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デジタル課題解決スキルを習得し、県内中小企業のDX推進と中高生のデジタル教育を支援する「大学生DXリーダー育成研修」
2024.12.12
「山梨県DX人材育成エコシステム創出事業」では、デジタルスキルを身につけた県内の大学生が、中学生・高校生のデジタルスキル習得や、県内中小企業のDXを通じた課題解決を支援する、「地域内発型DXの実現」を目指しています。
この中核を担う「山梨DXリーダー」を育成するのが、2024年10月20日に最終日を迎えた「大学生DXリーダー育成研修 “Yamanashi DX Leaders 2024” 」です。
今回、山梨大学/大学院3名、山梨学院大学5名、都留文科大学/大学院12名の計20名がプログラムを修了し、「山梨DXリーダー」として、山梨県の認定を受けました。(詳しくは、「山梨DXリーダーズの紹介 ー DX LEADERS」をご覧ください。)
ここで育った山梨DXリーダー達が、山梨県のDX人材育成・中小企業のDX課題解決の両面を支援し、県全体のDX推進を担っていく予定です。
大学生DXリーダー育成研修 “Yamanashi DX Leaders 2024” プログラム概要
本プログラムは、2024年9月14日〜10月20日にかけて、全6週・9日間のプログラムとして開催しました。前半の4日間で、中高生のデジタルスキル習得を導くスキルを、後半の5日間で、中小企業のDXを通じた課題解決を導くスキルを習得しました。
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前半の「対中高生」プログラムでは、まず大学生自らが、アプリやゲーム、WEBサイト、デザイン、映像を制作するデジタルスキルを習得した上で、中高生を導くファシリテーションスキルを習得しました。その上で、本エコシステム創出事業の一環として開催している「中学生のためのデジタル1dayワークショップ」に、中学生を導く「メンター」としてデビューを飾りました。
後半の「対中小企業」プログラムでは、まず3日間をかけて、業務上の課題を洗い出し、デジタルによる解決策を企画・制作する「業務支援DXスキル」を習得しました。その一環として、ノーコードによるアプリ開発スキルを身につけることで、素早く業務上の課題解決策をデジタル実装する術を習得しました。
さらに最後の2日間では、「山梨県内のイタリアンレストランから、ホームページの制作を依頼された」との仮想的なクライアントワークに臨み、中小企業の「マーケティング支援DXスキル」の習得に当たりました。クライアントへのヒアリングや店舗の売上データの読み解きを重ねながら、ホームページとして、誰に・何を・どのように伝えるべきかを企画・制作する過程を通じて、中小企業の課題解決支援を担う上で重要な「クライアントの要求に応える」視点を獲得しました。
以上の9日間のプログラムを修了した20名が、今回、山梨県公認の「山梨DXリーダー」として認定を受けました。以下のレポートでは、より詳しく大学生たちの成長の軌跡をお届けします。
【プログラム前半:中高生を導くスキルの習得(Day1~4)】
5つのコースに分かれてデジタルスキルをゼロから習得
Day3にはオリジナル作品を完成させ発表へ
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令和6年度の「大学生DXリーダー育成研修」は、9月14日(土)からスタートし、Day1からDay3にかけてデジタルスキルの習得に当たりました。参加学生たちは、iPhoneアプリ開発、Webデザイン、Unity®️ゲームプログラミング、デザイナー、映像編集の5コースに分かれて、基礎的なスキルを学んだ上で、オリジナル作品の制作に取り組みました。文系専攻やプログラミング経験がほとんどない参加学生も多い中でしたが、プログラミングやデジタルクリエイティブスキルに長けたライフイズテックの同世代のメンター大学生たちから大いに刺激を受けながら、それぞれ思い思いのオリジナル作品を完成させました。
<オリジナル作品の例>
Webデザイン作品例:
デジタル制作環境が整っているが活用率が低い、大学の共同利用施設の活用提案Webサイト
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Unity®️ゲームプログラミング作品例:
光の三原色とブロック崩しのコンセプトを組み合わせた、独自の世界観・ルールをもたせたシンプルながら奥深いゲーム
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デザイナー作品例:
サマフェスの魅力を多くの人に知ってもらうための、熱海を舞台にした架空のフェスの告知ポスター
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前半の山場、Day4「中学生のためのデジタル1dayワークショップ」でのメンターデビュー
今回の参加学生たちには、中小企業のDX推進に加えて、山梨県内の中高生のDXリテラシー向上を導くというもうひとつのミッションも与えられていました。つまり、自らがデジタルスキルを習得した上で、中高生にこれを教える「ファシリテーション力」を身につけることも目的となっていました。
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参加学生は「中学生のためのデジタル1dayワークショップ」で、メンターを務めました。
当日は、中学生たちが、iPhoneアプリ開発、WEBデザイン、Unity®️ゲームプログラミング、デザイナー、映像編集の5チームに分かれてテーブルに座り、大学生と一緒にオリジナルプロダクトを開発。大学生が常に中学生に寄り添い、視線を合わせて質問に答える姿が印象的でした。
最後の共有会では、チームごとに参加メンバーや保護者の前でオリジナルプロダクトを発表。たった1日でたくましく成長していく中学生たちを見守る参加学生たちに、DXリーダーとしての自覚が芽生え始めていました。
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【参加学生の声】
なつ 都留文科大学4年
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「教える」経験から、教育学部の学びにもつながる気づきを得た
もともと映像制作に興味があり、特にカロリーメイトのCMような心を動かされる系の映像作品に魅力を感じていました。就職活動を進める中でDXやプログラミングという言葉をよく耳にして、必要な時代だと感じたのもあります。また、教員志望なので、プログラミングを学ぶだけでなく、中高生に教えることもいいアウトプットの機会になるのではと思って参加しました。
Day4のファシリテーション研修は、メンターデビューということで、すごく緊張しました。子どもと接するのは大好きなのですが、今回は教える立場として、自分が理解していないことは教えられないので不安でした。ただ、現場は雰囲気がとてもよく、子どもたちにも助けられました。研修を通して、「学ぶ」とは何かという本質を考えることから始まり、どのように進行すれば子どもたちが乗ってくるか、周りからの声かけはどうすべきかなど、教育学部の学生として非常に興味深い内容でした。
将来は、小学校教員を目指しているので、通常の教科指導だけでなく、プログラミングなども自信を持って教えられる先生になりたいです。また、今回学んだことを活かして、自分でオリジナル動画やWeb制作にも挑戦してみたいと思っています。
かつりく 山梨大学大学院修士課程1年
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身についたコミュニケーション能力は、将来必ず役立つ!
大学でIT系を学んでいて、DX推進に興味があったのがプログラムに参加したきっかけです。将来は、IT業界で働きたいと考えているので、強みになると思って参加しました。
今回のファシリテーション研修やメンター経験を通して、どうすれば難しいITスキルを初心者にもわかりやすく説明できるか、言葉の選び方を学ぶことができたのは収穫でした。例えば生徒が「わからない」と言った時に、自分が学習した時とつまずきポイントが異なることも多く、具体的にどこがわからないのかを丁寧に聞き出しながらサポートに当たるようにしました。
今回身についたコミュニケーション能力は、将来会社に入って後輩を指導する際に役立つと思います。また、中学生のものづくりへの意欲に刺激を受けて、自分もIT関連のものづくりに挑戦してみたいなという気持ちになりました。
【プログラム後半:中小企業を導くスキルの習得(Day5〜7)】
業務上の課題を抽出し、DXによる課題解決策を企画する
中小企業向け業務支援DXスキルを習得
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プログラム後半は、中小企業向けの業務支援・マーケティング支援を目的としたDXスキルを習得していくプログラムがスタートします。まず、Day5からDay7まではオンライン開催で行う業務支援DXスキル研修。ここで参加学生各自がオリジナルのアプリ開発に挑戦します。
Day5のテーマは、アルゴリズム思考〜ノーコードアプリ開発講座。コーヒーショプ運営など身近な事例を題材に、業務上の課題を捉え、解決策を考える「アルゴリズム思考」を習得しました。
Day6は、課題解決実践トレーニングの個人編。ノーコードアプリ制作ツールGlideを用いて、それぞれが大学や家庭など身の回りの生活における課題を解決するプロダクトを制作しました。
Day7は、いよいよ課題解決実践トレーニングのチーム編。メンバーと議論を重ねながら課題を特定し、役割分担しながらノーコードアプリ制作ツールで課題解決プロダクトを制作しました。
参加学生たちは、Day5からDay7までのプログラムを通して、UI/UXデザインの基本、ビジネスフレームワーク、社会人向けプレゼンテーションの手法などを学ぶ講座を受講し、視野を広げました。
【プログラム後半:中小企業を導くスキルの習得(Day8〜9)】
仮想的なクライアントワークを通じて、
中小企業向けマーケティング支援DXスキルを習得
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Day8、Day9は、再び対面開催で、山梨県内の中小企業の課題をDXで解決するワークに取り組みました。
最終テーマは山梨県内のイタリアンレストランの課題をDXで解決するため、Webサイトをリニューアルすること。参加学生たちは6チームに分かれ、架空のイタリアンレストランオーナーからのヒアリングや顧客データの分析を行い、集客拡大に向けたWebサイトのリニューアルに取り組みます。
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まず、レストランが抱える課題は何か。「20〜30代のリピーターが少ない」「海外からの外国人観光客を取り込めていない」「おすすめメニューがわかりづらい」「価格がわからない」など、架空のイタリアンレストランオーナーからのヒアリングをもとに各チームが、現状のWebサイトの課題を、「Miro」と呼ばれるビジュアル情報共有ソフトに書き込んでいきます。
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続くステップは、抽出した課題に基づいて、「誰に・何を・どのように伝えるか」を考える「情報設計」。チームで想定した課題を解決するデザインを実現するため、「Miro」を駆使して、Webサイトのワイヤーフレーム(構成案)を作成します。予め用意したテンプレートから必要な要素をチーム独自のコンセプトで並べていきます。
その上で、デザインとしてどう見せるかを決める「ビジュアル設計」に移ります。ワイヤーフレームをベースに、ノーコードのWeb制作アプリ「Studio」を使って、実際にWebサイトに仕上げていきます。今回のプログラムを通して、「Studio」の操作を深く学習していた参加学生も多く、作業はスムーズに進んでいきました。
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「課題設定」から「Webサイト構築」までの制限時間は3時間。この短時間で全チームがオリジナルのWebサイトをリリースできる状態まで見事に仕上げました。そして、フィナーレとなる発表会では、6チームの力のこもったプレゼンテーションを行い、会場は大いに盛り上がりました。
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【課題解決のテーマ例】
「地元へのこだわりやワインを目的に訪れる30〜40代の観光客を増やしたい!」
<アピールポイント>
❶オーナーの山梨へのこだわりを料理・ワイン・富士山などで表現
❷統計データから年代別の人気メニューを表示
❸オーナーの人となりの紹介と最寄駅からの所要時間も表記した丁寧な案内情報
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「メイン顧客(地元の50〜60代)の維持・増加!」
<アピールポイント>
❶ワインを推しているお店として、あえてワインに文字情報は被せずにデザイン
❷リピーター向けに新着情報コーナーを整備、よりコアな情報をお届け
❸ワインや料理のこだわり解説からメニューに移る玄人向けの構成
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「新規の20〜30代の観光客を増やしたい!」
<アピールポイント>
❶新規利用者に興味を持ってもらうため、バースデープレートをTOPに
❷外国人の来店も見据えて、英語を併記
❸誕生日来店を狙って予約ページを完備
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ほとんどのメンバーが未経験からスタートした参加学生たちは、9日間のプログラムで、しっかりDXリーダーに成長していました。
【修了式Day9】
山梨県DX・情報政策推進統括官より修了証授与
発表会後には、山梨県の瀧本勝彦DX・情報政策推進統括官から、9日間約1.5か月の大学生DXリーダー研修をやり遂げた20名の受講者たちに、山梨県公認の証として「山梨DXリーダー修了証」が授与されました。
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総括として、瀧本統括官から、これから山梨県のDX推進を担って行くことへの期待と激励の言葉をいただくと共に、「私も40年前に戻れるなら皆さんと一緒にDXを学びたかった」というコメントも飛び出し、会場は笑顔に包まれました。さらに、一人ひとりの努力や成長の軌跡を踏まえ、担当メンター/講師からのメッセージも一人ひとりに授与されました。
【参加学生の声】
ひらめ 都留文科大学1年
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このプログラムを受けたことが、将来の進路決定の分岐点になりそう
大学で情報系の授業を受けていたときに、担当の先生にこのプログラムを勧められて参加しました。もともとゲームが好きで、PCで曲をつくったりしていたこともあるので、プログラミングを本格的に学べるプログラムということで、かなり興味がありました。
前半のプログラムでは、デザイナーコースに所属して、オリジナルの歌詞BOOKをつくったりしました。本格的なデジタルソフトを使って、ものづくりをする楽しさを再発見しました。また、今回いちばん大きな収穫だったのが、Studioを使ったWeb制作を覚えられたことです。「自分でもつくれるんだ」という自信がつきました。
今後も、自分の趣味のWebサイトや友達のサークルのWebサイトを制作してみたいと思います。また、こうした経験を通して、将来はIT系の仕事に就きたいという興味も出てきました。これから始まる「中小企業DX課題PBL研修」にも参加するつもりです!どんな世界が待っているのか、今から楽しみです!
あき 山梨学院大学3年
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課題解決のワークを通して「相手目線」の重要性に気づいた
もともとIT系には興味があって、昨年(2023年)は山梨県の地域課題解決を目指す「Creative Hack! in Yamanashi」に参加して、iPhoneアプリ開発に手応えを感じていたので、今回はさらに高度なプログラミングやゲーム制作にも挑戦してみたいと思って参加しました。
前半は、Unity®️ゲームプログラミングコースで、ゲーム開発に挑戦。実質1週間でゲームをつくるのは大変でしたが、その分スキルアップできた実感があります。毎回、新しい機能を実装できる自分の成長が楽しくて、デジタルのものづくりが好きなんだと改めて認識できました。
さらに、後半のチーム開発でも課題のヒアリングから、コンセプト設計、ワイヤーフレーム作成というWebサイト制作のワークフローを知ることができたのは貴重な経験でした。このワークを通して、クライアント(顧客)やユーザーの立場でコンテンツを考える「相手目線」が身につきましたね。これまでは自分本位にゲームなどをつくっていましたが、今後はユーザーを意識した開発をしてみたいです。
将来は公務員を目指しています。これからは、どんな職場でもプログラミングなどDXのスキルを活かせる場面は多いと思うので、学生のうちにさらにスキルアップしたいです。
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9日間の「大学生DXリーダー育成研修」は、ここで終わりではありません。むしろ、ここがスタートで、DXリーダーとして、デジタルスキルを身につけた参加学生たちが次のステップとして、「中小企業DX課題PBL研修」に挑戦します。ここでは実際に山梨県内の中小企業の課題に対してDXソリューションを提案するさらにレベルの高い取り組みに挑戦します。そこでの経験を踏まえて、「DX推進支援プラットフォーム」を通じた中小企業のデジタル課題解決支援に当たる予定です。また、エコシステム創出事業の他のプログラムにメンターとして参画し、後進の育成を担っていきます。
山梨県が3か年で取り組む「DX人材育成エコシステム創出事業」はここからさらにパワーアップしていきますので、「山梨DXリーダー」たちのこれからの活躍にご期待ください!