![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/63956492/rectangle_large_type_2_34c0622e9d3e21fae45ab9638ad909a7.png?width=1200)
AOKIのパジャマスーツ戦略の鍵は生産におけるケイパビリティの適合性にある
今回は、紳士服のAOKIが「パジャマスーツ」を戦略の柱にすえて、年間売上100億円の増加を狙うというニュースについて戦略を読み解きます。
ここからは例によって「戦略ループ」という手法で戦略を説明します。ループ図の読み方については、以下の記事を参照ください。
まずは紳士服専門小売業者の話から。
AOKIをはじめとする、紳士服専門小売は、スーツをたくさん作って、たくさん売ることに特化してきました。
生産活動においても同様。スーツを開発し、原料を仕入れて、ハイシーズンでも欠品しないように生産プロセスを最適化しています。
だからスーツでしっかり利益が出る。成長の拡張ループ(下図、青色矢印)です。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/63956916/picture_pc_cbef7c90435b2b01dc77956c167b501b.png?width=1200)
しかしコロナ禍で状況が一変してしまいました。
リモートワークが推進(上図、赤枠)され、スーツを着て外に出かける機会が激減。それに伴い、スーツの販売量も減りました(上図、赤色点線)。
さらに追い討ちをかけるように、入社式などのフォーマルイベントの中止や、就職活動のリモート化なども進み、スーツを買う機会もタイミングも減りました。
この影響は大きく、AOKIホールディングス全体では、直近期の売上高は2019年比で26%減の1431億円。金額では約500億円の売上ダウンです。
とはいえ「1431億円も売上があるなら大丈夫なんじゃないの?」と思う人もいるはず。
しかし経常利益で見ると、66億円のマイナスになっています。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/63957622/picture_pc_ae953febb5658b24a4554d33a60f186d.png?width=1200)
そんなリモートワーク中心の生活様式で、新たにAOKIが打ち出したのが「パジャマスーツ」でした。
https://www.aoki-style.com/feature/pajamasuit/
こちらがそこそこのヒットを打ったことで、戦略の中心にすえるぞ!というのが今回のニュースというわけです。
しかし、諸手を挙げて簡単にというわけにはいきません。
戦略上の問題になるのは、これまで構築した「スーツの生産体制」という経営資源がどこまで活かせるのか?ということ。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/63958192/picture_pc_9b6610bef6906753a395cf9ce47ef74d.png?width=1200)
もちろん共有できる資源はあるんでしょうけど、新たな取り組みとしてある程度「カジュアル服の生産体制」への投資が必要です。
しかも、現状は利益が出ていないから、原資は内部留保と借入金になるでしょう(上図、緑色矢印)。
ちなみにAOKIの昨年度の借入額は約200億円。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/63958380/picture_pc_1018cf53c5c2b83146e59f568051da7a.png?width=1200)
https://ir.aoki-hd.co.jp/ja/ir/finance/indicator.html
もちろん全額がパジャマスーツに使われたわけじゃないと思います。
ほとんどが固定費の支払いかも。ちなみに昨年は店舗数は減らさず、むしろ増やして1299店舗に。
ということで、結局、AOKIの戦略ループは良いのか?悪いのか?
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/63958477/picture_pc_65e8448bae8492ea01fdb8cba65f58b1.png?width=1200)
前述したように、生産体制については、これまでの経営資源をどこまで使えるか鍵でしょう。
スーツの生産資産をたくさん使えるのであれば、負担は少ないでしょう。しかし、共有できる部分が少なければリスクが高い。
あとはスーツのブランドイメージを、どこまでカジュアルウエアに活かせるのか? AOKIと聞いて、ピシッとしたスーツは思い浮かびますが、楽な服は思い浮かびません。
さらにパジャマスーツを買いに行くだけにAOKIに行くというのも、多くの消費者にとって億劫なんじゃないでしょうか。スーツ屋って気軽に入れる気がしませんしね。店員も寄って来ちゃいますし。
…ここまで考えると、なんだか難しそう。これまでのスーツのイメージが強固すぎるような気がします。
今後の動きを見守っていきたいですね。
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ということで、ループ図による戦略図解について興味を持たれた方は、以下の記事も読んでみてください。
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