血
「ユミちゃん。本気なんだね」
大雪の中外をでると、先輩がいた。
ぬめっとした声が、響く。
「げっ。また、あのダセェ帽子の…。」
「君は、センスのかけらもないね。この世に不満もなにもなさそうだ。」
私を突き動かしてくれた先輩。
ありがとう。
傷つく事で、人は学ぶのね。
必要だった感情と、そうじゃない感情と
それが本気か、本気じゃないか…
「先輩。私はもう逃げないわ。」
一瞬、強い光が私たちをつつんだ。
これだ。私が求めているもの。欲しいもの。
手に入れたい。
「そうだ!ユミ。それでいい!」
ペペがいつもより大きな声で叫んだ。
外は、真っ白だった。
でも、先輩だけの
輪郭がはっきりしないように見えた。
「なぜ、ユミちゃんが僕に惹かれたと思う?
自分にないものがあるように見えたのかな?それはんだろう。個性?オーラ?それとも、権力かな。学校での立ち位置?それとも、君に対する優しさかな?それともビジュアル?」
先輩が、私に近づいてくる。
「必要な人はもう持っているのさ。色なんかとっくに。」
そういうと、先輩は私の顔に手を近づけて耳元でささやいた。
「何がしたいかわからない子には、色は必要なんかないよ」
その瞬間、私の頭の中に
しらない世界が広がった。
ペペが叫んでいるけど、遠くて聞こえない。
しらない女の人とペペがいる。
誰かと、戦っている…?
暗い光がまとわりついてとれない。
息が苦しい。足も動かない。
どうやって、戦えばいいの?
「素質ないなぁ。終わりだよ。さみしいね。やっと“血”を見つけたのに残念だったな。ペペ」
気が遠のいて行く。
なに。これ。わからない。怖い。
手が震えて、力もでない。腰がぬけた。
その瞬間、ブローチの光も消えた。
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