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「DX推進指標って何?」にわかりやすくお答えしてみたよ♪
前回の記事で経済産業省のDXレポートをわかりやすく解説しました♪
関心のある人は、↓の記事を読んでみてくださいね〜!!
本noteの想定読者と目的
本noteの想定読者は、DX推進に困っている担当者です。
目的は、DXを推進する上で、現状把握やあるべき姿の設定、進捗管理に活用できるDX推進指標を理解してもらい、実際に活用していただくことです♪
DX推進指標とは
今回は、DXレポート2 本文の「DX 推進指標の自己診断から読み取れる我が国 DX の現状」の冒頭に書いてある文章に注目しました。
経済産業省は、各企業による簡易な自己診断を可能とする「DX 推進指標」を 2019 年 7 月に策定し、情報処理推進機構(IPA)が中立機関として分析した企業の自己診断結果を、我が国企業における DX 推進状況のベンチマークとして提供することとした。
DX推進指標とは、デジタル経営改革のための評価指標のことを指します。
時間がない人は、1番上のサマリ版だけでも読んでみてくださいね♪
・DX推進指標 サマリ版
・DX推進指標
・「DX 推進指標」とそのガイダンス
DXレポート2の冒頭は、以下のように続きます。
経済産業省は DX レポートにおいて「2025 年の崖」と DX の遅れに対する危機感を示したものの、2019 年の自己診断結果を分析したところ、我が国の DX への取組は想定以上に遅れていることが明らかになった。
DXレポートの解説でも書きましたが、2018年9月、経済産業省は"2025年の崖"への危機感をDXレポートで呼びかけました。
その約1年後、2019年7月、各企業がDX 推進の現状や課題・取るべきアクションに関する認識を共有し、次のアクションにつなげるための気付きの機会を提供することを目的とした「DX 推進指標」とそのガイダンスを公開しました。
収集、分析、ベンチマーク提供を行う中立組織として経済産業省より指定された独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、2019 年 10 月から各社の自己診断結果の収集を経済産業省より引き継ぎ、2019 年 12 月時点で回収した約 300 社のデータを元に分析し、ベンチマークを作成しました。
それが冒頭にある"2019年の自己診断結果"を指します。
図 2-1 は指標値の現在平均値の分布を示しているが、自己診断を提出した企業の中でも、約 95%の企業は DX にまったく取り組んでいないレベルにあるか、DX の散発的な実施に留まっているに過ぎない段階であり、全社的な危機感の共有や意識改革の推進といったレベルにはいたっていない。
2019年の段階で、約95%の企業のDX推進レベルが危機的な状況に陥っていました。2020年の段階でも、その傾向に変化はありません。
サンプル数としても遜色ない診断ですので、この調査の結果がそのまま日本のDX推進レベルを指し示していると言っても過言ではありません。
DX 推進指標は(中略)、DX 推進の成熟度を0から5の 6 段階で評価する定性指標である。ここでは指標値の現在平均値が 3 以上の企業を先行企業と呼んでいる。
DXレポート2 8ページより引用
DX推進指標の内容を解説
ここでDX推進指標の内容について、解説します♪
「DX 推進指標」とは、経営幹部や事業部門、DX 部門、IT 部門等が議論をしながら自社の現状や課題、取るべきアクションについての認識を共有し、関係者がベクトルを合わせてアクションにつなげていくことを後押し、気付きの機会を得るためのツールである。
経済産業省は、日本の各企業がDX推進指標を活用することで、効率的にDXを推進し、日本全体のDXレベルが高まることを望んでいました。
自己診断を基本とし、経年で診断を行って、アクションの達成度合いを継続的に評価することにより、DX を推進する取り組みの経年変化を把握し、自社の DX の取り組みを進捗管理するために利用することを想定している。
自社の現状把握だけでなく、DX推進のモニタリング指標として、定期的に診断を行うことで、進捗管理ができることも活用方法として想定しています。
本指標は、DX の推進に際し、現在の日本企業が直面している課題やそれを解決するために押さえるべき事項を中心に、以下のように構成される。
①DX 推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
「DX 推進の枠組み」(定性指標)、「DX 推進の取組状況」(定量指標)
②DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築に関する指標
「IT システム構築の枠組み」(定性指標)、「IT システム構築の取組状況」(定量指標)
定性指標は 35 項目からなり、指標ごとに以下の 2 種類のクエスチョンを設定している。
キークエスチョン:経営者自ら回答することが望ましいもの
サブクエスチョン:経営者が経営幹部、事業部門、DX 部門、IT 部門等と議論をしながら回答するもの
定量指標では、いくつかの指標例を提示している。「DX 推進の取組状況」の定量指標については、自社が DX によって伸ばそうとしている定量指標を自ら選択して算出するとともに、例えば、3 年後に達成を目指す当該指標に関する数値目標を立て、進捗管理を行っていく活用方法を想定している。
「IT システム構築の取組状況」の定量指標については、自社で対象とするシステムやサービス、データをいくつか特定した上で回答することを想定している。
DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート 3ページより引用
定性指標と定量指標の両方で診断をしようとしているが、定性指標が35項目、定量指標が3項目であることを考えると、定量的に把握することがかなり難しい部類の診断であると推察できます♪
定性指標において、DX 推進の成熟度を 6 段階で評価する。本指標が日本企業の国際競争力を高め、デジタル企業への変革を促すことを目的としていることから、最終的なゴール(レベル5)は「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル」とする。
評価した成熟度を利用することで、自社が現在どのレベルにいて、次にどのレベルを目指すのかを認識するとともに、次のレベルに向けて具体的なアクションにつなげることが期待される。
以下に成熟度レベルの基本的な考え方を示す。詳細については、指標項目ごとにレベル分けの記載がされているので、それに従って評価する。
DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート 4ページより引用
定性指標のレベル分けも具体的に特性が書かれているので、日本の各企業は、このDX推進指標を"DX推進のロードマップ"としても活用することができますね♪
「DX 推進の取組状況」の定量指標については、自社が DX によって伸ばそうとしている定量指標を自ら選択して算出するとともに、例えば、3 年後に達成を目指す当該指標に関する数値目標を立て、進捗管理を行っていく活用方法を想定している。
大事なので、↑を再掲しておきます。
DX推進指標の自己診断結果を収集し分析した結果
さて、DXレポート2 本文に話を戻します♪
この結果は、自己診断を行い、結果を提出した企業群の分析であり、自己診断にも取り組めていない企業が多数存在することを勘案すると、我が国企業全体における DX 推進はまだ始まったばかりの段階と考えるべきである。
希望の兆しであることを強調するかのように「我が国企業全体における DX 推進はまだ始まったばかりの段階と考えるべき」とDXレポート2 には書かれていましたが、経済産業省の建前だと思った方がよいかと思います。(つまり、日本全体のDX推進が遅れていることを遠回しに言っている、ということです♪)
続く 2020 年の自己診断では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた結果、事業継続に対する危機感の高まったことで DX が加速しているのではないかと期待されたが、残念ながら顕著な状況改善は見られなかった。
このように 9 割以上の企業が DX に未着手であるか途上にある現状から考えると、これまでの政府の DX 施策は、多くの企業が DX を全社横断的かつ持続的に取り組むデジタル企業へと転換するためのものとしては必ずしも十分なものではなかったと言える。
経済産業省は、実は結構DX施策をやっています♪(METI DX参照)
政府も頑張っているんですよ〜!!
ただ、それでも2020年の自己診断は、政府が取り組んできたことの結果が数字に現れませんでした。とても悔しい結果だったのでは、と推察します。
現在の平均的な日本企業において特に取組が遅れている部分を推測するために、自己診断結果の分析をさらに進めたものが図 2-2 である。
図中において丸囲みした部分は、先行企業と平均的な企業との間で顕著な差が見られる項目を示している。
経営視点指標においては、平均的な企業は経営層による危機感・必要性の欠如に加えて、適切なガバナンス、DX人材の育成・確保に関する成熟度に課題があることがわかる。
また、IT 視点指標においては、経営のスピード・アジリティに対応した IT システムの構築や事業部門のオーナーシップに課題があると言える。これらの分析に加えて、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査からも企業の危機感の低さが垣間見られる。
DXが遅れている日本企業において、特にDXの遅れに直結している要因が、この診断によって明らかになってきました。以下の5つにおいて、先行企業と全企業との平均現在値に大きな得点の差が見られました。
①経営層による危機感・必要性の欠如
②適切なガバナンス
③DX人材の育成・確保
④経営のスピード・アジリティに対応した IT システム
⑤事業部門のオーナーシップ
経営層が、DX推進の遅れが競争優位性の喪失につながることを肝に銘じ、CIO/CDXOによる適切なガバナンスを効かせ、DX人材の採用・育成を進めるためにジョブ型人事制度を導入し、スピーディな環境変化に対応できるだけのITシステムを再構築(レガシーシステムを刷新)し、事業部門がDXに対して自責的かつ協力的に取り組む(IT/DX部門に丸投げしない)ことで、ようやくDXが進むことを示唆しています。
DX推進指標が作られた背景
ここからは、「DX 推進指標」とそのガイダンスに書かれている"DX推進指標"策定の経緯を中心に解説していきます♪
エグゼクティブサマリーの冒頭は、以下の文章から始まります。
<DX を巡る現状>
あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつある。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められている。
このような中で、経営者が DX の必要性を認識し、デジタル部門を設置するなどの取組が見られるものの、実際のビジネス変革にはつながっていない という状況が、多くの日本企業に見られる現状と考えられる。
日本企業の経営者にとって、非常に悩ましい状況(取り組んでいるのに結果が出ない)であることがわかりますね。
こうした現状において、具体的な課題として、例えば、以下のような点が指摘されている。
1) 「顧客視点でどのような価値を創出するか、ビジョンが明確でない 」
DX の取組状況について、よく聞かれるのが、PoC(Proof of Concept: 概念実証)からビジネスにつながらない といった悩みである。その場合の原因の一つとして考えられるのは、顧客視点でどのような価値を生み出すのか 、What が語られておらず 、ともすると、「AI を使ってやれ」の号令で、How から入ってしまっていることにある。(また、業務改善・効率化にとどまってしまっているケースも多い。)
2) 「号令だけでは、経営トップがコミットメントを示したことにならない」
DX に向けて、内外に号令をかけるだけでは、経営トップがコミットメントを示したことにはならない 。DX により、ビジネスモデルや業務プロセスを変革し、企業文化を変革していくためには、その変革を実行し、根付かせるための経営としての『仕組み』を明確化 し、全社で持続的なものとして定着させることが必要である。具体的な『仕組み』として、組織を整備し、権限を委譲しているか、適切な人材・人員をアサインしているか、予算を十分に配分しているか、プロジェクトや人事の評価の仕方を見直しているか、必要な人材の育成・確保を行っているかといったことが必要となる。
3) 「DX による価値創出に向けて、その基盤となる IT システムがどうあるべきか、認識が十分とは言えない 」
DX を進める基盤として、IT システムに求められる主要な要素は、以下の3つ 。
① データをリアルタイム等使いたい形で使えるか
② 変化に迅速に対応できるデリバリースピードを実現できるか
③ データを、部門を超えて全社最適で活用できるか
Why (なぜDXを進めるのか?)や What(どのような価値を生み出すのか?)が語られず、How(AIを使え)しか語られない環境。
号令だけを出して、後はうまく進むだろうと構えているだけの経営トップ。
使いたい時に使えず、スピーディにデータを出せず、部門最適になっているレガシーシステム。
それらがDX推進を阻害しているのだと理解できます。
しかしながら、多くの日本企業では、部門ごとに個別最適でシステムを構築し、しかも過剰なカスタマイズにより、IT システムがブラックボックス化してしまっている。これを解消できないと、全社的に DX を展開することは困難である。
こうした中、IT システムの話になると、経営者は IT 部門に任せてしまう ケースが多い。DX による価値の創出に向けて IT システムをどのように見直すのか、経営者自らがリアルに認識し、必要な打ち手を講じていくことが不可欠である。
ITシステムの知識を経営者も身に付ける必要がある時代になりましたね♪
ちなみに、シリコンバレー出身のアメリカベンチャー企業は、創業者がコンピュータービジョン系の学部出身なので、最初からDX化ができていた、という話は有名です。
<「DX 推進指標」策定の狙い>
DX の推進は、これまでの仕事の仕方や企業文化の変革までをも求められるものであり、上記をはじめとする諸課題を克服し DX を実現するに当たっては、経営幹部、事業部門、DX部門、IT 部門など関係する者が現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげていくことが不可欠 である。
DX の取組の成否が、あらゆる産業において、今後の競争力を決する重要なイシューである中、そうした取組を後押しするツールとして、今般、経済産業省は、平成 30 年9月の「DXレポート」の提言を踏まえ、「DX 推進指標」を策定することとした。
ついにDX推進指標を策定した狙いまでたどり着きましたね。今後の競争力を決める重要なDXの取り組みを後押しするツールとして、「DX推進指標」を策定したとのことです。
DX推進指標を活用する上での注意点
最後に、DX推進指標を活用したい!という方向けに注意点をお伝えして終わろうと思います♪
本指標は、良い点数を取ることが目的ではない 。各社が指標を活用して自己診断する過程を通じて、経営幹部、事業部門、DX 部門、IT 部門などの社内の関係者が議論をしながら、現状や課題を適切に認識し、かつその認識を共有することが重要である。その上で初めて、必要なアクションにつなげていくことができる。
良い点数を取るためのツールではなく、社内の各関係部門が共通認識を持つためのツールである、という点です。診断結果が得点で出るため、良い点数を取りたくなりますし、良い点数を取ること自体が悪いことではないのは確かなのですが、良い点数を取ればいいということではありません。目的はあくまで必要なアクションにつなげることです♪
本指標は、ビジネスモデルそのものを評価するものではなく、企業の変化への対応力を可視化するもの である。経営者からすると経営指標そのものがゴールになるが、本指標は、経営指標を達成するための手段であり、これ自体が目的化されると本質からずれてしまう ことに注意する必要がある。
DX推進指標はあくまで手段ですが、手段が目的化してしまうことは往々にしてあります。経営指標そのものがゴールであり、DX推進指標は経営指標を達成するための手段でしかありません。そのことを肝に銘じましょう。
日本の経営者の中には、IT をどう使っていくかの成功体験を持って経営を担っている人はそれほど多いとは言えない。そのような現状にかんがみ、「DX を実現する上での基盤となる IT システムの構築」の部分においては、IT システムが DX の実行に当たってどのような影響を与えるのか、経営者として押さえておくべきことは何かについて重点を置きながら、経営者が IT システムを巡る問題を、DX には欠かせない課題として、自分ごととして理解し、必要なアクションにつなげることができるよう意を払っている。
経営者がITシステム、DXを自分ごととして捉えることの重要性を説明しています。どんな指標も必要なアクションにつながらなければ意味がなく、その必要なアクションの指揮を取れるのは、経営者だけなのです。
『DX レポート』で述べている 「2025 年の崖」を乗り越えるというのは、デジタル競争に舵を切って、競争領域に資金・人材を大幅にシフトし競争上の優位性を確保していくことであり、本指標に沿ってレベルを上げていくことで DX の実現につながることが期待される。
必要なアクションの先にあるのは、競争領域(競争優位性を発揮するべき領域)に資金・人材を大幅にシフトし、競争上の優位性を確保していくことです。そこを見据えて、DX推進指標の運用をしていきたいですね♪
各社が DX に向けて手探りで取り組む中、他企業や他の業界の取組状況を知ることは、自社の位置づけを把握し、次に取り組むべきステップに対する理解を深めることにもつながることが期待される。
このため、本指標を用いて各社が実施する自己診断の結果は、中立的な組織が収集し、ベンチマーキングを行うとともに、その情報を提供 することとする。
中立的な組織は、情報処理推進機構(以下、IPA)のことを指し、IPAが自己診断の結果を収集し、ベンチマーキング及び情報提供を行っています。進捗管理に上手に活用したいですね♪
なお、自社だけでなく、取引先等の関連企業とのコミュニケーション、課題解決支援ツールとしての活用 にも有用である。
「自社でDXがどれだけ進んでいるのかを知りたい」というニーズは少なからずあるので、そういった際にDX推進指標の説明をして、「実はこのサービスで御社のDXを推進することができます」とスムーズにサービス紹介につなげられたら、営業として理想ですよね。そういったツールとしての活用もしていきたいところです♪
終わりに
さて、DX推進指標について、わかりやすく解説してきましたが、活用したいと思っていただけたでしょうか?
DX推進は組織変革なので、5-10年はかかることです。その間の進捗管理や現状把握、あるべき姿の設定に活用できるなら、使わない手はないですよね。
ぜひ活用する企業が増えて、日本のDXがさらに推進されることを切に望みます♪