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【ディラ研/ザバ研】27枚組聞き倒しマラソン その23:Disc 20

ニューヨーク公演を終え、今度は西への大移動となるのですが、これまでコンスタントに行っていたサウンドボード録音が、不思議なことに1週間以上途切れてしまいます。まるでこれまでのサウンドボード録音がライヴ盤作成のための練習だったかのようです。
そのため、 
● ミシガン州アン・アーバー
● インディアナポリス州ブルーミントン
● ミズーリ州セント・ルイス
● コロラド州デンヴァー
でのライヴ録音は聞くことができません。
つまり、この間にソロ・コーナーでそれぞれ1度だけ披露された「A Hard Rain's A-Gonna Fall」も「Desolation Row」も「Visions Of Johanna」も、あるいはセント・ルイスでレオン・ラッセルがステージに現れてウロウロする(演奏はしなかったらしい)様子も聞くことができないということです。ウキーーーッ!
筆者がわめいたところで、ないものはありません。あきらめてシアトルに向かいましょう。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

まずは位置の確認をば。

ニューヨークから9日も経っているとはいえ、今回は合衆国の左上です。前にも書いたように思いますが、シアトルがあるワシントン州は、首都のワシントンD.C.とは別なのでご注意ください。(首都の方は地図の右側にあります。)
アメリカ横断の距離がピンとこない方は、その1(Disc 1)のシカゴの時、地図の真ん中に日本の本州を入れたものを掲載していますので、参照していただければと思います。
リヴォンの伝記によれば、シアトルのショーでディランは「ありがとう、シアトル。ジミ・ヘンドリックスの故郷!」みたいなことを話したとされています。(リヴォンが覚えていたステージ上のディランのコメントは、これと最終日の挨拶だけ。)
シアトルはDisc 20とDisc 21の2枚ですが、さて、どこに入っているんでしょうか。

今回のセットリストはこちらになります。

2月に入ってから、ソロのコーナーで大きな変化が起きています。
この日の各曲については後述するとして、中でもビックリなのが、弾き語りの白眉だった「It's Alright, Ma ~」がセットリストから外れていることです。
27枚組には未収録なので、つい忘れがちになりますが、ザ・バンドのコーナーでもニューヨークから「I Shall Be Released」が姿を消し、以降は時折披露するだけになりました。

筆者が聞いた限りでは、本盤は全曲マルチトラック録音だと思います。
音の定位は、だいたい以下のとおりです。
● ディランのヴォーカル、ハーモニカ、アコギ、エレキ:全部真ん中
● ザ・バンドのバック・コーラス:真ん中
● ベース:真ん中
● バスドラムとスネア:真ん中
● シンバル類とタム類:微妙に左右に振り分け
● ロビーのエレキ:左
● アコピまたはエレピ:右
● オルガンとシンセ・ストリングス:真ん中
シンバルとタムタムは一応左右に振り分けられているのですが、Disc 17よりも真ん中に寄っているので、意識して聞かないと分からないかもしれません。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)

♪ You say you love me, and you're
♪ Thinkin' of me, but you
♪ Know you could be  WROOOONG!
♪ You say you told me that you
♪ Wanna hold me, but you
♪ Know you're not that  STROOOONG!

ハイ、最後の単語を高い音で怒鳴るヤツ来ました~
実際は録音されていない数日前から始まったのかもしれませんが、27枚組においてはこれが初出になります。
2枚組『偉大なる復活』のLP(まだワーナー・パイオニアの帯が付いていました)を初めて聞いた時に驚いたのが、この怒鳴り声でした。当時、スタジオ・ヴァージョンは『ブロンド・オン・ブロンド』のLPでしか聞けなかったので、どちらを最初に聞いたのか、2枚組を買ったのがいつ頃だったかもまったく覚えていないのですが、とにかくwrongとstrongの怒鳴り声に驚いたことだけは今でもハッキリ覚えているのでした。
話を戻して、曲が終わったら「Thank you. I'm just wakin' up!(ありがとう。ちょうど目が覚めたよ!)」と言ってます。ディランは夜型人間だと思われるので、ジョークなのかいたって真面目なのか、判断が実に難しい。(笑)

Lay, Lady, Lay

こちらも「in your MIND!」「see them SHINE!」のところが高い音になりました。ここ以外もアチコチ上げて怒鳴るので、ちょっとやりすぎに聞こえます。やはり2枚組の感じがちょうどよいです。

Just Like Tom Thumb Blues

そういえば、リチャードの手のケガのことを忘れていましたが、この曲でも普通に歌の合い間のフィルも弾いているし、プレイはできたのでしょう(演奏できないくらいなら、さっさと病院に行ってるはず)。

All Along The Watchtower

またも3曲飛ばされちゃって、次にこの曲。
演奏は平常運転です。ある意味ではジミ・ヘンのトリビュート曲みたいなもんですし、ロビーとガースのソロを披露する場でもあるので、コロコロ変えない方がよさげです。

Ballad Of Hollis Brown

ファンキー路線を突っ走ってます。音頭みたいとか言ってた頃がもう懐かしい。

Knockin' On Heaven's Door

歌と同時に右からエレピが聞こえます。マルチトラック録音にもかかわらず「Lay, Lady, Lay」ではエレピが聞こえないということは、リチャードは一体何を担当しているのでしょうか?

She Belongs To Me

バンド編成の時はライヴ録音の関係なのか、選曲は固定でセカセカと演奏するパターンに陥ってますが、その反動なのかソロ・コーナーではちょくちょく新ネタを下ろします(新ネタといっても1974年ツアーでは初披露というだけですが)。実際は「She Belongs To Me」は6日の1回目が初演で、今回が2度目になります。
スタジオ・ヴァージョンではAのキーで演っているのですが、1966年ツアーでもワイト島ライヴでもCのキーに上げています。今回の声はガラッパチなのに、全体の雰囲気は1966年よりもむしろワイト島っぽく感じるのが不思議です。こう感じるのは筆者だけかもしれませんが。

The Times They Are A-Changin'

1月15日以降、この曲は皆勤賞なんですが、たいていソロ・コーナーの1曲目に演奏されます。しかし、「She Belongs To Me」を演る時だけ2曲目に下がるというのも面白いです。何かジンクスみたいなものがあるのでしょうか?

The Lonesome Death Of Hattie Carroll

お久しぶりです!
なぜ突然この曲をセットリストに戻したのかは想像もつきませんが、ハーモニカ・ソロの終わりやエンディングなどでF→G→Cと弾くところをF→Fm→Cと弾いているのもツアー序盤の時のままでした。

Don't Think Twice, It's All Right

ああ、大きな会場で歌っているんだなあ、という感想です。平常運転。

Wedding Song

今日はいったいどうしたんスか? という選曲ですが、これも4日の2回目で突然カムバックして、短期間ですがレギュラー復帰します。
これもひたすら疾走しているような演奏です。よく大会場では小さな場所で演るような親密さが失われると言いますが、こういうのがそれにあたるのかもしれません。

Forever Young

本格的に歌メロを変え始めました。オリジナルのメロディは低い音も多いので、高い音域をでかい音で歌いたくなったのでしょうか。これもディランあるあるです。
たとえば、1978年のアメリカ・ツアー(これも3年後にボックスもので出す予定なのか? 筆者が買える値段なのか? 今から恐ろしい)で歌った「Is Your Love In Vain?」は、この「Forever Young」よりさらに激しい展開になっていました。

Highway 61 Revisited

ツイン・ドラムスにやさぐれヴォーカル。「Sothing There Is About You」が姿を消したのは残念ですが、「Like A Rolling Stone」の前に演奏する曲としてはこちらの方が似合っていることは否定できないです。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

結局、リチャードは普通にプレイしているようです。「Ballad Of A Thin Man」は確認できませんが、「Ballad Of Hollis Brown」と「Highway 61 Revisited」はツイン・ドラムスのように聞こえますし。
この日は数時間後にもう1ステージこなさにゃいけないわけで、本当に骨折していたのだったら、平常運転なのが逆に怖すぎます。


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