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梅毒感染流行拡大 1万件超の最多ペース

 梅毒感染の流行が止まりません。感染拡大を受け、自治体は保健所などの対策を進め、早期発見の重要性を発信しています。
 
 梅毒は「梅毒トレポネーマ」という病原体により引き起こされる感染症です。梅毒の病変部位と粘膜や皮膚が直接接触することでうつるため、主に性交渉により感染します。この病原体は低酸素状態でしか生存できず、また低温や乾燥にも非常に弱いという性質があるため、梅毒の感染経路は限定されています。
 症状としては、性器や口の中に小豆から指先ほどの大きさのしこりや痛みの少ないただれができ、手のひら、足の裏、体中に痛みやかゆみのない発疹が広がります。放置すると心臓や脳などに病変が生じ、障害が残る可能性もある恐ろしい病気です。
 
 国立感染症研究所の調査で、2024年の感染報告は10,162件(暫定値 ※9月15日時点)と昨年同時期に匹敵する水準であることが明らかになりました。1999年以降は500件前後で一定の数値でしたが、2013年に1,000件を超えてから増加傾向にあり、2022年には10,000件を突破、2023年は14,906件(暫定値)と過去最多を更新中です。
 感染動向調査では、男女別で男性が約65%、女性が約35%の割合です。年代別では男性が20~50代と幅広く、女性の6割弱が20代でした。
 
 感染拡大には、主に2つの要因が挙げられます。
1.  不特定多数の人との性的接触
性風俗産業の利用だけでなく、SNSやマッチングアプリの普及などによる出会いの機会の多様化も増加要因に挙げられています。
2.  保健所の人手不足
新型コロナウイルス感染者への対応に追われた保健所は、一定期間、人手不足により梅毒の検査が減っていました。このため早期発見が遅れ、パートナーなどに感染を広げた可能性もあります。
 
 梅毒に感染していることを気づかずに妊娠すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡が起こったり、梅毒にかかった子が生まれる「先天梅毒」が発生するリスクがあります。出生時に症状が出ないこともありますが、生後数カ月以内に神経や骨などの異常、そして数年後には視覚障害や難聴などの症状が出る場合もあります。
 2023年の先天梅毒は国内で37件、都内で9件と過去最多となりました。2024年6月時点では、国内で14件が報告されています。
 
 梅毒は自然治癒しません。感染初期に発疹が一時消えることから、受診を控えることもあるため潜在患者数は多いと専門家はみています。現在、都内では開所時間の延長、予約サイトの開設、検査予約のリマインドメールの送信、多言語対応など、スムーズな受診を提供する取り組みを進めています。
 保健所では無料・匿名で梅毒の検査を受けられます。大切な人との信頼関係を維持するためにも、少しでも気になることがあれば、早めに受診しましょう。(H. S)
 
参照:日本経済新聞(2024年9月28日付)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO83752530X20C24A9CT0000/
日経電子版(2024年9月28日付)
梅毒に関するQ&A 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/syphilis_qa.html
NHK首都圏ナビ 先天梅毒とは 症状・治療・検査は?漫画でわかる
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20221216b.html