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【ディラ研/ザバ研】27枚組聞き倒しマラソン その25:Disc 22
あっという間に師走が近づいて仕事がバタバタしてきたため、今後は更新ペースが少し落ちそうです。何卒ご容赦のほどを。
年内には完走したいと思っています。
あと、Disc 23の後に最後の給水タイムをとりますが、久しぶりに大桃探偵に登場してもらって、保留になっていたフィル・ラモーンの役割とか、マルチトラック録音のテープについての推理を紹介する予定です。
ライヴの録音について興味のない方には、つまらない話かもしれませんが、こちらも一読いただければ嬉しいです。
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さて、ツアー最後の州であるカリフォルニアまで来ました。
2か所で5回の公演を行ってフィナーレとなります。
まずは、サンフランシスコ近くにあるオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアム、通称オークランド・コロシアムからです。
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ネーミング・ライツの関係でここ25年くらいは名前がコロコロ変わっていたようですが、2024年時点ではオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムに戻っているようです。
ここはサッカーやアメフトもできる野球場なので、キャパも4~5万人は入るはずですが、今回の公演も限界ギリギリまで入れたのか、あるいは他と同じように2万人程度にしたのかは不明です。
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本盤も演奏については「平常運転」の羅列になってしまいますが、この日に関するエピソードが載っている本がいくつかありますので、そちらを紹介しようと思います。
まず1冊目は『ロック・デイズ』(マイケル・ライドン:著、バジリコ:刊)です。この最終章として「9 ボブ・ディラン・オン・ツアー 1974」という文書が載っています。
この本の著者について、筆者は寡聞にして知らなかったのですが、音楽ライター兼演奏家の人で、ビル・グレアム本人からチケットを譲ってもらい、2月11日から14日までの全5公演を見た時のコンサート・レポートになっています。どうやら、リアルタイムでは未発表だった草稿を単行本化にあたって収録したもののようですが、描写のいくつかが「ああ、当時はそうだったんだ」という気分にさせてくれます。
たとえば、1日2公演の1回目をAfternoon Show、2回目をEvening Showと呼ぶことがあるのですが、これを読むと、11日の1回目は午後6時開演予定となっており、「それじゃあ、Evening ShowとNight Showじゃん!」という感じです。(2回目が何時に終わったのかは記載がないのですが、客の入れ替え時間などを考慮すると、深夜12時すぎ頃だったのではないかと。)
ステージに置かれた小道具に関する記述もありますので、引用します。こんな感じ。「花を生けた銀の花瓶がひとつと背の低いキャンドルがいくつか並んでいるテーブル。」
さらに、出典を忘れたので書きませんでしたが、初期のステージでは帽子掛けだとか冷蔵庫(?)が置いてあったというのを読んだ記憶があります。
写真を見ると、メンバー同士の距離も近そうですし、ステージ上で動き回れるスペースがあまりない気がしました。ロビーの足元には絨毯が置いてあるし。みんな彼らのリクエストだったのでしょうか?
話を戻して、今回ディランは黄褐色のテレキャスターを弾いたそうです。ですから、本盤のディランのジャカジャカ・エレキはテレキャスターの音ということになりそうです。
ザ・バンドについても興味深い描写があります。「ギターのロバートソンとベースのダンコはお互いに近くに立ち、ステージの左手にある一本のマイクを使ってときどきいっしょにハモっている。」
これまで聞いてきたディスクでは、筆者にはロビーの声が判別できませんでした(一番よく分かるのがリック)。1本のマイクを分け合ったのならオフにはできないでしょうし、といって、ロビーがわざわざ歌うフリをする必要もないと思うので、ロビーの立ち位置がマイクから遠すぎたか、彼の声が小さくてマイクが拾えなかったということにしておきましょう。
しかし、この本の著者も勘違いしてることが時々あるようで、「Ballad Of A Thin Man」の演奏時にリックがサブのドラムスに向かったとなっていますが、もちろんサブを叩くのはリチャードです。リチャードとリックは本当に間違われることが多くて、前にも書きましたが、リヴォン本でさえリックのヴォーカルをリチャードが歌ったと書いてあったりします。
ちなみに、ツイン・ドラムスだったことを記述しているのはこの曲だけです。(音から判断する限り、いつもどおり「Ballad Of Hollis Brown」と「Highway 61 Revisited」の計3曲がツイン・ドラムスだったと思われます。)
残念なことに、このコンサート・レポートはコンサートの前半部分だけで、ソロ・コーナー以降はイングルウッド公演のものになっています。一方、本盤は「All Along The Watchtower」からスタートするので、本に書かれた曲を本盤で確認できるのは、3曲しかないのが残念です。
この本の続きは、該当する音盤が出てきた時にまた触れようと思います。
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もう1冊は『『ローリング・ストーン』の時代 サブカルチャー帝国をつくった男』(ジョー・ヘイガン:著、河出書房新社:刊)です。主役は創刊者の一人であるヤン・ウェナー。
1969年に彼がディランに行った有名なインタビューがありますが、その後いろいろあって(キャプションなしとはいえ、子役で有名だったテイタム・オニールの友人として、ディランの娘とのツーショット写真を載せたことが大きいと言われているようです)、1974年当時はディランがローリング・ストーン誌に激怒していた頃です。
ただし、1974年ツアーについては、もちろん『ローリング・ストーン』誌も特集を組んで、ベン・フォン・トレスが書いた有名な文章があります。当時、日本語版が出てたこともあり、この記事の翻訳(全訳かは不明)も掲載されていました。
で、その雑誌の親玉であるヤン・ウェナーがこの日のライヴ後に対面したらしいのです。
確かに写真は載せたけど、ディランの娘だとは一言も書いていない、と言い訳するヤンに対して、映画『ドント・ルック・バック』の再現みたいに噛み付くディランが目に浮かぶようです。
ちなみに、ザ・バンドも『ローリング・ストーン』誌の表紙になったことがあるのですが、ロビーの話によるとロビーとヤンはこの時が初対面だったとのこと。
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今回のセットリストはこちらになります。
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その20(Disc 17)でも紹介したLes Kokayの『BOB DYLAN / THE BAND (a collectors guide to the 74 Tour)』には、今回のザ・バンドのセットも全曲不明になっているのですが、前述の『ロック・デイズ』にはザ・バンドの描写もありまして、セットリストが分かっている他の日と選曲が一致することもあり、信用することにしました。今回の後半の記述がありませんので、20~23曲目は不明のままです(おそらく他の日と一緒でしょうけど)。
参考までに、Les Kokayの『BOB DYLAN / THE BAND (a collectors guide to the 74 Tour)』のリンクをもう一度張っておきます。
音質から判断して、全曲マルチトラック録音のように聞こえます。
音の定位は、これまでのマルチトラック録音と同様ですが、筆者が以前「鉄琴みたいな音」と呼んでいたガースのキーボードだけ右から聞こえることがあります。
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All Along The Watchtower
Ballad Of Hollis Brown
Knockin' On Heaven's Door
She Belongs To Me
The Times They Are A-Changin'
ここまで平常運転です。
The Lonesome Death Of Hattie Carroll
1974年ツアーでは今回が最後の演奏になります。
この曲は計5回演奏されたのですが、27枚組に全部収録されています。
とりこぼし曲が多数あることを考えると、面白い偶然です。
最後まで伸縮自在なフリーテンポの演奏でした。
Don't Think Twice, It's All Right
この曲も平常運転です。
Wedding Song
この曲も平常運転ですが、これにて聞き納めです。
Forever Young
スタジオ録音のメロディとはすっかり変わってしまいました(映画『ラスト・ワルツ』ではスタジオ録音のメロディに戻るのですが)。
Highway 61 Revisited
この曲も平常運転です。
Like A Rolling Stone
27枚組のクレジットでは「Incomplete(不完全)」と正直に記されているのですが、エンディングの方はちゃんと最後収録されているので、イントロだと思います。
本盤ではドラムスのフィルでスタートしているように編集されているので、ディランがC→Dm→Emとコードを弾く(次のFでリヴォンが加わる)部分が欠けているのかもしれません。
しかし、いつものタイミングでディランが歌い出さず、全員イントロをもう1回繰り返しています。う~ん、何かあったような気もしますが。。。
Most Likely You Go Your Way (And I’ll Go Mine)
なぜか分かりませんが、この曲の出だしの音程がうまくとれないことがよくあって、今回もメロディを変えて対応しています。
Blowin' In The Wind
毎回微妙にノリが変わるこの曲ですが、9日2回目の演奏とかなり似た、イーヴン(均等)ではない気持ち弾んだリズムになっているように思います。
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「平常運転」が増え続けています。
セットリストは置いといて、録音されたサプライズはまだ残っているのでしょうか?