ブラジル旅行記 番外編 かわいいポルトガル語
ブラジルの公用語は、ポルトガル語です。
もちろん先住民の言語はたくさんありますが、街では皆さん、ポルトガル語を使っています。
英語が通じないことも多々ありました。
英語とほぼ同じような単語がたくさんあるかと思いきや、全然違う単語もたくさんあります。
日本語や英語に慣れている人にとって難しいのは、女性と男性で語尾が変わったり、単語ごとに女性名詞、男性名詞があることです。
たくさんポルトガル語に触れて、少しずつ覚えていくしかありません。
突然、日本語にそっくりな単語も出てきます。
例えば、「ありがとう」と「obligado」が同じ意味で響きも似ているということは聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
私とブラジル出身のパートナーが驚いたことは、日本語で言う「ムキムキ」とポルトガル語の「muki」がほぼ同じ意味だと言うことです。
単語の使い方が少し違くて、ポルトガル語では「ムキを作る(筋トレをする)」、「あなたのムキ(もりっとしている筋肉)はすごいね」といったような使い方をします。
他にも、たくさんの日本語がポルトガル語に聞こえるそうで、しかもそれが大抵、小学生くらいの男の子が喜びそうな内容なのだそうです。
ポルトガルのポルトガル語とブラジルのポルトガル語では、語彙も発音も違います。
ブラジルのポルトガル語のほうが母音をしっかりと発音します。それが理由なのか、お国柄なのかは分かりませんが、ブラジルの人は言葉遊びやダジャレが大好きです。
ブラジルの人はジョーク全般も大好きで、親しい間柄でこそ、日本人からするとビックリするような、かなりキツい冗談を言い合ったりしている様子を見かけました。
例えば、いわゆる “肉食系女子”のような女性のことを “ピラニア”と呼ぶことがあるそうなのですが、親しい中年女性同士のお友達が、お相手を呼ぶときに「ちょっと、そこのピラニア!」と声をかけていたりしました。
ブラジルの家族愛、友情、男女の関わり方は、日本人からすると驚くこと、彼らから学べることがたくさんあります。また、そのコントラストから日本ならではの人へのリスペクト、配慮、愛のかけ方や表現も浮き彫りになってとても興味深いです。
少し言語そのものから逸れましたが、そんな母音がはっきりしているブラジルのポルトガル語には、かわいい響きの言葉、フレーズがたくさんあります。
とても特徴的な表現の一つは、何か大きいものを指すときには “-ão” (男性名詞)や “-ona” (女性名詞)をつけて、何か小さなものを指すときには “-inho” (男性名詞)や “inha” (女性名詞)をつけるという、文法的には、拡大辞/指小辞と呼ばれる表現です。
例えば、ブラジルでも定番の朝ごはん、スクランブルエッグは、「mexido」と呼ばれるので、卵をたくさん使った大きいサイズの時は「mexidão 」になります。発音は、「ミシダォン」のような感じなのですが、日本語の「ドーン!」という擬音語の感覚と似ているような気がして、私は「ミシドーン!」と言っています。
反対に、卵少しで小さいスクランブルエッグの時は、「mexidinho」になります。発音は「ミシジーニョ」です。この「ニョ」がいかにも小さな感じがして、音と感覚が繋がっているところがとても日本語を扱う感覚と似ていて、日本の人にとってとてもしっくりくる言葉な気がしています。
女性名詞の時には、語尾は「~ニャ」となることが多く、本当にかわいいです。
もう一つ日常で良く聞くフレーズでかわいいなと思っていたのは、「また明日!」を意味する、「Até amanhã」です。「アテマニャ~」という風に聞こえます。この「amanhã」は小さいものとは関係がなく、「明日」を意味する単語です。ちょっと、「またね~」という響きと似ている気もしますが、もっとかわいいです。
一番興味深かった、そしてかわいい単語は、「fofo」フォフォです。
その意味も、日本語の「かわいい」に近く、とても広い意味がありますが、基本的に単純に見た目が可愛らしい、美しい時に使うのではなく、子犬や赤ちゃんに対する「かわいい」に近い感情を示します。また、小さなものだけではなく、大人に対しても、何だか素朴でかわいい行為や会話などのこともfofoと言ったりします。
例えば、ブラジルの大きな都市、サンパウロ、リオ、ブラジリアではそれぞれ人の感じが異なり、ブラジリアの人は少し静かできちんとしていて、それでいてなんだかかわいい、fofoな人が多く、日本人と接しているような感覚になることもありました。
日本の人のコミュニケーションや振る舞いは世界的にfofoだと思います。
スペイン語とポルトガル語は似ていて、どちらも日本の人にとって特に中南米スタイルでの発音は英語などと比べると簡単だと言われていますが、スペイン語はなんだかラテンな響きがして、話していると性格が変わってしまいそうな感覚がある一方、ブラジルのポルトガル語の響きはフォフォそのもので、日本語の感覚ととても近いような気がしました。
旅をするときにその土地の言語の響きを聞いて、自然を見て、音楽を聴いて、人柄に触れて、その繋がりを感じて想像することはとても楽しいです。