見出し画像

【ディラ研/ザバ研】27枚組聞き倒しマラソン その20:Disc 17

「やって来ましたMSG!」と言う前に、その19:給水タイム3のお詫びから。(あちらにも訂正を追記しました。)

1つ目。2枚組はロブ・フラボーニとフィル・ラモーンが「共同プロデュース」していると書いてしまいました。
正しくは、フィル・ラモーンが録音エンジニアを、ロブ・フラボーニが録音エンジニアとミキシング・エンジニア(ナット・ジェフリーと共に)を担当していた、です。
この件は、またあらためて書くことになると思います。

2つ目。Disc 17以降に収録されているのは計180曲ではなく、計158曲でした。
この件も訂正の追記箇所に書きましたが、公式資料には曲またはディスクごとに録音の種類が記載されていないようなので、各ディスクを聞いたうえで再検証してみたいと思います。

訂正は以上の2点です。申し訳ありませんでした! m(_ _)m

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

先にマディソン・スクエア・ガーデンが合衆国のどの辺にあるかを確認しておきましょう。

ニューヨークの拡大図は給水タイム3に載せましたので、興味のある方は参照いただければ。

ネット検索で各公演の写真もいろいろ見つかってはいるのですが、勝手に転用したらマズそうなものもいっぱいありますので、その中から問題なさげなものを2点ほど紹介します。
まずはWikipediaにあったやつで、これはシカゴ公演のものです。(おそらくツアー初日だと思うのですが。)

この時だけ、ディランはなぜかロビーから借りたエピフォンのギターを弾いています。
ロビーは赤いストラトキャスターを弾いていますが、ギター・マガジン2023年11月号の記事によると、『ラスト・ワルツ』で弾いているのと同一個体とのこと。あちらは赤胴色で黒のピックガードになっていましたが、いろいろ改造を施した時に色も塗り直したようです。

もう1つは、マディソン・スクエア・ガーデン公演と思われる写真を使った楽譜の表紙です。

1966年ツアーと同様、1974年ツアーでもディランはテレキャスターを弾いていることが多いのですが、当時のニューヨークの新聞や同行カメラマンなどが撮った写真を見ると、MSG公演ではストラトキャスターを弾いていたようです。
ブートレッグはかっこよさげな写真を転用しがちなので、収録内容と一致していないことも多く、つい騙されてしまうこともありました。。。

さて、今回のセットリストはこちら。

またもやザ・バンドのセットリストが不明です。筆者の知る限り、オーディエンス録音ではザ・バンドのコーナー部分が全曲欠落しています。

ただ、Les Kokayという方が2009年にまとめた、『BOB DYLAN / THE BAND (a collectors guide to the 74 Tour)』という文書があり、そこにはザ・バンドのみの演奏曲目として、上記リスト内容が記載されています。

根拠はWolfgang's Vaultというサイトなんですが、筆者が確認したところ、そこには31日の分しか見当たりませんでした。

よって、誤記ではないかという疑念がぬぐい切れない感じです。

もう1例。『Before And After The Flood』というブートレッグCDがかつて出ていました。こんなジャケットです。

下には「30・1・1974」と書かれていますが、内容は31日の2回目のライヴでした。意図的な誤記かどうかは分かりません。
特定方法は「Most Likely You Go Your Way ~」のイントロで分かるので簡単です。ザ・バンド全員が入る前、ディランがまだジャカジャカしている時に、ロビーがピッキング・ハーモニクスと呼ばれるテクニックで「ピキ、コンコーン」と2回弾く音が聞こえたら31日の2回目です。(お持ちの方はDisc 19で確認してみてください。0:04から0:06までが該当箇所になります。)

本ディスクは、ディランの4~6曲目も録音なしですか。ここはフル収録してほしかったですが、残念!

音の定位ですが、だいたい以下のとおりです。
● ディランのヴォーカル、ハーモニカ、アコギ、エレキ:全部真ん中
● ザ・バンドのバック・コーラス:真ん中
● ベース:真ん中
● バスドラムとスネア:真ん中
● シンバル類とタム類:左右に振り分け
● ロビーのエレキ:左
● アコピまたはエレピ:右
● オルガンとシンセ・ストリングス:左
これまでの盤では、「Watchtower」などにおけるガースのソロの時、両手で弾く2種類の楽器が左右から聞こえてくるところがカッコよかったりするのですが、まあ仕方ありません。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)

ああ、これですわぁ。これまでとは観衆の声が違います。歓声が背景になって、その上にディランとザ・バンドの演奏が乗っかっていくという、もう検証なんか止めて、ただただじっと聞いていたいです。(笑)
せっかく音がいいので、これまであまり書いてこなかったドラムス(書いても「シンバルがうるさい」が多かった)について、アンコールの方で触れてみたいと思います。

Lay, Lady, Lay

イントロでディランがギターをジャカジャカさせながら「Thank you. It's good to be back. The (?) honor to be here.(ありがとう。戻ってこれて嬉しい。ここに立てて光栄だ。)」と話しています。やはりディランにとってもマディソン・スクエア・ガーデンの公演は特別なんでしょうか。
ロビーがイントロのギター・フレーズを弾いてディランに引き継ぎますが、彼が歌い出さなかったので(余韻を味わいたかった?)、慌てて追加のフレーズを弾いているように聞こえます。
残念ながら、リチャードのエレピは聞こえないような。。。

Just Like Tom Thumb Blues

前回、筆者が歌詞の中にニューヨークが出てくると書いてたのがこれでして、
♪ Going back to New York City(ニューヨーク・シティに戻るよ)
♪ I do believe I’ve had enough(もうこりごりだと思うから)
のところでご当地ノリの大歓声が起きています。

All Along The Watchtower

3曲飛ばされちゃって、次にこの曲。
この曲では、エレピのジュワンジュワンが右からよく聞こえます。
曲が終わると、すぐさまディランが6弦のチューニングを下げる音も聞こえます。これまでは1曲ごとにフェイドインとフェイドアウトする編集でしたが、この盤では全曲うまく繋げてあります。

Ballad Of Hollis Brown

やはりツイン・ドラムスは分離させずに混ぜましたか。
曲が終わると、「Think you. That's Richard Manuel on the drum(s)!(ありがとう。ドラムスはリチャード・マニュエル!)」と紹介しています。う~ん、リヴォンも叩いているはずなのですが。。。

Knockin' On Heaven's Door

マディソン・スクエア・ガーデン公演からは、これだけが2枚組に収録されました。
ロビーの伝記には、これのラフミックスをみんなで聞くシーンがあって、その時にディランが「やっぱりコロンビアに戻りてぇ~」な空気を出していた旨の記述がありますが、残念ながらどうしてこの曲だけが30日から選ばれたのかは教えてくれません。Disc 26のところで考えてみたいと思います。
ザ・バンドのハモリもよく聞こえます。一番上のファルセットがリチャード、2番目の荒っぽい声がリック、次がディランの本メロ、一番下をリヴォンが歌っています。
エレピは。。。聞こえないです。よく聞こえる盤もあれば、マルチトラック録音なのに聞こえない時もあるという。やはりエレピを弾かなかった日もあるということなんでしょうか?
曲が終わると、「Thank you. We'll be right back.(ありがとう。すぐに戻るから。)」と言ってます。結構しゃべってますが、リヴォンが全然覚えてないのは、自分を紹介してくれなかったのでヘソを曲げちゃったのでしょうか?

The Times They Are A-Changin'

この曲に限らず、本公演の曲はどれもちょっとセカセカしたテンポかなぁと思わなくもないですが、ということはダラけた感じはしないということでもあるわけで、好みの問題になりそうです。

Don't Think Twice, It's All Right

演奏は平常運転です。

Gates Of Eden

これはいつもどおり、拍子が感じられません。ギターはその時にディランが歌いたいようなリズムに合わせてストロークするので、一定のビートがないまま進んでいきます。斬新な演奏だとあらためて思います。

Just Like A Woman

演奏は平常運転です。
バングラデシュの映画やサントラで既にお馴染みなのか、人気ナンバーになっているようです。

It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)

これも平常運転ですが、やはり歓声がリアルだと雰囲気も違います。
最後のジャカジャカは短くてピタッと止める方。

Forever Young

イントロの低音で、やはりディランのエレキは6弦をDに下げていることがよく分かります。

Something There Is About You

これが本ツアー最後の演奏になります。以降、ニュー・アルバムからのレギュラー曲は「Forever Young」だけになります(例外として、「Wedding Song」を時々ソロで演奏するのみ)。

Like A Rolling Stone

イントロのGコードを伸ばすところで、リックがしくじってますが、すぐに立ち直ります。
1番のコーラス部分で、リヴォンは普通の16分音符のフィルを叩いていますが、2番からはドゥルルルルルルとマシンガンぶっ放し、いや今はこんなご時世ですから、道路工事のドリルみたいと言い直しますが、とにかくスネアを細かく連打します。
これまでは全部普通のフィルだった気がしますので、このハードな連打はおそらく本盤が初登場だと思うのですが、どうでしょうか?

Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)

Wikipediaのリヴォン・ヘルムの項を見ると、「ドラマーとしての特徴」として、
「一般的なロック・ドラマーと比べて(奏法としての)クラッシュ・シンバルの使用頻度が低く、オープン・ハイハットをやかましく鳴らし続けるといったこともないため、相対的にスネア、タム、キックが目立っている。」
と書かれています。
う~ん、リヴォンが叩いた全曲を聞いて平均化して論じれば、そういう結論になるかもしれませんが、こと1974年ツアーにおいてはそんなことはないように思います。特にファーストやセカンド・アルバムはスローで静かな曲調が多いので、上記の印象になったのかもしれません。しかし、イケイケの時はかなりバシャバシャやっています。

27枚組を聞いておられる方は、Disc 1(1月3日、シカゴ)の最後に入っている「ワッパーリィ、パーリィ、パーリィ」の掛け声入り(懐かしい!)のやつと、Disc 4(1月6日の2回目、フィラデルフィア)の最後と、このディスクの同曲におけるリヴォンのドラミングとを聞き比べてみてください。
Disc 1はとりあえず手持ちのテクニックで対応した感じ、Disc 4では試しにディランが歌っている時にシンバルを鳴らしまくっています。
そして、本ディスクではディランがヴァースの前半部分を歌う時はビートルズの「Get Back」みたいに「スネア、タム、キックが目立っ」た叩き方ですが、ギターとキーボードのリフの時はライド・シンバルをカンカン鳴らし、中間ではハイハットを開いてシーチキシーチキ、♪ 時が教えてくれるさ、誰が落ちぶれ誰が取り残されるのか、の箇所は「どっちなんだい~」とばかりに左右交互にクラッシュ・シンバルをバシーン、バシーンと打ち鳴らす、というワザを聞かせています。
筆者はドラマーではないし、リヴォンがどこまで歌伴プレイに意識的だったかは分からないのですが、毎晩いろいろ試行錯誤しながらディラン&ザ・バンドの歌と演奏にピッタリくる叩き方を見つけようとしているように聞こえるのです。
こういうのこそディスクを連続して聞く醍醐味だと言えるかもしれませんし、もしこのディスクが他のディスクと同程度の音質だったら、リヴォンの工夫にも気づかなかったと思います。フィル&ロブ、いい仕事してます!。

Blowin' In The Wind

もう1曲来ました! 今こうして聞くと、弾き語りにバンドが付いた感じのする印象ですが、ここで出してこられちゃあ現地は盛り上がらざるを得ません。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

4曲目から6曲目までの3曲が発表できないというのは、「As I Went Out One Morning」や「Fourth Time Around」が27枚組に未収録と同じくらい痛恨の極みです。該当3曲を収録したテープが破損してどうしようもなかったのか、諸事情でハナから録音する予定がなかったのかは分かりませんが、もし収録できていたら、1月30日の素材だけで『アナザー・偉大なる復活』または『「洪水の前に」の前に』、いやタイトルはお任せしますが、いい2枚組CDができたような気がします。ザ・バンドのコーナーがないから、元の2枚組と対にはできないですかね?。

いいなと思ったら応援しよう!