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【ディラ研/ザバ研】27枚組聞き倒しマラソン その2:Disc 2
シカゴ・スタジアムについて、先ほどその1の記事を少し訂正しました。
最初にアップした時は日本語版Wikipediaの記載を元に「キャパは18,000人くらい」と書きましたが、これはバスケットやアイスホッケーの試合の話。コンサートならグラウンド内にも観客を入れることができるので、実際はもっと多いのでは?と思って調べ直しました。
なぜか日本語版には載ってなかったのですが、英語版Wikipediaの方には「(中略)maximum seating capacity of 26,000.」との記載があるので、最大で26,000人分の座席が準備できるようです。
ステージの大きさや形にもよると思うので、修正版では控えめに2万人強としておきました。
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さて、2日目のセットリストは以下のとおりです。
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披露されたのは全28曲で、そのうちザ・バンドのみによる10曲と、2、13、25~27のディラン曲がなく、残りの13曲がDisc 2に収録されています。
未収録が固まっているのは、録音テープを交換し忘れてたなどウッカリ系の理由も推測できますが、2曲目の「Lay, Lady, Lay」はどうしたことか?
もし年末に出がらしが発表されれば、答えが見つかるかもしれません。(そこにも含まれていなければ、少なくともソニー側では存在を確認できていないか、持っていても破損または消去などが原因で発表できるレベルにない状態、ということになりそうです。)
この音もまたサウンドボード録音ですが、前日と音が全然違う!
楽器の音が振り分けられたステレオ録音になっています。前日のが本物のモノラルかは微妙ですが、歌も楽器もほぼ真ん中で固まっていた印象なので、ビックリです。
これは明らかに会場に流すためのミックス音とは違います。
その0の補足の記事で「興味ある人だけ読んでください」と断り書きを入れましたが、あれだけ頑張って書いた(画伯による図も!)録音方法の説明も、これを聞くと全然的外れなのでは、という気持ちになってきました。(汗)
27枚組を聞き終えてから、あらためて推理し直すことにしましょう。
音の定位はだいたいこんな感じでしょうか。懲りずに図を描いてみました。
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ついでに、『ラスト・ワルツ』やいくつかの写真から推測したメンバーの立ち位置は以下のとおり。
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ほとんどの写真は横とか斜めから撮影されたものなので、位置関係がよく分からないところもあります。上図はかなり近いところまでいってると自負していますが、あくまで参考ということで。
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Hero Blues
出ました、リヴォンとリチャードによるツイン・ドラムス!
話には聞いていましたが、2枚組や『ラスト・ワルツ』を聞いてもよく分からず(少なくとも1つのドラムセットみたいに聞こえるよう混ぜられている)、Disc 1の初日も同様だったので、ずっとモヤモヤしてました。この定位だとツイン・ドラムスだというのがハッキリ分かります。
真ん中がリヴォンで、右側寄りがリチャードでしょうね。これは自信あり!
しかし、リチャードの演奏が全てちゃんと録音されているかは不明です。これはあくまでライヴ映えを意図した演出で、音が観客にどこまで届いていたかは重視していなかっただろうと筆者は考えるからです。
(もう少し言うと、リチャードには好きなことをやらせてあげようというメンバーの温情?みたいなものがあったかもしれません。彼の調子によってはハチャメチャな演奏になる可能性もあったわけで、メンバーがライヴ中のリチャードの様子を見て安堵しているのがリヴォンの伝記などからも伝わってくるからです。)
残念ながら、「Hero Blues」の演奏はこの日で最後になりました。
Just Like Tom Thumb Blues
この曲は初日には演奏されませんでしたが、1966年ツアーのレギュラー演目だったので、メンバーも手慣れたものです。あの時はいなかったリヴォンも問題なし。ですが、ピアノの音が聞こえないのはどうしたことでしょうか?
その代わり、ロビーが大活躍でディランの歌に都度合いの手を入れてます。ソロもとっているので、音質と楽器の音量バランスのこともあって若干「ロビー、しゃべりすぎ」な感じを抱いてしまいました。すまん。
とはいえ、この曲は演者たちにはしっくりきたようで、以降は欠かさず演奏されるようになります。
そういえば、ベースの音も変わりました? リックの気分なのか、あるいはベースは同じで単なる筆者の思い過ごしなのは不明です。
It Ain't Me, Babe
やっとピアノが聞こえてきて一安心。
エンディングはまだ初日と同じパターンです。
Tough Mama
イントロでディランのギターが先走ってしまいました。リックが反応して「ボン」と鳴らした以外は誰も合わせられません。全員同時スタートなので、初日は誰かがカウント出してたみたいですが、この日はディランがいきなり勝手に弾き始めてしまったのでしょうか。(ちなみに、この時ディランのエレキとハーモニカが同時に聞こえるので、この曲を演る際はハーモニカを手で持たず、ハーモニカホルダにセットしていると思います。)
ザ・バンドはあわてず騒がず2回目から入ります。出だしこそアレでしたが、軌道に乗るとエンジン全開で、特にリヴォンのドラムは列車が走るかのようなビートです。
また、音が小さめなので目立ちませんが、この曲におけるガースの伴奏は特に好きです。彼も決めた型を持たず、音色もフレーズもアドリブでバンバン変える(まあ、曲によりますが)人のようで、ロック界の歌伴キーボードでここまでフリーダムな人といったら、他にはエルヴィス・コステロとやっているスティーヴ・ナイーヴ(特にアトラクション時代の1984年ツアー)くらいしか思い浮かびません。
リチャードはもちろんピアノを弾いています。ブギー!
Ballad Of A Thin Man
1曲目に続いてまたツイン・ドラムスです。初日は気づきませんでしたが、ひょっとしたらそちらでもやってる曲があったかもしれないので、後日聞き直してみます。
ツイン・ドラムスはリチャードの出番を増やす作戦かもしれませんが、気になる点が二つ。
一つ目がリチャードの移動についてです。上図でお分かりの通り(筆者の推理が正しければ、ですが)、ピアノからサブのドラムスまで当然自分で歩いて往復しないといけません。
舞台は暗く、足元にはケーブル類がいっぱい、本人はヨロヨロしてる(失礼!)ので、急いだせいでウッカリ転んだりすると、ドラム席に座ったリチャードの顔と長い髪が流血で真っ赤っか、ということにもなりかねません。「Lay, Lady, Lay」などピアノが聞こえない曲があるのは、リチャードの移動や準備のため、という理由も考えられそうです。曲によっては移動の際に通るであろうガースの横に立って、使わないキーボードを弾くということもできるか?
二つ目がドラムスの腕前について。1曲目は景気のいいロックなのでまだしも、こちらはゆっくりテンポの3連なので、やはりスネア打ちやフィルで二人がずれてしまうのが丸わかりです。だが、それもいい。筆者のようなファンにとっては「アバタもエクボ」ってやつです。
元々発表する予定のなかった音に対して50年後にこうして揚げ足をとるのもどうかと思わなくはないのですが、一応ちゃんとお金を払って購入したこともあり、気づいた点は正直にコメントするつもりでいます。
もちろん、ライヴ会場にいるつもりになって、ただただ聞きまくる(時には踊る)のも、また一局です。こんな駄文は余計なことを考えるだけなので、読まない方がいいとさえ思います。その点は何卒ご了承をお願いしたいところです。
話がそれてしまいましたが、「Ballad Of A Thin Man」のリフの元ネタであるレイ・チャールズの曲については、また書くことが少ない時にでも。
Leopard-Skin Pill-Box Hat
初日よりこなれてきた感があります。ブルース進行だし、1966年にさんざん演ってるしで、安定してます。
ピアノはしっかり聞こえます。
この調子だとダラダラ長文になるだけなので、驚きが少ないものは端折って先へ進みましょう。
Knockin' On Heaven's Door
耳タコ気味のこの曲の、これがライヴ初演とは感慨深いものがあります。
(クリス・クリストファーソンのご冥福を)
ちゃんとしたイントロもなくスタート。ガースのキーボード、ロウリー製だと思いますが、久しぶりにオルガンらしい音を鳴らしています。
終わり方も何かしょぼいので、イントロとアウトロが今後どうなっていくのか、マラソンの楽しみがまた一つ増えました。
The Times They Are A-Changin'
ソロコーナーの1曲目、あわてて録音ボタンを押したかのように頭が切れているみたいですが、とにかく収録されてよかった。
途中、海賊盤みたいに音質が変わったりして少し乱れているようです。まあ、筆者はその手の音に耳慣れしている人なので、普通に聞いてしまいます。
他の曲(たとえば「Hattie Carroll」)みたいにいくつかコードを違うものにしたり、ベース音の動きが分かるような弾き方に変更していますが、当時のマイ・ブームだったのでしょうか。
Love Minus Zero / No Limit
「ラヴ」であろうが「ヘイト」であろうが、無限大で割れば答えはゼロではないのか?という筆者のツッコミはさておき、頭でギターの6弦を下げているのが聞こえますので、1965年と同じくドロップC(低い方からC-A-D-G-B-E)にしてカポは付けずに弾いているようです。
相変わらず自分でチューニングしてたのですね。この先が心配です。(汗)
The Lonesome Death Of Hattie Carroll
初日より歌い方が穏やかになった気がします。
フリーなテンポなど展開はあまり変わらないのですが、「おっ?」と思ったのがハーモニカ・ソロ。ここまで2枚組に出てくるような超絶演奏(早弾きならぬ、早吹き吸い)はなく、どれも震わせるようなトーンのソロだったのですが、ここでその片鱗が見え隠れしています。ただ、吹き吸いより首を振って隣の穴に素早くスライドさせるワザが多めのように聞こえます。筆者はハーモニカはほとんど吹かないので、その辺の詳しいテクニックはよく分かりません。
最後も間違えずに歌い切りました。
Nobody ‘Cept You
筆者的には初日の演奏が良すぎて、ちょっと分が悪いですが、比べなければこれもいいです。
会場で聞いた人の中には何となく覚えていて、アルバムに収録されておらず「え~?」と思った方もいたのではないでしょうか?
It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)
この曲だけは、1978年のバンドアレンジ以外に驚くような変更やハプニングの類を聞いたことがありません。
毎回同じように歌い、同じ箇所で歓声が上がり、という感じです。
1974年はリクエストに断り切れず、お仕事モードだったのか?
いやいや、1986年ツアーや1992年のボブフェストでのソロ演奏で崩さず歌っているので、ディランとしても変にいじくらずに歌いたいという珍しい曲なんでしょう。
Maggie's Farm
後半の盛り上がるところが全部すっとばされて、いきなりアンコール曲になります。
筆者の推理どおりなのか、はたまた別の理由か、とにかく「Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)」を引っ込めて、代わりに演奏されたのがこの曲。
1969年のワイト島でも演ってますが、あの時はリヴォンとその仲間たちによる「ノ~モ~」コーラスがよかったです。ディランと一緒に歌うことはあっても、掛け合いで歌う曲が少ないのが残念ですが、この曲もまた掛け声なしのアレンジに変えてしまいました。
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筆者が選ぶ本日の名演賞は、「Tough Mama」です!
最後におまけとして、参考資料の音を一つ貼り付けておきます。
またまたタイトルは書きませんが、その1で書いたうろ覚え曲が翌日はどうだったかが分かります。