建前
慣れてくると、
一度、許したら二度目も大丈夫だと思われる。
こちら側が、気を使って
険悪な感じにならないようにしたというのに
何度も、何度も、悪びれること無く傷をつけてくる。
嫌なことは、嫌だと言わないと。
「能力がない人はは来ちゃだめなんだけど。」
芸大生がアタシに言った。
「いや、っていうかこの猫につれてこられただけだし。」
「でも、決めたのはあんただろ?ここに来ようと。来ちゃダメなの。わかる?」
イラつく男だ。
「だって、この人色もつくれないんでしょ?なんでここにいるの?あとあと面倒なことになるのは、困るんだけど。」
芸大生の後ろにかくれている、少女が
白衣の上から芸大生をつねった。
芸大生は特にリアクションはしなかったから
普段からよくやられていることなんだろう。
で、やっぱり、あれか。
これは、色を創造できる能力が眼鏡ちゃんにはあると。
「まず、あの帽子。はやく仕留めないと北海道まるっとぐちゃぐちゃにされちゃうよ。全てがレッドになって。憂鬱極まりない。雪も見られなくなっちゃう。困るなぁ。いや困んないか。雪かきは大変だからなぁ。」
レッド。
「はやさか先輩を、倒せば「レッド」が手に入るの?」
めがねちゃんは、小さな声でつぶやいた。
「手に入るというよりは、見えるようになるが正しい。」
猫は、眼鏡ちゃんの足下をぐるぐる回って話した。
見えるようになる。
世界は色がついているけど、見えてない。
それって、根本的にあたしたちの問題じゃないんだろうか。
目に異常があるとかさ、遺伝子的な。
そんな、敵をたおしたからって見えるようになんの?
呪い的な?
「で、パレットのどこが壊れたの?みせて。」
芸大生は、ブローチをパレットと呼んだ。
「パレットって何?」
芸大生は、聞いたような聞かなかったような素振りだけして
「膝の黒。次はこれが見えるようになるね。君、名前は?」
芸大生が、眼鏡ちゃんの前にひざまずいて聞いた。
「私は、ユミ。」
ブローチをうけとって、中を見渡す。
「ふぅん。とにかく自分と戦うつもりなんだ。いいんじゃない?
人生は一生自分との戦いでしかない。だろ?ペペ。」
猫は、しっぽを何度かふった。
あれか。ドリカムですか。これ。
愛してるのサイン的な。
いつまでたっても、私は自分と戦うことから逃げている。
人がすきだということを言い訳にして。
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