提供者あるいは著作物の利用者となる機会が増えたことを踏まえ、著作権等に関する法律知識の周知や契約実務の補助となるマニュアル等の普及に努めること。
 十、AI技術の進展により、他者の著作物を使用した創作物が容易に作成されるようになったことを踏まえ、著作者の権利の保護に向けた取組・体制の強化を図ること。また、生成AIの開発と利用が急速に進む中、その学習行為において用いられる著作物について、著作権者の許諾が必要とされる著作権法第三十条の四における「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」の解釈の更なる明確化、権利者側に対価を還元する仕組みの整備等を求める声があることを踏まえ、生成AIをめぐる著作権法上の諸課題について議論を進めること。加えて、著作権に対する意識の醸成及び教育機会の更なる充実を図ること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(高橋克法君) ただいま熊谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(高橋克法君) 全会一致と認めます。よって、熊谷君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、永岡文部科学大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。永岡文部科学大臣。

○国務大臣(永岡桂子君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

○委員長(高橋克法君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(高橋克法君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時三十一分散会

参議院本会議委員長報告
↓発言URL
第211回国会 参議院 本会議 第23号 令和5年5月17日
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121115254X02320230517

○議長(尾辻秀久君) 日程第二 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。文教科学委員長高橋克法君。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔高橋克法君登壇、拍手〕

○高橋克法君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、立法又は行政の内部資料として必要と認められる場合等に著作物の公衆送信等を可能とする措置、著作物の利用の可否に係る著作権者の意思が確認できない場合の裁定制度を創設する等の措置及び著作権侵害に対する損害賠償額の算定の合理化を図る措置について定めようとするものであります。
 委員会におきましては、新たな裁定制度の円滑な利用に向けた工夫、本法律案による海賊版被害の救済の実効性、AIの進展を踏まえた今後の著作権制度の在り方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────

○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(尾辻秀久君) 総員起立と認めます。
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)


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著作権法改正案 権利者不明作品の利用を円滑に
2023年4月13日

国会では著作権法改正案が審議されています。著作物等の公平な利用を図るとともに、これらを適切に保護するのが狙い。1.著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置3.海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し―が柱です。改正案のポイントをまとめました。

権利者不明作品の活用促進へ 著作権法改正案を閣議決定
社会・調査
2023年3月10日 8:45

政府は10日、権利者が分からない著作物の二次利用を促すための著作権法改正案を閣議決定した。利用希望者からの相談や申請を受ける窓口組織を置き、一定額を支払うことで二次利用をできる新制度を導入する。今国会で成立すれば2026年度までに施行される見通しだ。

個人がインターネットに投稿したデジタルコンテンツや古いテレビドラマなどは権利者の所在確認や許諾を得ることが難しい。現行法も二次利用を認める制度があるが、手続きに1〜2カ月かかるなど権利処理の負担が重い。ネット配信や二次創作の妨げになっていた。

改正案は音楽や小説、動画といった分野をまたぐ著作権のデータベースを立ち上げ、権利者を探しやすくする。権利者が分からない場合や、許諾の意思表示が確認できない場合は新設の窓口組織に申請し、一定額の補償金を支払えば暫定的に利用できる。

事後に権利者が申し出れば補償金を還元する。当事者間で改めて許諾契約を結ぶこともできる。窓口組織は著作権関連の業務で実績のある一般社団法人などを想定する。

経済産業省によると、世界のデジタルコンテンツ市場は18年時点で約2300億ドル(約31兆円)。19〜23年で年平均8.2%伸びると予想されるが、日本は6.8%で世界平均を下回る。二次利用を活発化することでコンテンツ産業の育成をめざす。

新制度に関する改正法は公布から3年以内に施行する。文化庁は導入までの準備期間にデータベースの具体的な運用方法などを検討し、個人で作品を発信するクリエーターらへの周知を進める。

著作物の二次利用を円滑に 改正著作権法 参院本会議で成立
2023年5月17日

権利者がわからない著作物を円滑に二次利用できる制度の創設などを盛り込んだ改正著作権法が17日の参議院本会議で可決・成立しました。

音楽や映像などの著作物を二次利用する際は、著作権を管理する団体や個人の許諾が必要ですが、過去の放送番組や個人がウェブ上で公開した作品などを利用しようとしても権利者や連絡先がわからず、活用できないケースが指摘されています。

改正著作権法は、権利者の意向がわからない著作物を円滑に二次利用できる制度の創設を柱とするもので、文化庁長官から指定を受けた民間機関に補償金を納めることで、許諾がなくても一時的な利用が認められます。

権利者が利用に気付いた場合は、補償金を受け取ったうえで、改めて利用について交渉することができます。

このほか、改正著作権法では、漫画などの海賊版被害の救済策として、損害賠償の請求額を増額できることなども盛り込まれています。

改正法は、17日の参議院本会議で採決が行われ、全会一致で可決成立しました。

令和5年改正著作権法の影響度と実務対応
新たな裁定制度、立法・行政における公衆送信等、損害賠償額の算定方法見直し
2023年07月20日
 2023年5月17日、著作権法の一部を改正する法律案が国会で成立し、同月26日に公布されました(令和5年法律第33号)。改正事項は、著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等、立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置、海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し、の3点です。本稿では、本改正法の内容を解説します(改正後の条文を「新○条」と記載します)。