kodak double-x Rodinal / Xtol / Tmax dev 現像結果比較
以前購入した400ft巻きのkodak double-xというモノクロフィルムを、Rodinal、Xtol、Tmax developerの三種の現像液で現像しました。
今回は、現像したネガから手焼きプリントを製作し、それをスキャナで取り込んで画像データ化したので、それらを紹介しながら比較をして、各現像液で現像結果にどのような違いがあるのかを見ていこうと思います。
比較にあたっての条件
まず、比較にあたっていくつか条件を設定します。
30枚撮りx3本分のdouble-xフィルムを撮影し、Rodinal、Xtol、Tmax devでそれぞれ現像する
撮影場所、光源、被写体はなるべく似たものを選ぶ
撮影にあたり使用するカメラ、レンズ、ISO感度、f値、シャッタースピードは全コマ固定とする
プリントは拡大率、コントラストフィルター、現像液、現像時間を統一し、覆い焼き等は行わないストレートプリントとする
これらの条件で比較を行うことで、なるべく現像液による違いがわかりやすくなるようにします。
撮影機材
カメラ:MINOLTA α507si
レンズ:SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM Art
撮影場所
インテックス大阪 大阪モーターサイクルショー2022
撮影条件
ISO(フィルム)感度:ISO400統一
F値:f5.6固定
シャッタースピード:1/30固定
現像データ
Rodinal:ISO400 1+50 11m 20℃ 3rep/sec
Xtol:ISO400 1+1 14m 20℃ 3rep/sec
Tmax dev:ISO400 1+9 10.5m 20℃ 3rep/sec
プリント条件
現像液:silverchrome developer 60s
印画紙:ARISTA EDU ULTRA RC VC GL (RC印画紙 多階調 光沢)
フィルター:2号
Rodinalでの現像結果
この後に紹介するXtol、Tmax devでの結果と見比べていただければわかると思いますが、シャープネスは今回選んだ3種類の現像液の中ではダントツでトップです。
double-xというフィルム自体がかなりのシャープネス、解像力を持ったフィルムである事と、Rodinal自体が非常にシャープネスを効かせた現像液であることが合わさり、ピントが合った部分のキレは見惚れてしまうほどにかっこいいシャープさになっています。
また、double-xというフィルムは黒が強く深く表現されるフィルムだと思っていますが、Rodinalによってその特性もより強調されています。
かなりパンチの効いた黒が印象的で、今回の被写体のようなバイクや機械部品などの凹凸や光沢感、重厚感を表現するには相性がいいと思います。
反面、常用するには個性が強い表現になるので、プリントの際にコントラストを下げた方がもう少し扱いやすいと思いました。
また、double-xは比較的粒子の細かいフィルムではありますが、Rodinalはシャープネスを引き出す代わりに粒子感も強調する現像液なので、場合によってはこの粒子感が気になることもあるかと思います。
とはいえ、それはdouble-xとRodinalの組み合わせというよりはRodinalそのものの特性なので、なにと組み合わせてもこの傾向になりやすいわけですが。
Xtolでの現像結果
Xtolで現像したネガからプリントした写真からは、輪郭線の細さや粒子のさらりとした細かさ、中間トーンであるグレーの豊富な幅など、しつこさがなく繊細な印象を受けました。
同時に、Tmax400もこんな描写だったなというのを思い出しました。
輪郭線は細く綺麗ではありますが、Rodinalに比べると特筆するほどシャープネスが高いという描写ではありません。とはいえ充分すぎるほどのシャープネスはあり、これはどちらかと言えばレンズやフィルム自体の描写能力かもしれませんが、そう考えるとXtolは道具そのものの性能を無駄に脚色せず、ありのまま表現するのに向いている現像液と言えるのかもしれません。
Rodinalと比べると明らかに絵作りが白っぽい印象を受けますが、プリント濃度が薄いわけではありません。
黒の濃い部分は黒潰れするギリギリまで濃度があるので、必要十分な濃度には達しています。
グレーのトーンがやや明るい側に豊かに並んでいるので、白っぽい印象を受けるのではないかと思っています。
試しにそのまま濃度を上げて濃い黒を作ってみましたが、Rodinalの時のような重厚感のある黒にはならず、単に黒潰れた単調な写真になってしまいました。これならプリントの際にフィルターを変えてコントラストを上げてプリントした方がまだ希望がありそうです。
あるいは、無理にパンチ力のある描写を求めず、被写体やレンズのポテンシャルから来る素の表現力を引き出してあげる方が向いているのかもしれません。
Tmax developerでの現像結果
Tmax developerで現像したネガからでてきた写真は、どれもこれも”質感”が美しいものばかりでした。
シャープネスはRodinalのようにキレのある感じはなく、反対に柔らかで滑らかな描写であることが見受けられます。
粒子が殆ど目立たないのも相まって、ぬるりとした滑らかさがあります。
トーンも非常に滑らかですが、個人的には細かなトーンの表現はXtolと同等か、僅差でXtolの方が上という印象を受けました。
ただ、これはトーン幅の話であって、つまりグレーの色数の豊富さならXtolに僅かに軍配が上がるということですが、Tmax devはグレーの色数よりもその連続性の滑らかさがなによりも美しいと感じました。
切れ目がなく流れるように濃淡が変化するのは、眺めていてとても気持ちがいいです。
被写体の形や表面の手触りが触らずとも手に取るようにわかる、そういった質感を忠実に再現するかのような描写がTmax devの特筆すべき性能で、double-xと組み合わせることでその性能が存分に発揮されていると感じました。
レンズやフィルムの元々のポテンシャル以上を引き出してくれるようなものではないですが、見たままの質感がそのまま表現できるという点では、今回の3種類の現像液の中では一番古めかしさを感じさせない、現代的な描写をする現像液だと思います。
比較的新しい年代のレンズを使えばより現代的な描写になるでしょう。
総評
今回、double-xをRodinal、Xtol、Tmax developerと3種類の現像液で比較をしてみたことで、自分でも思った以上の違いがあったことがとても収穫でした。
これまでいろいろなフィルムや現像液を使ってきたので、違いがでるのは当然だとは思っていましたが、同じフィルムでここまで如実に方向性の違う描写になるとは思っていませんでした。
簡単にまとめると
圧倒的シャープネスと黒のパンチ力のRodinal
豊かなトーンと繊細な描写で扱いやすいXtol
滑らかさと質感のTmax developer
といったところでしょうか。
どれが正解、というようなものはなく、好みで使い分ければいいと思いますが、ネガやプリントを見ていて扱いやすいと感じたのはXtolで現像したものでした。
とりあえずXtolで現像しておけば大丈夫、という安心感があります。
反面、無茶はできなさそうな雰囲気があったので、他の描写力にこだわりがあるようならRodinalやTmax devを使うといいと思います。
Rosinalは期待を裏切らないシャープネスと黒の重みがとにかくかっこいいです。このかっこよさを引き出すための被写体探しの旅にでたくなります。それほどまでに引き込まれる魅力があります。
反面、万能な表現力ではなくピーキーさもあるので、なんでもかんでもRodinalで現像しているとくどくなるかもしれません。使いどころがハマると唯一無二です。
Tmax devは一見するとデジタルで撮った画像かと思うほど滑らかさと質感が見事で、ある意味フィルムらしくないとも言える描写です。しかし、double-xとTmax devの組み合わせでなければ表現できないものが絶対にあります。素晴らしい表現力なのは間違いないです。
欠点を挙げるとするならば…Tmax devがいま入手困難なことでしょうか…。
今回はdouble-xを3種類の現像液で比較をしてみました。
double-xはCatLABS X FILM 320、CineStill BWxxといった名称でOEM販売もされています(35mm用)。
元のポテンシャルも素晴らしいですが、現像液によってこんなにも性格の違う描写をするとても優れたフィルムですので、興味があれば是非使ってみて欲しいフィルムです。
過去記事では400ftフィルムを100ftに巻き直してフィルムローダーでパトローネに手詰めするまでの過程の記録もありますので、そちらも参考にしていただけると幸いです。