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現像液の使い分け


こんばんは。

この頃、外出の自粛で自宅で過ごす時間が増えたため、暗室で作業することが多くなりました。

コンタクトプリントをつくったり、普段の暗室作業ではつい面倒くさがって放置しがちなネガの整理など、地味な作業にも時間を割く余裕ができたので、この機会にと色々な暗室作業をやっています。


さて、僕はモノクロのフィルム写真を撮っていて、フィルムの現像も自分でやっているのですが、現像をする際に使う現像液を用途別にいくつか使い分けています。

どういう用途のときにどの現像液を使っているか、という僕の場合の使い分けを紹介したいと思います。


現像液のタイプ

フィルムには主に3つの要素があって、どの要素を活かして現像するかによって使う現像液が変わってきます。

・シャープネス

・粒状性

・感度

この3つの要素は、どれかを伸ばせばどれかが劣る関係性になっています。


シャープネスが高くなると見かけの粒子は大きくざらついて見えます。

粒子を小さく微粒子にするとシャープさは失われますが滑らかさがでます。

感度を上げると粒子が大きくなり、感度を下げると微粒子になります。


現像液は、だいたいこの3要素のうちの2つの要素を伸ばす特性を持っていうことが多いです。

僕が今使っている現像液は

・rodinal(ロジナール、R09、アドナール)

・speed major(スピードメジャー)

・atomal49(アトマル49)

・Tmax dev(Tmax developer、ティーマックスデベロッパー)

・silversalt(シルバーソルト)

主にこの5種類です。

それぞれどんな現像液で、どんなフィルムと組み合わせて使っているのかを紹介します。


rodinal

rodinalはadox社が販売しているシャープネス現像液です。

非常に昔から存在している現像液でメジャーな存在なので、だいたいのフィルムの現像データが存在しています。希釈率が非常に高いので原液の使用量が少量で済むためコスパがいいです。そしてとにかくシャープに仕上がるのでかっこいいです。

ただし、rodinalはフィルムの公称感度よりも低い感度になるので、公称感度よりも1段低く(公称感度ISO400ならISO200)撮影して現像するのがいいようです。

また、シャープに仕上がりますが粒子は目立つので、微粒子にしたいときはrodinalを選ばない方がいいと思います。


高感度の現像には向かないように思うので、高くてもISO200までの感度低めで撮影したフィルムの現像に使っています。

公称感度より1段低く撮影して現像、と言いつつ、最近までfomapan400をそのままISO400で撮影して現像してました。最近は普段使いにkentmere400をISO200や100で撮影してrodinalで現像しようと思っています。

去年fomapan100をrodinalで現像した写真が気に入っているので、またこの組み合わせで撮りたいなとも思っています。


speed major

SPUR社が販売している増感現像液です。

speed majorを使うとフィルムの公称感度よりも高い感度で撮影することができます。

通常、増感現像をすると黒潰れや白飛びが強い高コントラストの写真になりがちなのですが、speed majorはコントラストがあまり上がらずに増感現像ができるようです。どういうメカニズムかはあんまり理解していませんが、便利なので使っています。

高感度に現像できますがその分粒子が粗くなったり、通常の現像に比べるとややコントラストが上がるので、微粒子やなめらかなトーンが欲しい場合はspeed majorは選ばない方がいいと思います。


ライブハウスでのステージ撮影の際や暗所での撮影など高感度が必要な場面でよくspeed majorを使っています。

あと、ISO200のフィルムを入れて使っているつもりだったのに撮り終わって裏蓋を開けたらISO100のフィルムが出てきた、なんてことが稀にあるので、そういう時に増感して事なきを得るために使う時もあります。

暗所用としてkentmere400をISO800やISO1600に増感して使います。なにより写っていることが大事なので粒状性やトーンはそこまで期待していません。でもISO100をISO400くらいまでに増感するならそんなに粒子が荒れるようなこともないと思うので、全然使えると思います。あんまり好きじゃなかった写りのフィルムを消費するときなどにもなんだかんだよく使います。



atomal49

adox社が販売している微粒子現像液です。

fomapan400との組み合わせが良好とのことだったので、fomapan400をメインに使い始めるときに導入しました。

微粒子です。rodinalと比べると非常に粒子が細かいです。粒子が細かいので滑らかな描写になります。反面シャープさはrodinalには勝てないので、ポートレートで肌を滑らかに表現したいときなどにはいいと思います。

希釈して使うと補正効果がでて極端に強いコントラストになりにくいので、プリントしやすいネガができます。でも撮影対象を選ばないとコントラストが強くでない分のっぺりとした写真になりがちなので、どれもおなじ写真に見えてきてしまいます。僕はそのせいでrodinalに浮気しました。


公称感度で撮影して現像できるので、これはこれで重宝しています。atomal49で現像すれば安全だろう、という安心感があります。

原液だと作業溶液を何度か繰り返し使え、希釈すると1回使い捨て(ワンショット)になります。希釈率が低いのでコスパはあまりよくない気がします。


Tmax dev

kodak社が販売する現像液。

Tri-XとD76の組み合わせが鉄板だった中、満を持して発売した新型構造のT-maxフィルムがD76と合わせると軟調になりすぎてだめだこりゃ、というわけで用意された専用現像液、ということのようです。

標準現像液、と言えばいいのでしょうか。特に粒状性が優れているとかシャープとか、そういう風には思わないです。普通に使える無難な現像液という印象です。

超高希釈をして静止現像する際の現像液としてよく使われている印象があります。現在ヨドバシなどの店頭で買える数少ない現像液で、D76やフジのmicrofineなどの粉末を水に溶かして使用する現像液と比べるとこちらは液体なので、粉を溶かす手間なくすぐ使えるというメリットがあります。希釈率もそれなりなので、1本買えば長く使えると思います。


僕は、なにを撮ったか覚えていないフィルムがでてきた時にとりあえず公称感度で現像する用としてよく使っています。Tmaxを現像するときにも勿論使いますが。

D76は粗くてごわついた写真になるのが気に入らなくて使わなくなりましたが、Tmax devはそこまで思ったことはありません。


silversalt

SPUR社が販売、モノクロフィルム販売の国内再大手ショップsilversalt監修のオールラウンド現像液。

シャープだけど公称感度で現像出来て微粒子、という夢のような現像液です。


最近発売されたばかりの現像液で、僕もまだ使い始めたばかりなのでなんとも言えませんが、結果次第ではこれから常用するかも。公称感度で現像できるのはとても使いやすいです。

フィルムの持っているパフォーマンスをしっかりと引き出してくれるので、ORWOのUN54やRollei retro80、berggerのpancro400など個性が強いフィルムで撮るときに使いたい現像液です。販売され始めたばかりで生産が少なく販売されても即日売り切れなので、今のところ安定して購入できないのがネック。じきに欲しい人に行き渡って安定的な供給になればいいなと思っています。

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まとめ

現像液はまだまだ沢山種類があって、はじめのうちはどう違うかわからず選ぶのに迷うこともあると思います。

新しい現像液に挑戦するタイミングは、現像したネガに不満を持った瞬間。

手順に慣れてきてそつなくこなせるようになった、温度も時間も問題ないはず、でもなんか思ったより…と感じたら、別の現像液に挑戦してみるといいと思います。

もっとシャープさが欲しいとか、なめらかなトーンにしたいとか。

僕の場合はD76を使っていて、コントラストが強すぎたり、大味な描写になるのが気に入らなくてfomapan400とatomal49の組み合わせに乗り換えました。

D76は報道写真全盛の時代に、大量のフィルムを現像しても弱りにくく繰り返し現像できる作業効率性のニーズがあって好まれて使われた現像液なので、表現性を重視する現在のモノクロ写真での芸術用途としてはちょっと趣向がズレているんですね。

それ以降、現像液の特徴の違いが理解できるようになって、rodinalやspeed majorを使うようになった、という感じです。


まだまだ使ってみたい現像液やフィルムが沢山あります。ちょっと飽きてきたな、いつもと違う感じのが欲しいなと思ったときに、また挑戦してみようと思っています。

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