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検査着が変える、無痛MRI乳がん検診の未来

ー乳がん検診の負担に寄り添う検査着が誕生ー

株式会社ドゥイブス・サーチでは、この度、メディカルアパレル企業であるクラシコ株式会社(https://classico.co.jp/)と共同で、無痛MRI乳がん検診のための専用検査着を開発しました。
今回は、検査着開発に携わった代表医師の高原先生、社員で放射線技師の結城さん・佐竹さんに、開発の経緯などについてお話を伺いました。




◆ 無痛MRI乳がん検診の開発

インタビュアー:まず、このプロジェクトを始めたきっかけについて教えていただけますか?

高原(代表医師):はい、それをお話するときに、まずMRI検査の開発についてお話しましょう。
乳がん検診は、「マンモグラフィ」と呼ばれるX線撮影で行われますよね。この検査は乳房をあらわにして撮影するので、恥ずかしいと思う方がいらっしゃいます。また強く圧迫するので、痛みを感じて辛いという方もいますね。

インタビュアー: それは良く聞きます。私のまわりにも、「痛かった〜」と言っていた人はいました。

高原(代表医師):そうですね。それで、なんとかしたいと思っていました。
私は20年前に、MRIを用いて身体のがんを発見する方法を考案したのですが、それを乳房用の検査として用いるように工夫して、2018年からリアルワールドの世界で受けられるようにしたんです。

インタビュアー:それが、無痛MRI乳がん検診、ですね。

高原(代表医師):はい。もともとの方法の名前をとって、「ドゥイブス・サーチ」という相性がついています。

このMRIを用いた方法では、乳房を挟まないので、まずは痛みから開放されます。それでものすごく喜ばれたのです。開発して本当に良かったと思いました。
MRIでも乳房をあわらにして撮影していたので、やっぱり恥ずかしいんです。

インタビュアー:
なるほど。MRIを使えば、痛くないことは実現したけれど、恥ずかしさはまだ解消していないと。

◆ 世界初の「見られない検査」の発明

高原(代表医師)
そうなんです。MRIの乳房検査は、例外なくうつぶせで実施します。それは乳房を重力で自然下垂した状態を作るためなのですが、これを厳密にするためには、服を着ていると、乳房と服が干渉してしまうので、うまくいかなかったわけです。

インタビュアー:だからはだけて乳房をあわらにしたということですね。まぁ検査ですからしかたがないですが、恥ずかしさを感じる方がいらっしゃるというのはわかります。

高原(代表医師):そうなんです。ですからなんとかしたかったのですが、はだけて撮影することは不可避だと悩んでいました。ところがあるとき、はっと思いつきました。

「この検査は『がんを発見する』ことが目的なのだから、すこしぐらい乳房が歪んでも良いのだ」と思ったんです。そこですぐに試してみたのですが、工夫すれば品質を落とさずに行うことができると確信するに至りました。

インタビュアー:なるほど。それは一種の発明ですね!

無痛MRI乳がん検診の様子:検査着を着たまま、胸を挟まずに乳がん検診が可能

高原(代表医師):ありがとうございます。まさに、「発明」だったと思います。この発明によって、世界で初めて、「痛くない」+「見られない」という、2つの大きな特長を持った乳がん検診が発明しました。

インタビュアー:着たままで検査できるのだったら、ほんとうにハードルが下がると思います。それで今回の検査着開発に続くわけなのですね。

◆ 専用の「着たまま検査用」検査着の開発でより正確に。

高原(代表医師):はい、そうなんです。これでとても容易に受診していただけるようになり、ネット予約なども実現しながら、これまで3万人以上の方に受診していただきました。いまはホームページには、毎月8万ページビューぐらいの閲覧があり、10月のピンクリボン月間は20万ページビューぐらいになります。

ただ、検査着を着たまま、乳房を正しい位置にセットして撮影するにはすこし工夫が要ります。このため、サービス開始時には、すべての病院にお邪魔して、どうやってセットすべきかというトレーニングを行ってきました。

インタビュアー:技師さんもトレーニングしてから、検査を担当してくださるのですね。

高原(代表医師):おっしゃるとおりです。単なる「遠隔画像診断」とは全く違っていて、サービス開始後も、かならず品質をチェックして、すこしでもうまくいかないことがあれば、フィードバックをすることで検査の品質を保ってきました。

ただ、トレーニングをしても、技師さんは、ときどきメンバーが変わったり新人が入ってきたりしますね。ですから、より容易に乳房をセットできるような工夫ができると良いなと思っていました。

そこで、以前から知り合いだった、カッコいい白衣で有名なクラシコ社長の大和(おおわ)さんに頼んでみたのです。専用検査着を作りたいのですが・・・と。

インタビュアー:それで共同開発になったのですね。クラシコさんは高品質白衣で有名だから、共同でできるととても良いですね。

高原(代表医師):まさに。クラシコさんは高品質でスタイリッシュな白衣の代名詞ですから、大和さんがご快諾をくださったときは、本当にうれしかったです!

だって、自分たちの検査着の発注数は、全国の病院数から比べると少ないわけです。とうぜん注文のロット数も少なくなるので、OKを貰えるかは不安でした。

インタビュアー:それは本当に良かったです! 大和さん、ナイス!ですね。

高原(代表医師):はい。本当にありがたく思っています。

◆ 検査着の開発

高原(代表医師):もっと快適に、そしてさらに検査精度を高める工夫ができないかと考え、新しい検査着の開発に至りました。

インタビュアー:そのような想いが、この新しい検査着の開発に繋がったんですね。具体的にはどのような工夫をされたのでしょうか?

高原(代表医師):はい、まずクラシコの本社にお伺いしまして、どんな検査着であるべきなのかという提案を行い、実際に製品として作れるかどうかの会議を行いました。これはとても楽しい作業でした。

インタビュアー:写真から真剣さが伝わってきます(笑)

高原(代表医師):ありがとうございます!!
それで、会議で、「着る人の『安心感』と、検査する側の『検査精度の向上』を目指して開発を行おう」ということになりました。

安心感につながる工夫のひとつとしては、検査中はうつ伏せの姿勢になるとき、胸が見えないように首元を少し詰めたデザインにしました。

これによって、受診者の方が恥ずかしさを感じにくくなり、安心して検査を受けていただけるようになっています。

ただ、そうすると今度は脱ぎにくくなってしまいます。脱ぎ着するときに、襟元が狭いと、ヘアスタイルやメイクがだいなしになってしまいますよね。そこで、脱ぎ着が簡単にできるように、肩にスナップボタンをつけ、がばっと大きく開口するようにしました。

これなら女性が快適に検査を受け、帰ることができるわけです。

インタビュアー:わぁー、なるほど、2つの一見ことなる要求を満たしているわけですね。

高原(代表医師):そうなんです。この設計は、クラシコさんが考えてくれて、とても感動しました。

あと、この検査はうつ伏せですから、紐が真ん中にあると、検査時に下腹部を圧迫してしまうんですね。
そこでボトムウェアはウエストを調整する紐が腹部を圧迫しないよう、脇から出す設計にしました。これにより、検査中に違和感なく過ごしていただけるようになっています。

インタビュアー:サイドの方にあると、この紐が腹部を圧迫することがないわけですね。ではそろそろ、真打ちの、マーカーについておしえていただけますか。

◆正確な検査のための工夫

高原(代表医師):はい、この検査着では、検査する技師の視点も重視し、「位置合わせの目印」となる画期的なデザインを施しました。

これにより、受診者と技師の負担を減らし、スムーズに検査を進めることができるようになっています。

写真をみると、2つの点があって、ワンポイントデザインみたいに見えますが、このマークをもとに、乳房を正しい位置にセットできる機能があります。写真にはありませんが、その他にもマークを配置して、セットが短時間でできるよう、工夫しています。こういった工夫が沢山なされているので、特許申請もしました。

インタビュアー:実際に開発された検査着を手にとってみると、とてもやわらかくて他の検査着とは一味違いますね。

高原(代表医師):はい。素材の選定にもこだわりました。クラシコさんが私たちの思いや希望を深く汲んでくださり、特別な生地を提案してくれました。

柔らかく温かみのある生地を使用することで、肌に触れる瞬間から安心できるような検査着になっています。身体のシルエットを拾いすぎない生地の厚みや、サイズ展開にもこだわり、体型を問わず安心して着用できることを重視しました。

インタビュアー:高原先生、今回のプロジェクトで特に印象に残ったことはありますか?

高原(代表医師):受診者の方々から『この検査着だと安心して検査が受けられる』というお声をいただけた時が一番嬉しかったです。がん検診は決して楽なものではありませんが、検査着がその不安を和らげるものであれば、それは大きな意味があります。

クラシコさんとの共同開発で、よりスタイリッシュで快適なデザインに仕上げることができ、本当に納得のいく検査着を作ることができました。

インタビュアー:皆さんの情熱が込められた検査着が、これから多くの人々の健康を守る手助けになると考えると、とても希望が持てますね。結城さんと佐竹さんも、開発を通じて得られた感動や苦労はありましたか?

結城:この検査着の開発には、素材選定からデザインの細部に至るまで、非常に細やかなこだわりを持って取り組みました。最終的に『安心して身を委ねられる検査着』という理想を形にできたときは感動が込み上げてきました。検査技師として機能性について試行錯誤した経験も忘れられません。

佐竹:私は試作品を何度も着用し、着心地やシルエットを確かめました。その結果、これまでの病院の検査着にはない細やかな配慮が施されたものに仕上がったと感じています。受診者がリラックスできる新しい検査着となったことを、とても誇りに思います。

インタビュアー:最後に、高原先生、今後の展望をお聞かせください。

高原(代表医師):私たちは、これからも『痛くない。から始まる検診』をもっと身近にするために努力していきます。この検査着を通して、女性たちが検診をより前向きに捉え、健康を維持できる社会の実現を目指しています。
どんなに小さな進歩でも、それが多くの人々の安心につながるように、これからもチャレンジをし続けていきたいと思います。


● 検査着採用施設一覧 ●
〜 全国12施設から導入スタート 〜

仙台徳洲会病院 (宮城県仙台市)
水府病院 (茨城県水戸市)
東京天使病院 (東京都八王子市)
えだクリニックPICTORUいずも画像診断室 (島根県出雲市)
石川病院 (岡山県津山市)
独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター (愛知県名古屋市)
八千代病院 (愛知県安城市)
三上医院 (静岡県静岡市)
そばじまクリニック (大阪府東大阪市)
都島放射線科クリニック (大阪府大阪市)
洛和会丸太町病院 (京都府中京区)
洛和会音羽病院健診センター (京都府山科区)