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【ディラ研/ザバ研】27枚組聞き倒しマラソン その10:Disc 9

イーグルス「ホテル・カリフォルニア」のプロモーション・ビデオをご覧になった方も多いことと思います。ライヴ映像で、後半にドン・フェルダーとジョー・ウォルシュがニラメッコしながらツイン・リードを弾くアレです。(ジョー先生の百面相が素敵だ。)
その出だしは背景のホテルだけがボンヤリと映し出されて、あとは真っ暗なんですが、やがて下部に文字がタイプライターのように1文字ずつ表示されていきます。えーい、百聞は一見に如かず、キャプチャーしちゃえ。

このキャピタル・センターというのがDisc 9のライヴ会場なのですが、ちょっと引っ掛かったことがあります。文字部分を拡大したのが下図。

Centerの綴りがイギリス式なのは無視してください。Theaterもそうですが、イギリス綴りにしている建物時折見かけます。
次に赤で下線を引いた部分のうち、後ろのMD=Maryland=メリーランド州です。先に地図を出しますね。

問題はキャピタル・センターがあるのはラーゴなの?ランドーヴァーなの?という点です。
さらに、Disc 9の1曲目「Most Likely You Go Your Way ~」が終わった後にディランが発する「地名を変えただけやん」コメントが疑問をややこしくしています。
「Thank you. It's great to be back in D.C.(ありがとう。コロンビア特別区に戻ってこれて最高だ。)」
しかし、最後のなら筆者にも分かりそうです。D.C.とはホワイトハウスがある首都ワシントンのことですが、シアトルがある西海岸北部のワシントン州と区別するため「D.C.」と呼んでいるのだと思います。会場からホワイトハウスまでわずか10数キロなので、千葉県にある「東京」ディズニーランドと似た感覚なのかもしれません。ムッとした地元客もいそうですが。。。
問題のラーゴかランドーヴァーか、についてですが、筆者はラーゴで統一します。時間の関係で検証は中止になりましたので、興味のある方は各自で調べていただくということで、先に進みます。(汗)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

さて、今回のセットリストはこちらになります。

分かってはいましたが、だんだん代わり映えしないセトリになってます。
加えて、今日で最後になる曲と、しばらく出番なしになる曲がありますね。
そういえば、12日と14日2回目公演にソロ・コーナーで「Blowing' In The Wind」を演奏しているのですが、サウンドボード録音がないため、どちらも見事に未収録となっております。

音の定位ですが、ドラムス&ベースは真ん中、ロビーのエレキが左、ガースのキーボードが左右、ディランのエレキとリチャードのアコピが右となっています。ディランのハーモニカ&ヴォーカルは中央なんですが、ディランのアコギが少し右寄りなのに気づきました。これは今までのディスクでもそうだった可能性があります。ディランのエレキもガースのオルガンより少し真ん中に寄っている感じです。
今回、リチャードのエレピ以外はキーボードがよく聞こえるミックスになっていますので、ガースのファンにはオススメできるかと。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)

左側で時々聞こえるガースの鉄琴みたいな音がキンキン響いてうるさいです。ロビーがソロを弾いている時も鳴らしているので、ソロが聞こえにくいのが難点。音量調整はスタッフの仕事なので、ガースは悪くないのですが。

Lay, Lady, Lay

やはり、リチャード不在でしょうか。

Just Like Tom Thumb Blues

アコピの音は大きいので、ガースのオルガンと一緒に鳴っていても聞き分けやすいのではないでしょうか。また、その最中に左からシンセ・ストリングスや例の鉄琴音が聞こえるので、ガースが両手で弾いていることがよく分かります。
今回のボックスはあくまでディランが主役なので、ザ・バンドの写真が少ないのが残念! ディランのソロ・セットの写真もほとんどないのですが、これはディランが嫌がって禁止した可能性が高そうです。Disc 27のCD入れになっている、お辞儀しながら右手でアコギをつかみ左手を挙げている写真くらいしか見つかりません。
バリー・ファインスタイン以外に、少なくとももう一人、ジョン・シーリーという人もライヴ写真を撮っているのですが、条件が合わなかったのか27枚組には採用されませんでした。ガースの機材がよく分かる彼の写真があります。

正面にある2段式の豪華なキーボードがロウリー社のオルガンです。
ガースはハモンド使いではなく、これを愛用していました。(ロウリー社は1990年前後にあの河合楽器に買収されます。)
改造してピッチベンドをくっつけたという話があります。自分でやったのか分かりませんが、確かに「Chest Fever」のイントロのオルガン・ソロの終わりでギュワーンと音が下がっています。(ジミ・ヘンやエディ・ヴァン・ヘイレンがアームでやるのと似た効果が得られます。)
なお、左手にある鍵盤はシンセ・ストリングスだと思われます。
鉄琴の音はどうやって出してたんだろ? このロウリー・オルガンの2段式鍵盤が別々に出力できるのなら(上段が左で下段が右とか)、鉄琴音もこれで弾いてる可能性が高いです。

【追記 2024年10月20日付】

上の写真で左手にある鍵盤はシンセ・ストリングスではなく、どうやらクラヴィネットっぽいです。

これがクラヴィネット

上の写真と比べてみて、どうでしょうか?
クラヴィネットはスティーヴィー・ワンダーの「Superstition」におけるエレキ・ハープシコードみたいな音が有名ですが、DVD『メイキング・オブ・ザ・バンド』によると、「Up On Cripple Creek」のビヨンビヨンいう音(よく「Jew's harpの音」と評されます)をこれで出しているようです。
で、例のうるさい鉄琴の音の正体もこれなのでは?という気がしてきました。筆者はロウリー・オルガンやクラヴィネットを所有してガンガン弾きまくっている人ではないので、観察と想像だけで書いてます。ここからは機材専門家の方におまかせしたいな、という気持ちです。
あと、シンセ・ストリングスはどこに置いてたのだろう?という疑問も残っています。オルガンと同時に両手弾きできる位置にないといけませんのでね。

【訂正と追記 ここまで】

I Don’t Believe You (She Acts Like We Never Have Met)

この曲は本ツアー最後になります。だからというわけでもないでしょうが、久しぶりにディランのリズム・ギターでスタートします。
本ツアーでは出来不出来が激しく、筆者から偉そうに「呪い」とか言われるほどでしたが、以降も時々演奏されますので(『コンプリート武道館』にも無事収録されました)、多くの70年代ソングとは違って生き永らえた曲だと思います。
で、この曲に関する余談を一つ。
フェイセズがBBCのボックスものを出すという話がありまして、筆者はもう買う元気がないのですが、ディランもフェイセズも聞く方でしたら、この曲のイントロが彼らの「Cindy Incidently(いとしのシンディ)」に似ているのは偶然?と思われるのではないかと思います。
「Cindy Incidently」はロッド・スチュアート、ロン・ウッド、イアン・マクレガンの共作で1972年録音とのことなので、判定が微妙です。もし、リフを拝借したのなら、可能性としては
・1966年公演を客席で見て、それを記憶して家で練習した
・1966年公演のブートレッグ(5月17日のヤツ)を聞いた
・その他(ザ・バンドと仲良くなって教わった、など)
あたりでしょうか?
ちなみに、フェイセズの面々は1974年2月にオーストラリア、香港を回ってから初来日を果たしていますので、ディラン&ザ・バンドの1974年ツアーは見る機会がなかったと思われます。

It Ain't Me, Babe

ん? Disc 8より若干テンポが遅くなったような。
ここでも、筆者にとってはリチャードとガースが聞きどころです。
2番が終わったところで、リチャードが油断してエンディングに行きかけたのを修正しています。ロックバンドの各楽器音がよく聞こえるというのも演者にとっては困りものかも。

Ballad Of A Thin Man

途中、左から「ポワワワン」という音が聞こえますが、これもガースが出しています。
リチャードはもうこの曲では叩いていない気がしてきました。いつだったか、3曲叩いたと思われる日がありましたが、その時に「なあ、ツイン・ドラムスは1ステージ1曲にしとこうや」とでも言われたのかもしれません。

All Along The Watchtower

この曲ではリチャードはエレピを弾いていると思うのですが、ツアー初期と同様、またエレピの音が筆者には聞こえなくなってしまいました。
2番と3番の間にガースのソロがあるので、そこで右側に集中して聞いてみたのですが。。。分からず。
エンディングでA(メジャー)コードがキマらず、ちょっとしまらない終わり方になっています。
その後が謎の怪奇現象なのですが、ディランがジャカジャカとエレキをかき鳴らし終えた後、さらに右の端から一瞬ジャカジャカと聞こえるのです。なんだコレ?

Ballad Of Hollis Brown

これはツイン・ドラムスだと思います。ちょっと音頭臭が抜けてきましたかね。

Knockin' On Heaven's Door

2枚組に近づきつつある感じはしますが、それ以外特にコメントはないです。

The Times They Are A-Changin'

アコギの音が筆者好みでいいです。初日の投稿だったか、メタリックなサウンドは元からみたいなことを書きましたが、全然違いましたね。
この日のソロ・セットを聞いてから2枚組のソロ・セットを聞くと、アコギもディランの声もものすごく違います。最後まで聞いてからあらためて書くつもりですが、レコード化にあたってフィル・ラモーンがどれだけ原音をいじったのか。。。
話を戻して、途中またしても事件が起こります。1:36のところでバンッという音が。どうも1弦が切れてチューニングが乱れたようで、まさしくDisc 7収録「Gates Of Eden」の再来です。あの時はチューニングを直して続きを歌いましたが、今回はもうそのままで突っ走ります。

Don't Think Twice, It's All Right

27枚組は曲間がほとんど切られているので、上記の顛末が不明ですが、おそらくギターを交換したのではないかと思います。

Wedding Song

次の出番はDisc 20です、という以外、特にコメントなしです。

Just Like A Woman

「今日からイントロは4拍子でいくから」みたいなノリで、リズムが変わってしまいました。もちろん途中で1拍増えたり部分的にテンポを変わったりして、一人プログレ状態なのは通常運転です。
曲が終わるや否や、6弦をDに下げる音が聞こえます。

It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)

これも特にコメントはないです。というか、ここから最後の曲までは、これまで書いたこと以外に特筆することは起きてません。

Forever Young

これも特にコメントはないです。

Something There Is About You

これも特にコメントはないです。

Like A Rolling Stone

これも特にコメントはないです。

Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)

これも特にコメントはないです。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

筆者が選ぶ本日の名演賞は、該当なしです。

「どのディスク聞いても変わり映えしない」とブーブー言うのも、一種のカスハラでは?みたいな気分になってきました。1970年代のミュージシャンであれば、各地に行って同じ品質の演奏を提供するというのが普通になっているわけで、ディランやザ・バンドがやっていたことはジャズやジャム・バンドと重なる部分もありそうですが、やはり根本的に方向性が違うのだと思います。どっちかというと、楽譜や文字が読めなかった昔のフォークやブルースの人たちのスタンスに共通するものを感じます。今更な意見ですが。。。
あと、やはり短期間で次々ディスクを聞いていくことによる疲労でしょうか?今、チラッと「ランナーズ・ハイ」という言葉が浮かびましたが、変なことを考えるのは止めにして、いったん給水します。


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