【質問箱】暮らしのはなし

お題:暮らしのはなしを読みたいです。平日と休日、それぞれどんなふうに過ごしていますか。

質問箱からお題をくださった方、ありがとうございます。変わり映えのしない日々を送っていますが、書いてみようと思います。

平日
太宰治『女生徒』の冒頭で朝目覚める時の気持ちについて書いていて、私にとってこれ以上的確な表現はないので、一部を引用します。

パチッと眼がさめるなんて、あれは嘘だ。濁って濁って、そのうちに、だんだん澱粉が下に沈み、少しずつ上澄が出来て、やっと疲れて眼がさめる。朝は、なんだか、しらじらしい。悲しいことが、たくさんたくさん胸に浮かんで、やりきれない。
太宰治『女生徒

不眠気味なこともあってか、朝はこんな感じで疲れてやりきれないような気分で目が覚めます。大体7時とかですかね。そして私が学生の頃から必ず朝起きて最初にする儀式を始めます。それはベッドの中で目を閉じたまま渡辺麻友さんの横顔をまぶたの裏に描き、自分の視線でその輪郭をなぞること。もうAKB48からも芸能界からも卒業してしまいましたが、彼女がどこかで生きている世界は私にとって美しいと信じられるので、こうすることで始めて、ベッドから這い出て今日の世界に飛び込もうという気力が湧いてきます。

その後は歯磨きをして(余談ですが、中学生の頃の歯科検診で、派手目な歯科医の女性に「歯並びいいね。おばあちゃんになっても美味しいものいっぱい食べられるよ」と微笑まれて、この人と暮らしておばあちゃんになっても林檎をそのままジャクジャク齧ってる姿を見せて笑わせたいと思いました)、牛乳とヘーゼルナッツシロップを入れたコーヒーを飲みます。

そのままメイクして在宅で(たまに出社する日も)仕事し、お昼になると、コンビニで買ってきたご飯とか宅配食を食べます。最近のコンビニご飯ってクオリティ高くないですか?昔ってもっと種類も少なくて、おにぎりとかも海苔がべたっとしてフィルムも全然剥がれなくて、みたいな感じだった気がします。企業努力に感謝しつつ、なんだか恐ろしくて、社会の求める水準が高くなるって、そこに到達できなくて零れ落ちちゃう人も多くなるじゃないですか。私は体力とか能力面でいつもギリギリで生きているので、これ以上を要求されたら辛い。こんなことを思いつつ結局コンビニとか文明の生み出した諸々を活用していて、そういう自分がださくて惨めな気持ちになります。

大体19~20時くらいに仕事を終えて、その後もちょこちょこ仕事のメッセージを返したり業務に必要な勉強をして、気が向いたら近くの定食屋さんに行ったり冷凍食品で晩御飯を済ませます。気が向かなければ食べません。普段あまり料理をしなくて、そもそも生活が苦手で、決まった時間にきちんとご飯を作って食べるとかお風呂に入るとか疲れます。皆受け入れてるけどこの生活リズムって現代人にあってるの?そもそも個体差あるのに、と思っちゃいます。規則正しい生活をした方が良いとは分かっているのですが、理解と納得は別なので…。ちょこちょこおやつを食べているのでお腹は減りません。仕事中にナッツをよく食べるのですが、この前席を立ったら机の下の隅にクルミが落ちていて、なんかリスが住み着いてるみたいで可愛い〜となった直後に我に返って独身1人暮らしの寂しさに襲われ、(クルミを落としてもひとり…)とか尾崎放哉気取りでしんみりしました。

平日に出かけることはほとんどなくて、夜はNHKの動物・自然系の番組を見たり、本を読んだりして過ごします。たまにお酒も飲みます。Prinz Bear という赤ワインがお手頃で、甘めで飲みやすくてラベルも可愛くてお気に入りです。私は普段から結構愚鈍で、仲良しの先輩と遊んでいるときにぼーっとして何かやらかすといつも「そんなぼやっとして、野生動物だったら今ので死んでるよ!」と笑われるので、動物番組を見てのろまな感じの生き物の存在を知ると、先輩に「ぼーっとしてる奴も自然界にいます」と報告します。最近はエチオピアオオタケネズミについて送って、ぼやっとしているけど他の種と協力(利用)し合って生きているようですと伝えたら、オオカミにがっつり喰われてるショッキングな動画が返ってきました。あとはお風呂に入って、ベッドの中でnoteを書いたりして、眠りにつきます。日々、この繰り返しです。

休日
休日も仕事以外は平日とそんなに変わらないです(起きる時間はもっと遅い)。ロープウェイとか船とか吊り下げ式モノレールに乗るのがとても好きなので、元気があれば出かけて乗りに行きます。

とても好きな短編小説なのですが、村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』に、中国人の女の子の「そもそもここは私の居るべき場所じゃないのよ」という台詞があって、思えばいつもそんな気持ちを抱えているような気がします。船とかロープウェイって到着地点はあるけど別に到着することが目的じゃなくて(そういう場合もありますが)そこからどこに行ったっていいし、乗ってる最中は常に移動している状態だから"今いる場所"が定まっていないというか、「ここは私の居場所ではない」という気持ちが軽くなります。あと空とか海が広く見えて気持ちいい。日が暮れてから乗って夜景を眺めていると、赤い光が一番遠くまで届くって本当なんだなぁと実感して、そういうぼんやりできる時間が落ち着きます。

たまに友人と出かけたり、職場の飲み会に出たり、神保町に行きます(ボンディでカレーを食べる→書店巡り→喫茶さぼうるで生いちごジュースを飲むのがお気に入りコース)が、基本的にはそんな感じです。私は多分結婚もしないし、つまんねえ毎日!と思われそうですが、自分ではなかなか悪くないなと感じます。年齢的にそんなこと言ってる場合じゃないですが、生活の諸々が苦手で(今、ポケットwifiの解約を放置中なのを思い出しました)改善点も多いですが、自分のペースで苦手を克服したり、好きな物を見つけていくのは結構気分が良いです。人生って最悪なことも多くて、どうしようもなく落ち込んだりもしますが…。レイモンド・カーヴァーの『ささやかだけれど、役に立つこと』という小説のタイトルを耳にしたことはありせんか?私はこの原題のA Small, Good Thingというのが好きで、そういうのを大事に1人で暮らせたら満足かなと思っています。

長くなりましたが、私はこんなふうに日々を過ごしています。お題をくださった方の暮らしはどんな感じでしょうか?機会があればこっそり(大々的にでも)教えていただけると嬉しいです。自分の暮らしを振り返ったり、誰かの暮らしに思いを馳せるのって楽しいですね。またひとつ好きな物を見つけられたかも。ありがとうございます。

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