<独自>郵政民営化方針撤回、金融2社の株式保有継続 自民、通常国会に改正法案提出検討
2024/1/6 16:14
政府の郵政民営化方針の撤回に向けて、自民党内で郵政民営化法を改正する議論が進められていることが6日、分かった。日本郵政が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の金融2社の株式について、一部を保有し続けられるよう完全分離の規定をなくす。日本郵政が日本郵便を吸収統合し、赤字体質の郵便事業を金融2社が支える構図を明確にする。郵便物の減少など郵便事業の業績悪化が背景にある。
改正法案は、自民党の山口俊一衆院議院運営委員長を中心とする有志衆参議員8人ほどでつくるプロジェクトチームが昨年初めから議論を進めてきた。近く内閣法制局も含めた会合を開き条文の本格作成に着手する。公明党や野党との調整も進め、1月下旬召集の通常国会会期中に議員立法として提出することを目指す。郵政民営化法が改正されれば12年ぶり。前回平成24年の改正も議員立法だった。
小泉純一郎政権下の17年に成立した郵政民営化法は、29年9月までに金融2社の株を完全に売却して両社を民間企業とすることが義務付けられていた。24年の法改正では売却時期を「できる限り早期に」として明確にしない形に修正されたが、今回の法改正では売却規定を外す。郵便事業を担う日本郵政については、政府が3分の1超の株式を保有することが当初から義務付けられており、今回も見直しの対象となっていない。
郵便事業は昨年12月に郵便料金の値上げを発表したが、手紙利用の減少などで今後も収益悪化が避けられない状況にある。一方で全国約2万4千局の郵便局には自治体業務の代行など公的基盤としての期待が高まっている。郵便局網と郵便事業を維持するためには、当初の民営化方針を撤回してでも金融2社との資本関係を維持させる必要があると判断した。
改正法案ではこのほか、自治体業務も含めた多様な公的サービスの代行を、国営だった郵便、郵便貯金、簡易生命保険の郵政3事業を民営化することで、民間の活力を取り入れて経営の自由度を高め、良質なサービスを低価格で提供可能にすることや公務員数削減などを目的に行われた。平成17年には郵政民営化法が成立して19年には民間企業として郵政グループが発足。27年には日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社が上場を果たした。郵便局の基本業務に新たに位置付ける。公的業務の増加に備え、外国人投資家による経営介入を防ぐため、日本郵便との統合後には日本郵政に対する外資規制を導入することも明記する方針だ。(大坪玲央)