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さよならペンタックス。

主力で使ってきたペンタックスのKマウント機を、使い続けることを諦めることにした。


価格と機能で選んだist

僕は、用途によって何パターンかのカメラを使い分けている。

自転車や歩き旅で山や街から遠ざかった場所へ行く際は、金属製の機械式フィルムカメラ。電池が不要なことや、寒冷な環境でも確実に動作することを第一に選ぶ。

街歩きや、どうしても荷物を軽量にしたいときはプラスチック外装の機械式フィルムカメラ。

撮影速度を重視するポートレート、ストロボを使った撮影時は電子式のフィルムカメラ。


この中で、特に機能や仕様に関してこだわりがあるのが、電子式のカメラだ。

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これが、僕が使っている電子式のフィルム一眼レフカメラ。PENTAX ist。

ペンタックスが2003年に発売した最後のフィルム一眼レフ。

Kマウントの電子式一眼レフであること。絞り優先とマニュアル露出を使うことが多いので、その機能が備わっていて、操作に不便がないこと。フィルムを増感処理することも多いので、ISO感度を任意で設定できること。本体のみではリチウム電池を使用するが、高価なのと入手がやや難ありなので乾電池で動作するように、単三乾電池を使うバッテリーグリップが用意されていること。本体のみ中古で1万円以内で入手できること。

他にも細かい要件はあるが、主にこういった自分なりの要件を満たした上で、ペンタックスの電子式フィルム一眼レフから消去法で残ったのがこのistだった。


元々ペンタックスのカメラは入門機、中級機が多く、このistも中級機という位置づけとなっている。

そのため、バッテリーグリップが用意されていなかったり、撮影モードに制約があったり、自動化されすぎて任意で設定できない項目がある機種が多く、いくつもの選択肢から選ぶというよりも、要件を満たさない機種を省いていったら残ったのがistだった、という具合で選んだカメラだった。


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非常にデジタルカメラライクなインターフェースをしており、デジタル一眼レフを使ったことがある人ならすんなりと操作を理解できる造りとなっている。


今回、このistを諦めようと思ったのは、耐久性に問題があると感じたからである。


istが抱える問題、他社と比べてわかったこと

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この右肩のダイヤルは、絞り優先モード時は絞り値を、シャッター優先モード時はシャッター速度を選択するためのセレクトダイヤルである。

今回、予備として持っていた一台のこのセレクトダイヤルが、一方向にしか回転しなくなってしまった。内部で部品が損傷したか変形したか、引っかかったような感触で、反対方向に回転しなくなってしまったのである。


これは今回のistに限った話ではなく、ペンタックスのカメラ全般に言えることだが、これまでペンタックスの様々なカメラを見て、触って、使ってきた身からすると、ペンタックスのカメラは他社に比べると造りが華奢、率直に言ってしまえば貧弱であると言わざるを得ない点が散見される。

思うに、カメラを使うプロ、当時の報道カメラマンのニーズを満たすべく設計していたニコン、キヤノンに比べて、当初から大衆機として登場したペンタックスのカメラは、根本的に耐久性のレベルが違っているものと思われる。そして、発売から数十年経つとその設計の差が如実に表れる。カメラ屋のジャンクコーナーには、プリズム腐食したペンタックスSPやギア割れしてミラーアップしたままのペンタックスMZシリーズが必ずと言っていいほど並んでいる。

耐久性の低さは、ペンタックスが小型軽量で成功したメーカーという歴史も関係しているように思う。かつてペンタックスはMXというカメラでオリンパスOM-1と共に、一眼レフの小型軽量のブームを作った。そして、小型軽量化するために部品の各部には樹脂パーツが多用され、薄く設計されたそれらは数十年経って、摩耗やオイルの侵食などによって割れや変形を起こし、カメラをジャンク化させた。

このistの前に作られたMZシリーズのカメラもその小型軽量路線で作られた影響で、多用された樹脂製のピニオンギアが割れることで起こるミラーアップがこのシリーズの持病となっている。


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また、今尚使われ続けている伝統のKマウントだが、実は各機種によって使えるレンズの種類に制約がある。

このistは電子接点によって電気的にレンズを制御する設計で作られた。そのため、レンズに電子接点のない過去のレンズに関しては、マニュアルモードですら露出計が働かないというポンコツ仕様となっている。


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istの約7年前に発売したMZシリーズの入門機MZ-10は、電子接点での制御の他、機械的に絞りを制御する爪も搭載されているため、過去のレンズであっても絞り優先、あるいはマニュアルモードで使用することが可能な仕様となっている。istにはこの爪の搭載が省かれたため、古いレンズに対しては過去の機種の方が優位な仕様となっている。

但し、MZ-10は廉価機であったためマウントがコストダウンのため樹脂製となり、重く大きいレンズを使う際は気を遣う。また、脱着で削れるため、使いこまれた個体ではレンズの取り付け精度自体に問題が生じてくる。また、任意で絞り値やシャッター速度を設定できるとはいえ、基本的にはプログラムオートで使うことが想定された入門機であるため、操作性はあまり良くない。


こういった耐久性の低さや使えるレンズへの制約、選択肢の狭さがネックとなり、新たに予備のistを買いなおしても同じ問題は起こり続けるので、それならばいっそ他社の丈夫そうなカメラに乗り換える方が良いのでは、と考えるようになった。


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そして、手に入れたのがニコンのF90Xである。

このF90Xは、ここまで挙げてきた僕が求めるカメラへの要件や、ペンタックスカメラが抱える問題点を、全てクリアしている。

このカメラが発売された当時はプロがサブ機としてよく選んでいたと言われているので、どれほど信頼できるカメラだったかわかるだろう。


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お世辞にも状態がいいとは言えず、各部擦れ傷だらけでロゴも剥げているし、ボロボロ感は否めない。

しかし、手に取った瞬間に頑丈さと信頼性を感じ、このカメラはまだまだいけると思わせてくれた。

istならこんなに傷がついていたらもうどこか壊れていておかしくないし、メインで使おうとは思えない。それくらい、モノとしての信頼性に差があることを感じた。


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istと同じ位置にあるセレクトダイヤルの感触も大違いである。今にも外れて飛んでいきそうなペラペラな感触のistと比べると、F90Xのセレクトダイヤルはカッチリとしたクリックがあって、確実にきちんと回ることを徹底して作られていることを感じる。2、3クリック分回さないと数値が変わらないとか、数値が回した方と逆向きに増えたり減ったりするようなダイヤルを我慢して使うのが馬鹿らしく思えてくる。

シャッターボタンの感触も大違いで、例えるとFIRE TV STICKのリモコンボタンのようなポチポチとした質感のistに比べて、ノック式ボールペンのようにバネが効いて押し込む深さのあるF90X。どちらが良いか悪いか、という話ではないが、僕個人の感想としては、押し込み角度がズレるとシャッターが切れないistのシャッターボタンはもう押したくない。


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ニコンのカメラにはあまり詳しくないが、おそらくニコンというメーカーは小型軽量路線には走らなかったメーカーだと思う。

ラインナップを見ると、どちらかと言えばでかい、重い、頑丈なカメラが名を連ねている印象だ。

F90Xはバッテリーグリップをつけたistと比べても大きさにそこまで差を感じない。重さはこの状態でも圧倒的にistの方が軽い。

縦位置のときの持ち方にこだわりがあるわけでもなく、またF90Xは元々単三乾電池で動く仕様のカメラなため、別途用意されているバッテリーグリップを着けたところで使う電池の本数は変わらないし、何か連写速度が上がるわけでもないので、今のところは使うメリットを感じていない。本体のみで使うつもりだ。

istはあまりにも華奢だったので、絶対に長距離の自転車旅や山歩きには持っていこうとは思わなかったが、F90Xはそういったところでも持って行ってガシガシつかってやろうと思える頑丈さがある。それだけで、今回F90Xを乗り換え先に選んだのが正解だったと思える。

ちなみにこれが送料込みで1500円だったから驚きである。


対応レンズの今後

マウントを乗り換えると付きまとうのは、対応レンズをどうするのかという問題である。

今まで買い集めたレンズが使えなくなるため、マウントを乗り換えるというのはよっぽど何かあったときにしか選ばない選択肢であり、逆に言えば途中で乗り換えるのが困難なため最初にどのメーカーを選ぶかは大変重要な選択と言える。

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幸い、僕はメインで使っているレンズの多くがタムロンのアダプトールレンズである。

なので、この場合はマウント部だけペンタックス用からニコンAi用に付け替えればクリアできる問題であった。

元々ペンタックス純正のレンズの描写が好みでなかったのと、ペンタックス以外の機械式フィルムカメラでも流用する目的があって、アダプトールレンズをメインに選んでいたことが、今回功を奏したことになる。


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一部、Kマウント専用のレンズがあるが、こちらはサブ使い用のコシナCT-1に取り付ければ基本的には使えるので無駄にはならない。

あるいは、まだ生きている方のistが潰れるまではそちらで使って、潰れてしまったらニコン用のマウントのものを買いなおすというやり方でもよいと思っている。もっとも、生きている方のistも故障したist同様、セレクトダイヤルの感触に違和感が出始めているので、こちらも駄目になるのは時間の問題と言える。



元々M42マウント機からフィルムカメラを使い始め、祖父の形見のカメラがペンタックスKマウント機だったことから本格的にペンタックスを使う事となっていったが、今回ニコンのカメラと比較して造りの差に驚いたことが多かった。過去から選ばれ続けるのには相応の理由があるというのがよくわかった。

まだ完全にシステムを移行したわけではないが、徐々に移行しながら今後はニコンのカメラで写真を撮っていくつもりだ。

今後、F90Xやニコンのカメラについて気付いたことがあったら、都度記事で紹介したいと思う。

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