なぜボクがお笑いのライヴをやりたかったか。
だいすけわたなべです。
昨日は浅草 東洋館で
ボクの誕生日イベントでした。
当初はファンクラブ限定のつもりでしたが
平日ということもあり
席に少し余裕があったので
一般予約も受けました。
東洋館は昨年の秋の3人のツアーの
東京公演の会場でした。
音楽のライヴをやるのが
ボクらがはじめてだったみたいで
歴史ある場所に名前を刻めたような気がして
うれしかったのをおぼえています。
その時のMCがウケにウケて
笑い声が響く東洋館が
とても気持ちよくて
ボクは味をしめました。
『スマイル4』のリリース日に
ボクの誕生日イベントを
東洋館でやったらいいんじゃないか。
という話になり
けっこう早い段階から
小屋はおさえていました。
内容は「お笑いと弾き語り」やりたいです。
と軽い気持ちで言ったものの
かなり直前になるまで
実はなにも決まっていませんでした。
常に心の片隅で
「あー東洋館どうしよ」とおもいながら
生活していました。
ぼんやりとやりたいことを考えました。
落語やってみたいな。
漫才やショートコントも
やってみたいな。
運良くお笑い芸人の友達(と言われせてください)がいたので相談してみました。
与座さんとデッカチャンです。
ふたりともニコルズを好きでいてくれて
ライヴにもよく来てくれますし
プライベートでも交流があります。
手伝ってくれますか?と聞くと
ふたりとも二つ返事でOKしてくれました。
それで少しホッとして
内容を考えはじめました。
落語は古典の「寿限無」をやろう。
漫才は与座さんとふたりで
ホームチームのネタをやってみたいな。
デッカチャンには幕間で
転換のつなぎをやってもらおう。
そこまで考えが辿り着いたのは
本番まで1ヶ月を切った頃でした。
そこからまず落語のCDを買いました。
桂春団治の「寿限無」が入ってるやつです。
あ、そもそもボクは
そんなに落語が大好きってわけでもないし
生で観たこともないし
ものすごいニワカです。
でも落語を一席おぼえてできたらいいなぁと
漠然と憧れみたいなのがあって
それで挑戦することにしました。
それからはいろんな人の「寿限無」を
ネットで探して観たり聴いたりして
なんとなく自分なりに色々合わせて
まずはおおまかな
台本のようなものを書きました。
細かい台詞はありません。
話の流れのようなものです。
やってみるととても難しくて
やると言ったことを何度も後悔しました。
それからはランニングしながらだったり
家事をしながらだったり
時間をみつけては「寿限無」をくり返し
練習しました。
幸い、例の有名な長い名前は
子供の頃にすでにおぼえていたので
あとは話の流れさえ組み立てられたら
大丈夫かなとおもっていました。
でも不安は常にありました。
そもそもこんなに軽い気持ちで
やっていいものだろうか。
でもまぁ余興みたいなもんだし。
と自問自答を繰り返しました。
ちょっとMCがおもしろいとか
数人の人に言われたくらいで
調子乗ってお笑いライヴとか
やってんじゃねぇよ。
芸人ナメんなよ。
しかも歴史ある東洋館かよ。
看板に泥塗るようなことすんなよな。
頭の中で鳴り響いていました。
そんな風におもわれても仕方がない。
ごもっとも。
百も承知でございます。
じゃあ、なぜ
ボクがお笑いライヴをやりたかったか。
できなそうなことをしてみたかったから。
それはとてもこわいことだし
勇気のいることです。
失敗したら傷つきます。
やらなくても誰も文句は言わないのに
なんであえてそんなことをするのか。
音楽というひとつのことだけを
ずっとやってきました。
正直なところ
ライヴ前に緊張することは
ほとんどありません。
厳密にいうと
緊張はしているけど
それはもう慣れてしまった種類の緊張です。
誤解を恐れずに言います。
時々「つまんねぇな」っておもいます。
同じことを繰り返してると
「つまんねぇな」とおもうのは
みんな同じだとおもいます。
ボクは「つまんねぇな」とおもうことが
「つまんなぇな」とおもうので
時々新しいものを求めます。
いわゆる「ぬるま湯」は最高です。
できればずっと入っていたい。
でもそれでは人間は成長しません。
ハートの皮は厚くなりません。
昨日の本番の日の朝から
とてもナーバスでした。
変な緊張をしていました。
気もそぞろで荷物を置き忘れたりしました。
でもその時におもったのは
あぁ、そういえばそうだった。
今までもこんな風に
経験したことのない種類の緊張を
乗り越えた時に
オレのハートの皮は少しずつ
厚くなってきたんだった。
よし、がんばろう。
乗り越えて、鋼の心臓にまた一歩近づこう。
そんなことでした。
本番の前日まで
とにかくこわかったし
とにかく緊張してたし
いいイメージが全然できなかった。
でも前日に
与座さんとデッカチャンと
打ち合わせ、ネタ合わせをして
ようやく少し落ち着きました。
漫才のネタ合わせは
おもったよりうまくいって
与座さんも「大丈夫!大丈夫!」と
言ってくれました。
なにより当日をとても楽しみにしていてくれることがうれしくて
がんばろうとおもいました。
デッカチャンも
流れを説明すると
「オッケー!オッケー!盛り上げるね!」と
言ってくれました。
プロのふたりの胸を借りて
ボクはボクなりに精一杯、一生懸命
全力で挑もう。
そうおもうことができました。
結果から言うと
大爆笑とまではいかなかったものの
とにかくたのしくやることができました。
あっという間でした。
落語を最後までやれた時
とても安心しました。
小さなミスはたくさんあったけど
話の流れを壊すようなこともなく
肩を撫で下ろしました。
そのあとは自作の
ショートコントをひとりでやりました。
「足が地面にひっついちゃう男」
というショートコントの3部作です。
全力でやったのは
当日がはじめてだったので
正直一番不安な演目でしたが
それなりにウケたので
うれしかったです。
でもウケていることを味わう余裕は
微塵もありませんでした。笑
そして与座さんとの漫才。
富士サファリパークのCMソングを
間違えまくるネタです。
ボクはツッコミをやりました。
アドリブ合戦でたのしかったけど
やっぱりプロはすごいなとおもいました。
声も大きいし立ち振る舞いも
ボクと全然ちがうし
やっぱり踏んできた場数が物を言うんだなと
改めて感じました。
最後に弾き語りで数曲うたって
みんなに出てきてもらって
フリートークで幕を閉じました。
メンバーやスタッフの協力で
やりたかったことを実現できました。
本当に感謝しています。
ありがとうございました。
東洋館の方々も
こんな素人の無謀な挑戦を
あたたかい目で見守ってくれました。
落語の出囃子を
フェイドアウトするタイミングや
座布団の縫い目がない方を前にすることなど
色々おしえてくれました。
「平日にこんなにたくさんの人が来てくれてすごいですね」と言ってくれました。
本当にありがとうございました。
またやりたいか?
と聞かれたら迷うけど
やっぱり新しいこと、できないこと
そういうものに挑戦するのは
大切なことだとおもいます。
自分にもまだこんな可能性があるんだ!
そうおもうことができた時
心に羽が生えたような気持ちになります。
偉そうに言うつもりは
毛頭ありませんが
毎日の生活というのは
得てして繰り返しになりがちです。
そおーっと放っておけば
なんの問題もないけど
すぅーっとそのまま流れていってしまいます。
立ち止まって
自分に聞いてみる。
「おまえ今、つまんねぇなっておもってるだろ?」
できないことを探してみる。
それをとりあえずやってみる。
やっぱりできないなと再確認する。
感じたことのない種類の緊張を
乗り越えた時、
再びその種類の緊張が
襲いかかって来た時に
今度は「大丈夫」になります。
そうやって「大丈夫」を増やしていくと
堂々と立っていることができます。
堂々としていない人から
発信されるものは
人をハラハラさせます。
堂々としている人から
発信されるものは
人をドキドキさせます。
ボクはみんなをドキドキさせたい。
(今回はハラハラさせたとおもうけど笑)
楽しませたい。
いっぱい笑わせたい。
心を動かしたい。
兎にも角にも
ひさしぶりに心に平穏が訪れました。笑
でもまた自分を挑発したいとおもいます。
素晴らしい経験をありがとう。
37歳、いいスタート切れました。