テレコンテンツ パソコンばかり使ってるけれども大丈夫?
コロナ禍で公演を行うのが難しくなった脱出・謎解き業界。その打開策の1つとして、テレ公演・リモート公演と銘打ち、会場に行かなくても謎解き公演ができるコンテンツが出てきました。
制限時間付きの公演形式はやはり楽しい物です。インターネットありがたい。制作者も気合いが入っていて、国内をざっと見渡しただけでも、プロフェッショナル・インディーズ合わせてこんなに見つかります。そしてその多くがチケット完売。やっぱしみんな公演に行きたかったのですね。
謎解き系テレ公演・リモート公演(2020年5月上旬まで)
(見落としていたら申し訳ありません。ご指摘頂けると嬉しいです)
さて、これらのコンテンツにはある1つの共通点があります。インターネット技術を使っているというのも正解ですが、もう一点。おそらく今後エンターテイメント的にもビジネス的にも重要になってくるポイント。
それは、どのコンテンツもパソコンを使うことを前提に設計されていること、つまりスマートフォンだけだと十分に楽しめないという点です。
ではそれの、何が問題なのでしょうか。
日本国内における通信動向について
まず、インターネット利用率をみてみましょう。
(総務省平成30年度通信利用動向調査 統計データ(表10)より作成)
これを見ると、13歳以上60歳未満のインターネット利用率が9割を越えています。13歳未満、60歳以上の年齢になると利用率は下がりますが、謎解き公演に参加するメインの層について考えると、9割以上インターネットを利用しているため、オンライン公演でのアプローチは集客について有力そうです。
さて次に、インターネットを利用する際に使う機器についてみてみましょう。
(総務省平成30年度通信利用動向調査 統計データ(表10)より作成)
青いグラフはパソコン、オレンジのグラフがスマートフォンを使ったインターネット利用割合です。
このグラフを見てみると、パソコンを使ってのアクセスは20歳から50歳未満で60%強であることに対し、スマートフォンの利用は80%以上。ざっとみると25%ほど、スマートフォンによるアクセスがパソコンを上回っているのです。さらに、13歳から20歳未満に限ると、スマートフォンとパソコンの差は30%以上と大きくなっています。
このことから何が言えるのか。それは、パソコンを使った公演だと参加可が難しい層が少なからずいることです。特に20歳未満の層では、インターネットアクセスはスマートフォンの方が中心といえる状況でもあり、オンライン公演がパソコン必須の物ばかりだと、若年層へのアプローチが弱くなることは想像できます。それが年月が過ぎた後、スマホ世代が市場の中心になったときに、パソコン中心のオンライン公演への影響はあまりよいものではないかなと思います。
もちろんこのことは、謎解き公演を好む層とのマッチング(例えば謎解き公演を好む層はPC所持率が高いなどの相関がある可能性はあり)についての分析を行わなければ断言はできません。また、コロナ禍によるテレワークの増加により、家庭にそれなりの性能のパソコンとインターネット環境が定着してきていることも予想できます。
ただこれらの状況を鑑みると、スマートフォンだけで楽しめる公演”も”作っていくこと、どうすればできるかを考えていくことは、今後のことを考えると必要ではないかなと思います。
スマホだけでも楽しめるオンライン公演
実はスマホで作者の想定通り楽しめる制限時間付きのオンライン公演は皆無というわけではありません。いくつかご紹介したいと思います。
制作団体:EscapeFromLinebotWorld
2019年7月から2020年3月まで行われていたコンテンツ。
LINEを使って進める60分間の謎解き公演です。
同時爆破テロが起きた未来からのメッセージを受け取ったプレイヤーが、1時間以内に爆破テロを阻止し未来を変えることが目的となります。
残念ながら現在は終了しているようですが、第2弾が5月から行われるようなツイートもあるため、期待して待ちましょう。
Toy×ボーズ on LINE公演「Rescue from the room」
制作団体:Toy×ボーズ(トイカケボーズ)
LINEのチャット機能と通話機能を使いながら謎を解いていく形式の45分間の謎解き公演。ビデオ通話は使わないそうです。
「あなたの力で見ず知らずの少女を救い出せ」とあることから、LINEの機能を使って少女を救い出すことが目的のようです。
残念ながら、現在予定されている公演は完売のようですので、再演に期待しましょう。
おわりに
もちろんのことですが、画面も大きくできることが豊富なパソコンの方が自由度が高いのも事実です。もっといってしまえばパソコンとスマホの両方を使う公演の方が、より多くのことはできるでしょう。
ただその一方で、スマートフォンしか持っていない人でもできる公演型コンテンツも、あると面白いのではないでしょうか。不自由な中でも面白い物を作っていく、そのような挑戦をするクリエイターが、面白い作品を作ってくれると市場的にも、良い感じになるのではないかと思います。
面白い記事を書いていけるよう頑張ります!!