Radioheadが作る退廃的世界「Amnesiac」
Radioheadが2001年に発表した5thアルバム、それがAmnesiac。このアルバムが今のところ彼らのアルバムの中で僕の1番のお気に入り。
Amnesiacは、崩れゆく何かの音をずっと聴いてるような不穏で退廃的な世界を持つアルバム。どこか物悲しくも神秘的で、混沌としている。そういうディストピア然としたサウンド世界が好き。
これらを形作っているのは、展開の予測不可能さにあると思う。Pyramid Songで今にも闇に消えてしまいそうな儚さをピアノが奏でたかと思えば、次曲のPulk/Pull Revolving Doorsではミニマルで実験的な打ち込みサウンドが続く。こういう予測不能な展開の連続に不安定さがあり、それがアルバム全体に流れる無秩序を生む。そこに強く引き込まれる。
キャッチーさが売りのバンドじゃないから、最初からこのアルバムの良さが解る人は少ないかもしれない。僕もその1人だった。だけど、噛み締めるほどに飲み込まれていく感覚があった。
だから謎解きパズルのようなアルバム、そういう言い方もできるのかもしれない。確かにこのアルバムの魅力はこの不可解さにある。捉えどころがなく、終わりのない深い迷宮を彷徨っているような気分になる。そこには無限に不完全な何かが続くような答えのない空間がある。
普通なら、最後に犯人もトリックも明かされないミステリー小説なんて落第点だろう。でもそういう曖昧さ、不確実性、不完全さ、そういうものに引き込まれる。そういう混沌を存分に味わえるのがこの「Amnesiac」というアルバムだと思う。