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大企業から始めるGIFTエコノミー2022!

【イベントレポート】大企業から始めるGIFTエコノミー2022!
〜2022年わたしはどんなGIFTが出来る?!〜

大企業未来共創活動態”GIFT”では、2ヶ月に1回のギャザリングイベント、One Hundred GIFTsを開催しています。
これまで15回、延べ1230人にご参加いただきました。
*過去の開催内容は、こちら

1月26日に開催された2022年、第1弾のテーマは
「大企業から始めるGIFTエコノミー2022!」
 今回は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司先生と、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 人事総務本部長の島田由香さんの2人をゲストとしてお招きし、当日は100人のみなさんにご参加いただきました!

前半はゲストのお二人によるトークを通じて私たちがこれから目指していきたい社会、そして組織・個人の在り方について考えを深め、後半は参加者で対話を行いました。
(今回の告知はこちら

【2022のGIFTコミュニティの活動について】

 初めにGIFT発起人の岩波から、2022年の”GIFT”コミュニティをどうするかについてお話ししました。

GIFT発起人・岩波

 場の研究所が提唱する、「場の”いのち”を生む」という考え方があります。行き過ぎた資本主義の中で奪い合いをしていると、場のいのちがなくなる、生命力がなくなっていく。

 一方で、"与贈"して一人ひとりが何かをGIFTしている状態だと生命力が上がって、場に “いのち”が宿りやがて各々にとっての居場所になる。

また、山口周さんが、著書『ビジネスの未来』(プレジデント社)の最後で挙げた3つのイニシアティブのうち、「真にやりたいことを見つけ、取り組む」というところが、ものすごく大事だと思います。先ずは自分がほんとうにやりたいことをやってみる。そして自分の時間の10~20%くらいをGIFT活動に使うことが、社会にとっても意味のあることにつながっていくと思います。

 組織のための個から、"個のための組織"へシフトしていく転換期にある中で、私たち”GIFT”では、個人を主体としながら、社員の活動を支援することで企業としても社会に対するGIFT 的活動を広げていくことができる体制を2022年は作っていきたいと思っています。

【ゲストの2021やってきたこと、2022やっていきたいことについて】

●前野先生

 自分の新著『ディストピア禍の新・幸福論』(2022 年 5 月)の中で、「心があるかないかというと、ない」「私があるかないかというと、ない」ということを書きました。便宜上、東洋と西洋に分けると、西洋はインディビジュアリズム(individualism、個人主義、自立して行動する主 義)、東アジアを中心とする東洋はコレクティビズム(collectivism、集団主義、集団を重視し て行動する主義)の傾向が強い社会であると言えます。ひと昔前には、インディビジュアリスト の欧米が進んだ考えで、コレクティビストであるアジアの人たちは遅れているという価値観がありましたが、文化心理学という学問はその偏見にチャレンジしています。

 自分というものの境界線も実は曖昧。フィジーやサモアといったポリネシアの国々では 「私」、「私たち」という言葉の区別が存在しなかったそうです。我々はインディビジュアリズム の影響を受けているから私、私たちを分ける。ネイティブアメリカンや、アイヌの人たちも人間と自然を分けなかった。自他非分離で、自分と他人、自然と人間、神様と自分の区別は曖昧 で、我々人間は全体の一部として生きている、と考えても全く問題ないと思います。本当はコレクティビズムを拡張して、地球全体、人間全体が仲間というか、自分自身であると考えることもできるのではないでしょうか。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授・前野隆司先生

 岩波さんの話にもあったように、行き過ぎた資本主義の中で、見失っているものがあるので はないかと思います。以前、共感通貨の実験として「利益最大化」または「感謝最大化」を目指してケーキを売り買いするビジネスゲームを作ったことがあります。最初の予想では、感謝最大化の方がこじんまりはするけどみんなが幸せになるのではないかと思っていました。

実際、最初に利益最大化のゲームを行った際には、買い占めなど世界恐慌のような市場の硬直化が起こり、ゲームなのに一部ではギスギスして険悪な雰囲気になる人も現れました。
結局どの店のケーキも大量に売れ残りました。

では、後で行った、感謝最大化のゲームではどうなったか?

頼んでもいないのに、ケーキがカラフルでクリエイティブなものになりました。タダも同然の値段で「持って行って!」と売る人も出た。感謝の手紙を付ける人も出た。で、あっという間に売れ切れた。みんなすごく幸せそうで、しかもどのお店も利益が出たんです。感謝最大化を後半にしたからケンカ別れせず済んで良かったぁ、とみんな言ってました(笑)

資本主義という制度の中でも、みんながマインドを変えて感謝し GIVE するようになれば、共感資本は回るんだぁ、というのが実感でした。eumo は、共感通貨を使って感謝最大化を リアルでやっている事例だとと言えますよね。

皆が一体化していけば世の中うまくいく。GIVE して、愛を得る(TAKE)することで円満になると言えます。仏教用語で「自利利他円満」という言葉があります。自利が TAKE で、利他が GIVE とすると、自利利他を分けるとインディビジュアリストな考え方になってしまう。GIVE をしながら愛を TAKE して、みなさんがやっている企業活動を感謝最大化ゲームに変えてやっていけば、世の中うまくいく。そんなマインドチェンジを 2022年はやっていければと思います。

●島田さん

 前野先生の最後のお話にあった TAKE は、RECIVE(受け取る)ということだと思います。どうぞと差し出されたものを遠慮して受け取らない人が、すごく多いと思います。配慮と謙虚で あることは大事だけど、2022 年は簡単にできる一歩として、遠慮は辞めたらどうでしょうか?

 ありがたくうれしく受け取ること(RECIVE)を自分に許すと、GIVE の言葉の意味も変わってくる。(GIVEと言うよりも)SHARE と言えるかもしれない、結局みんな自分のもっているものしか与えられないから。GIVEって資本主義的に上から与える”GIVE&TAKE”という感じがしますが、”SHARE&RECEIVE”の方がもしからしたらしっくりくるのかもしれない。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 人事総務本部長の島田由香さん

 山口周さんの言う「本当にやりたいことをやる」というのを私が心に決めたのは、去年の夏で した。きっかけは、健康診断で要精密検査っていう結果がでて。それまで超健康体だったから、自分の体に本気で向き合いました。精密検査で問題はなかったのですが、もっと体を休め るように言われました。そして、今までなかったことが起こったということは、ストレスや、お酒、 コーヒー、紅茶なども原因と言われました。それらの可能性のある要素を 2 ヶ月気をつけてみました。その後、健康体になったつもりが・・・4 月にギックリ腰になって息が止まりかけたの と、夏に4連休中ずっと頭痛があって死を感じる程でした。

 でもその時、「今死ねるわけないじゃん!!まだあれもやってない!」ってなって、私が本当にやりたい4つのことに、時間とエネルギーを注ぐって決めたんです。

 一つ目は働き方。日本人がもっている変な思い込みを変えていきたい。満員電車に乗って ストレスを抱えたり、長く務めるのが偉いだとか、上司のことを気にし過ぎていたり。私だけ、 ユニリーバだけがやっていても日本全体が変わるという点では意味がないと思っています。

 副業も当然 OK だし、雇用は無くなると思っているくらいだから、個人がもっている個性を会 社以外のあらゆる場でGIFTしてほしいです。雇われて用いられる雇用から、「この私を必要と してるでしょ!」という「個要」に変わっていくと思っています。

 二つ目は人材育成。それぞれがもっている強みは魔法だと思っています。自分なりのやり方で、そして仲間と連携して、人材を育んでいきたい。

 三つ目は地域活性。日本を地域から盛り上げていきたいんです。

 そして四つ目が、Well-being。前野先生が冒頭で 1 月 4 日 日経新聞で、2022 年は Well-being 元年と言われた通り。今まで挙げたこと全てに関係するので、自分の中でも大事なテーマです。

 いろんなことがGIVENで変えられないと思わないで、必ず変えられると思ってほしい。私は忙しいという言葉を使わないようにしています、心を無くすと書くから。いろんな方からお気遣いで「お忙しい中ありがとうございます」と言われますが、「忙しくないです」と答えます。スケ ジュールはバリバリに詰まっているけれど、心は無くしてないから。じゃあ、心は何なのか? 前野先生の話にも心のことがありましたが、心はきっと希望そのもの、感じているそのもの。 私も人間なのでちょっとした言動にエゴが出ることもありますが、そんな時はハッと気づいて 自分をメタ認知するようにしています。

2022 年は、「道を歩く、風を感じながら」が私のキーワードです。Team WAA!(WAA: Work from Anytime Anywhere)の 1 月のセッションでもこのキーワードを語って、しっくりきています。歩くと言う字は少し止まるって書くから、止まってもいいんだよって。みちにかけ て、「道」と「未知」を歩いていこうと思っています!

【パネルトーク〜大企業から始める GIFT エコノミー2022!!〜】

 前野先生、島田さん、岩波の3名が参加者からチャットで寄せられた質問に答える形でパネルトークを行いました。

【質問】 拡張家族は社会の変化に仕組みが対応できなくなった閉塞感あふれる日本を救うことができますか?

 前野先生:幸福学から見ると、個人個人が孤立しているよりも、家族的なつながりの方が幸 せです。したがって、信頼しあえるつながりが拡張していくと、幸せなコミュニティになるといえるでしょう。そもそも、36 億年前には、生物はみんなバクテリアだった。我々はそこから進化 してきたわけですから、動物も植物もみんな兄弟で、地球はみんな家族です。この考え方が広がれば、みんな幸せになれます。つまり、生きとし生けるものは拡張家族なんですよ。

島田さん:拡張家族という考え方に、私も大賛成です。子どもが小さかった時、毎週来てくださる親戚ではないおばあちゃんがいて、息子もその方のご飯が本当に好きで「おばあちゃん」と 呼んでいて、私と息子にとっての拡張家族でした。一方で現実は、マンションに住んでいて隣 の人のことも全然わからないですよね。私が地域に魅力を感じるのは、本当につながりを感 じさせてくれるところだから。例えば、私にも「おかえり」と言ってくれたり、道を歩いているだけ で声をかけてくれたり、採れた玉ねぎを送ってくれたり。縁やゆかりがない土地でも、つながりは作れるんだなって。和歌山県・白浜や石川県・能登町で関わっている人たちは、私にとって拡張家族と言えるんじゃないかって思います。

岩波さん:僕は人間的成長が重要だと思っていて、真善美でよく説明するのですが、そのうち 善と言うのは社会的な仲間の範囲のことです。家族的なものとして受け入れている仲間の範 囲が広いと、“共通善”で善が広いイメージ。その範囲が狭いと、“独善”で善が狭く、例えば家族じゃないと分けてしまう。顔が見えない人に対して人間は残酷になれたりもするので、拡張 家族的な概念もものすごく重要だと思います。家族的なつながりを作って、広げられる人が増 えていけばいく程、良い人でいられる。知っている人には人は何かしてあげたいと思うものなんです

島田さん:前野先生がいろんな観点から「幸せ」を研究されていて、友達が多い人の方が幸せ、と言われていることにもつながりますよね!

岩波さん:しかも友達の数の多さではなく、多様な友達がいることがむしろ幸せと言われていました。さっきの許容できる範囲が広がということですよね?!

前野先生:究極には、許容範囲が 100%になると良いんだと思います。怖い人、嫌な人がい なくなると良い。競争して戦うのではなく、共に切磋琢磨して、自由に個性を発揮して、信頼し合う。100%の信頼があれば、ベーシックインカムがなくても社会が成り立つはずです。

岩波さん:お金を介在させなくてできるやり取りがたくさんあります。都会はお金が介在していろんなものが回っている、一方で地域は介在しないものも多い。どっちが良い悪いではなく て、バランス(比率)の問題だと思います。これから生活の何割かが法定通貨以外で回っている時代になっていくんじゃないかと思っています。

前野先生:そういう意味では家族にお金は介在しない。子どもからお金を取らないですよね。 つまり家族の中では資本主義ではないんですよ。共同体。その考え方が今いろんな形で広がってるということじゃないでしょうか?

【質問】 Well-beingって一言で表現すると、どんな状態だと思いますか?

島田さん:良い調子」と言ってます。Well(良い)、Being(状態)だから。自分が良い状態なのか、調子良いのか、もっと気楽なもので良いんじゃないかって思います。

岩波さん:確かに!僕らは意外と難しく考えすぎなのかもしれないです。

前野さん:研究者として補足します。ウェルビーイングという単語は、1946 年に世界保健機関(WHO)の健康の定義の中で使われたのが最初と言われています。健康の定義とは

「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 」

世界保健機関(WHO)

というものであり、日本WHO 協会では

「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」

日本WHO協会訳

と和訳しています。ここでは Well-being は「満たされた状態」と訳されていますが、「良好な状態」ないしは「良き在り方」と訳すのが直訳的でしょう。島田さんの「良い調子」も、さすが、うまい訳ですね。

【質問】 ワーケーションをオススメするポイントって何ですか?

島田さん:ワーケーションの語源はWorkとVacation。Vacationの語源はVacate(空にする)という意味があります。だから日頃の仕事や家庭といった「外への意識」でいっぱいいっぱいの頭を空にすることも大事な目的。自分に意識を向けて、自分の中にあるものに気づくこと、それができるかどうか。今日も白浜のキャンプ場に来ていて、青々とした森と川を眺めながら良い意味で刺激を受けながら仕事をしています。本当にポジティブ気持ちになれるし、家の中で壁を見ながらというのとは全く違っていてパフォーマンスも上がる。Well-beingな状態でいられる。これがワーケーションのポイントです。ぜひ白浜にもいらしてください。

前野先生:心がないというのも「空」とも通じますよね。観光的な vacation というよりも、本当に好きな人がいる、本当に好きな場所があるのがワーケーションの本来の意味だと思いま す。拡張家族のように会いたい人がいるところだから行く、という形が最もウェルビーイングで しょうね。島田さんにとってはそれが白浜なんですよね。

島田さん:本当にその通りで、大好きな人がいて「おかえり」て言ってもらえて、一方で自分は よそ者だからこそ生み出せるイノベーションもある。ふとある瞬間に「居場所があるんだ」と感 じてコミュニティにいる感覚があることでさらに愛着が湧いて、大好きな人たちをつなげてそこ から生まれる関係性がまた素晴らしかったりします。

岩波さん:居場所があるとか、自分が良かったことを人にしてあげよう、一緒に体験しようということは、GIFTの源泉でもあるなぁと思います。

前野先生:今日一番伝えたい幸せの条件があります。世界中で行われた研究の結果、利己的な人よりも利他的な人の方が幸せなのです。GIVE(GIFT)が幸せの条件とも言えます。利己的な欲求は 20代がピークで、年齢が上がるとともに利他的な欲求が増大していくという調査結果もあります。GIFT というのは人間がより幸せになるための鍵ですよね。

【質問】島田さんの話を聞いていると組織文化の変わらない会社は辞めた方が良いという気になってきました(笑)どう思いますか?

島田さん:辞めるのはその人の判断だと思います。でもよっぽどその会社のためにという火種がない限りいろんなリスクを考えて辞めないでおく、人生にそんな暇はないと思います。人間の営みを考えた時に農業はじめ第1次産業も本当に大事で。大事という言葉では足りないくらい、いただいている一つ一つがありがたいことだとワーケーションをしていて思います。会社だって五万とあるし、最終的に会社で働くなくても良いと思います。

【参加者同士の対話より】

後半は、前半の話を聞いて感じ考えたことをブレイクアウトルームに分かれて少人数で対話しました。全体での共有では、次のようなコメントがありました。

◆参加者Gさん:
つながりを意識してこの回に参加しましたが、ただつながるだけではなくて多様な人たちとつながることが重要だという話がありました。会社に勤めているといろいろなしがらみがある一方で、つながった人たちでSHARE&RECIVEするとこれからを変えていけると思いました。

◆参加者Mさん:
人生の目的、行く果てはわからないけれど、このまましなやかに生きたいと思っていたところに、島田さんの「道を歩く、風を感じながら」という言葉が響きました。来年、定年を迎え会社から離れますが、自分なりの道をしなやかに歩んで行きたいです。

◆参加者Kさん:
「ワーケーションのおすすめの場所は?」という質問があったのですが、自分のふるさとでのワーケーションをぜひやってもらいたいです!地域はもちろん、時間を超えて自分とのつながりやふと思い出すことがあって、気づくことがあります。いつもと違うところに身を置くことで感じられる感覚があります。

今回Slidoを使って投稿されたコメントからキーワードを抽出 

最後に締めくくりとして前野先生から、コメントがありました。

 三菱地所さんと副業の調査をした時に、お金のためにやった人よりも、人とのつながりを求 めてやった人の方が、幸福度が高い、という結果が得られました。

人生は 1 回しかありません。せっかく生まれて来たんだから、我慢するのではなく、自暴自棄になるのでもなく、幸せに生きるべきです。「ここに答えがあったよ!」という自分がやりたいことをみつけて、みんなで幸せにつながる道を歩んで行きましょう。

エンディングでは参加者全員でエールを送り合いました!

 今回のイベントでは、「本当にやりたいことをやる」、「SHARE&RECIVE」、「利他的」というようなキーワードが出ました。企業の属しているとついつい忘れてしまう、「個人」という感覚や、実はやりたいと思っていることを、一人ひとりがやれる機会や場を、私たちは求めているのではないでしょうか。

 先ずは自分ができることを小さくてもやってみる、仲間を探してみることから始めてみても良いのかもしれません。私たち”GIFT”の場では、個人のアクションを応援する仲間がきっと見つかるはずです。

 そして、2022年”GIFT”は、大企業、その中の個人から、GIFTな循環を今まで以上にどんどん増やしていける年にしたいと考えています。

One Hundred GIFTsは2ヶ月に1回開催されますので、みなさんぜひ気軽にご参加ください!

【今回の動画】

下記よりご覧ください。


主催:大企業未来共創活動態”GIFT”
公式WEBサイトは下記より


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