見出し画像

足骨日記38

今日は自分の誕生日である。もう八時間ほど経ったが誰からも祝われていない。昨晩は先輩からイベントに誘われたので夜中に少し顔をだしに行こうと思ったが、前日寝不足だったのでうたた寝してたつもりが朝の六時まで寝てしまっていた。申し訳ない気持ちですぐにLINEをしてお詫びをした。返事があれば朝からでも行くつもりだったが既読もつなかない。帰って寝てるんだろう。

それと、僕の職場は人数が少ないのでお互いに誕生日の人には皆から千円ずつ集めてプレゼントを送る慣習があった。正直めんどくさいし自分も要らないけどコミュニケーションは大事なのでこなしてきた。初のことでなぜだか分からないが、今年は僕のターンを忘れられている模様。まあ別にいいけど。こうして二度のお祝いチャンスを逃している。なんだかなあ。

こういう星のもとに生まれてきたんだろう。くじ運もよくないしな。
と思っていたら妻からおめでとうのLINEが来た。結婚しててよかった。
あとはANAからメールでお祝いが来た。登録している生年月日で来るようになってるのだろうか、もう七、八年乗ってないのに律儀なコンピューターだ。
誕生日ということで壁紙をプレゼントされた。もうここ何年もパソコンや携帯の壁紙を設定していない。いらないなあ。と思ってたらJALからもメールが来た。何かくれるのかな?JALのオリジナルイラストだそうだ。いらないなあ。

先月の妻の誕生日に娘が回数無制限のマッサージ券をプレゼントしていた。今日は俺ももらえるかなと思ったけど。なんか、なにも言われていない。

と思ってたら弟からおめでとうのLINEが来た。
俺も送ってるからなあ。嬉しいけどなんかもうちょっと欲しいなあ。もう15時間も経った。

パソコンでGoogleを開いてるとGoogleの文字がろうそくになってバースデー感を出してくれてた。う~ん、なんか違うんだよな。
こういう登録してるとかじゃなくて生身の人間から言われたいんだよなあ。

そして、これから娘と二人で、行くだけでHPが空になるくらい疲れそうなBBQに行かなければならない。
小高い丘の上にある眺めのいいマンションの広いバルコニーで社長や先生と呼ばれる同世代とバーべするのである。三十代半ばにして世間でいう成功をおさめた覇者達とそのかわいい奥さんと子供達と、覇者であり高校の同級生の友達の家で十連休にBBQである。
リア充爆発しろという呪文が成立したら一番に爆発する場所だろう。

4人中一人だけ僕だけ年収が低いのである。皆エリートなのである。この土俵が苦手なのに何年かに一回断れない状況になり行くはめになる。
見舞いに行ったときに嫁に相談すると家にある一番高い貰い物のシャンパンを手土産に持っていけと言ってくれた。金持ちはこういうのが好きなんじゃ。と言っていた。いい女である。友達がくれた日本酒もある。
俺は俺でミスタードーナツでトレー二つ分のドーナツを選び買ってきた。
貧乏人にもプライドや見栄はある。歳も変わらない人達だからプライベートで会えばこっちが構えてるだけで向こうはフレンドリーに接してくる。邪険にすることもない。
僕も人間なのでこういう人達と仲良くしてれば将来助かることがあるかもしれないというやらしい気持ちが少なからずあるのもまた事実。

それでも気が進まねえなあ。

先輩~俺今日誕生日なんすよ~!と言ってシャンパンや日本酒を注いでいる自分が目に浮かぶ。とてもヘラヘラしている。

D山~!何やってんだぁ!お前頑張れよ!と幽体離脱して上からその姿を見る自分がいる。

毎年誕生日に妻から今年の目標を聞かれるので一年の始まりのように思っている。

さて、今年は何を頑張ろうか。

と、ここまで書いて下書き保存をしてBBQへ行った。

そして今は数日経っていて、ここからを書く。

概ね上に書いた通りの展開だった。初めてお会いする先輩の奥さんはピアニストでドイツに留学しててとか、もう一組の夫婦は今時珍しく二十代でお見合い結婚だったとか。

うるせー!なんかイチイチうるせー。

もうこんな所に俺を呼ぶな!!(涙)

俺は酔っ払って家に押しかけてくるような先輩と飲み過ぎて小便漏らしたりしてるんだよ!(涙)

お前らとは住む世界が違うんだよ!(涙)

そんなことはおくびにも出さす、終始肉を焼き自分の家のように客人をもてなした。

いよいよ解散になり、やっと解放されると思ったそのとき家主の友人が皆にこう言った。
じゃあ大人一人四千円で!

ん?会費制?皆知ってたの?
そういや皆手ぶらで来てたような。。。

俺はドーナツを三千円分買ってきて、貰い物とはいえ一万円位するシャンパンの限定品とか、友達からもらった地酒とか持っていってるけど、払った方がいいよね?それはそれ、これはこれだよね?

顔色ひとつ変えずに四千円を払い先輩方をお見送りして、一番最後に友人に別れを告げ帰ろうとすると、友人がタクシー代と言って僕に二千円を渡してきた。三回くらいいいよと断ったけど、もうこれは渡すお金という顔をしていて引っ込めなさそうだったので受けとることにした。
一刻も早くこの場を立ち去りたかったのもある。

なんだかなあ。そういうことじゃねえんだよな。会費制て前もって言ってくれねえかな。

あとさー、タクシー代て言われてそれをもらっちゃうと俺が身分が下の人みたいになっちゃうからあ!(涙)
同級生なのに使いっぱしりの後輩感出ちゃうからあ!(涙)

差し入れいっぱい持ってきてくれたから半分返すねで俺のモヤモヤ晴れるんだからあ!(涙)

なんか、惨めな気持ちになりながらも自分の身の丈を再確認できた誕生日でありました。

んで思ったのが、別にこれ誕生日じゃなくてもよかったな。だった。

お母さんからは毎年おめでとうのショートメールが来ます。

ありがとう平成、こんにちわ令和

いいなと思ったら応援しよう!

D山
もしよろしければサポートしていただけるとありがたいです!