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[1月第1週] DAOレポート Vol.50 | 2024年の抱負 DEXにしか実現できないことを探す年

2023年は、「冬の時代」であったと言えるだろう。2022年のTerraやFTX崩壊の後遺症が続いた他、多くのクリプト関連プロジェクトが口座を持っていたシリコンバレー銀行が破綻した。当時、意思決定が不透明な中央集権的な体制に失望させられたクリプトユーザーやトレーダーは多いはずだ。しかし、人間は時が経つとかつての悲惨な状況を忘れてしまうことがある。平時で大事なのは「分散化」より「使いやすさ」だ。これはごもっともな意見だ。今のところ、CEXと比べて差別化要因が「分散化していること」(すなわちメタマスクなどプライベートウォレットで資金管理できたり、取引板の管理を複数のバリデーターが行なったりしていること)しかないのがDEXの現状。dYdX等はパーミッションレス・マーケットによる許可なしのトークン上場の仕組みづくりを進めているが、まだ構想段階だ。

CEXとの強い差別化ポイントがない中、DEX陣営はトレーダーとどのように対話するべきなのだろうか?「DAOであること」「分散化であること」によるトレーダーへの直接的なメリットはなんだろうか?(たまに発生する中央の不透明な意思決定による資金ロス以外で)。2024年、私は上記の問いに対する答えを出せるように精進していきたいと思う。

2024年はDEXの年

オンチェーン分析を手掛けるNansenは、2024年はDEXの年になるとみている。

(出典:Nansen 2023年のパーペチュアル系のDEXの取引量)

DEXの取引量はCEXの2-5%ほどしかないのが現状だ。昨年12月15日時点でパーペチュアル系のDEX(Perp DEX)の取引量トップ10は以下の通りだ。

  • dYdX (1.18b)

  • RabbitX (508m)

  • Vertex Protocol (442m)

  • Hyperliquid (432m)

  • MUX Protocol (403m)

  • ApeX Protocol (289m)

  • GMX (219m)

  • Bluefin (126m)

  • Synthetix (107m)

  • Gains Network (101m)

Nansenは、DEXは過去数年間でプロダクトマーケットフィットを達成してきたと評価。まだDEX黎明期であり伸び代が大きいことを指摘した。確かに、仮にDEXのプロダクト改善が進んで使いやすさの点でCEXに引けをとらなくなれば、トレーダーがもっとDEXに流れるかもしれない。今はそれまでの過渡期だ。dYdX創業者のアントニオ・ジュリアーノは、打倒CEXまで最低5年はかかるとみている。

一方で、過渡期とは言ってもDEXならではの差別化ポイントの芽は今からでも生まれてくるかもしれない。そして、それは「中央集権的な何か」ではできないモノのはずだ。DEXだから実現できてCEXには実現できない、それでいてトレーダーにとってメリットがあることとは、一体なんだろうか?2024年はそれを探す年になるだろう。

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、1月8日時点でDAOトレジャリーの総額は299億ドルと前週比で3.1%増加した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が260億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が39億ドルだった。
ガバナンストークン保有者は990万人で、アクティブDAOユーザーは290万人だった。

著者:大木 悠 (Hisashi Oki)Asia BD Lead, dYdX Foundation
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。2018年に日本に帰国し、コインテレグラフジャパンの編集長を務めた。2020年12月にクラーケンジャパンの広報責任者に就任。2022年6月よりdYdX FoundationのJapan Lead。2024年1月より現職。


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