17歳の転落
気がついたら2020年だね。高校の頃にオリンピック誘致が決定して、見に行きたいねとか言い合っていたのが昨日みたいだけど、もう7年も前。あの頃のある人の事を最近よく思い出すんだよね。それをちょっとまとめてみた。
一時期だけど、毎日のように学年主任に呼び出されて詰められて、通信制高校のパンフレットを片手に罵倒され続けた高校時代。自称"自称進学校"で教員が生徒を小馬鹿にするような環境の中で、俺は、ここで逃げ出したら今後の人生で大きな損をすることになるとだけ考えて毎日を過ごしていた。そんな環境のためか、やはりドロップアウトしてしまう人も多かった。だいたい1割くらい。その中で、意地でも全日制高校を卒業したかったのか4年間かけて卒業したTくんという男子生徒がいた。
Tくんは入学当初は成績優秀者だった。300人を超える学年の中で一桁。もともとは同じ市内にある東大、一橋大、京大などの難関校合格者を毎年出す進学校を志望していた。そこからランクを下げて入学してきたのである。しかし、入学直後が成績のピークで、その後は坂を転げ落ちるように成績は下がっていく。3年生に進級するときには、とうとう赤点をいくつも取ってしまい彼は留年してしまった。
入学直後から彼は周りに高校のレベルが低いと漏らしていた。確かにそれを言える頭脳を彼は持っていたのかもしれない。しかし、彼は慢心してしまった。真っ白な状態から答案用紙は埋められない。年号や化学式から数学の公式まで、知らなければ答えは導き出すことはできない。彼は中学生までの貯金で乗り切れた入学直後から一切勉強をしなかった。一桁が二桁、そして三桁へと順位を落としたが、彼はそれを食い止めるべく努力をせず、さらに順位を落としていく。2年生の秋には最下位に手が届く寸前まで成績を落としてしまった。なぜ彼は成績を持ち直そうと努力しなかったのだろうか。俺は、モチベーションとプライドが原因だと思う。
まずモチベーションだが、当初から高校のレベルが低いと漏らしていた彼は、あの高校で良い成績を取ることに価値を見出すことができなかったのではないだろうか。そしてプライドだが、低いレベルの高校で"努力をする"行為が彼のプライドを傷つけることにつながっていたのではないだろうか。このことを裏付けるわけではないが、彼は今でも俺たちの高校を馬鹿にすると同時に進学校へ行っていればよかったという発言を繰り返している。
結局Tくんは4年間かけて高校を卒業した。地元の国公立大、もしくはMARCHに行くと言っていたが、結果としては受験すらせずに専門学校へ進学した。専門学校ではモチベーションを保つことができなかったのか、プライドが許さなかったのか、Tくんは3ヶ月で自主退学をしてしまった。その後は数カ月ごとに仕事に就いたり辞めたりを繰り返している。
Tくんの意志が弱いだけで、モチベーションやプライドという理由は後付にすぎないと考える人も多いと思う。その後の大学受験をモチベーションにすればいいという正論を持ち出して、彼はモチベーションを維持する現実的な目標を定める力もなければ、自分の実力を見誤って間違ったプライドを持っていただけの馬鹿だと考える人も多いかもしれない。俺もそうだとは思うよ。でもさ、もう少しモチベーションであったりプライドが違った方向に向かっていたら全く別の人生だったかもしれないんじゃん。誰か周りが現実的な目標を与えてあげられたら違っていたかもしれないじゃん。馬鹿の一言で片付けられるのはTくんがあくまでも他人だからでしょ。それが身内だったらみんなだってさあ色々考えたくなるはずだよ。
事務次官の息子殺しなんかもあったけど、いかに息子であっても他者を変えるっていうのは無理なのかな。傲慢なのかな。分からないです。難しいです。今でも答えは出ないし、たぶん一生出せない。ケースバイケースの一言で片付けたくなるときもあるけど、そう言える人生なのかな。自分だけ勝ち抜けするようだけど、できればみんながそうであってほしいよね。